2020年、韓国ヒップホップシーンに何が起こったか? 一挙に振り返ってみよう!

Written By Sakiko Torii

皆さん、こんにちは。
BLOOMINT MUSICの運営者、SAKIKOです。

今年最後の投稿は何にしようかなとあれこれ考えた結果、2020年に韓国ヒップホップシーンで起こったことをダイジェスト的に振り返ることにしました。2020年はコロナもそうだけど、韓国ヒップホップシーンにとっても激動の一年でしたもんね。

その前にひとつ皆様にお知らせがあります。実は私、ちょっと前から韓国ヒップホップとは別の仕事をしていて、そのために当サイトの記事の更新頻度が減ってしまっているんですね。なので年明けからは友人のライターに寄稿をお願いすることになりました。

そんな私が今取り組んでいる仕事というのが、こちら。SKY-HIさんが今年9月に設立したBMSGというレーベルで働いています。


https://bmsg.tokyo/
 

SKY-HIさんはこれまで通りアーティストとしてavexに所属する傍ら、CEOとしてBMSGを経営されています。 BMSGにはSKY-HIさん自身のほか、Novel Coreさんというラッパーが所属しているのですが、Novel Coreさんはこれからの日本の音楽シーンを引っ張っていくであろう超実力派ラッパーですので、韓国ヒップホップのファンの皆様も注目していただけると嬉しいです!!

目指せ、1億回再生!!
1人あたり10万回ずつご視聴をお願いします ↓ 

[MV] Novel Core – SOBER ROCK (Prod. SOURCEKEY)

 

そしてBMSGでは今、ボーイズグループのオーディションを実施中です。先日書類審査が終わったところで、年明けからは各地で二次審査が始まります。来年春からは番組としても放送される予定なので、決まったら詳細をお伝えしますね。絶対に、絶対に、絶対に、観てねー!!!

そんなこんなでBLOOMINT MUSICに訪れた更新ストップの危機。そこに現れた救世主が、我が盟友のlimasul(リマスル)さんです。来年からはlimasulさんが月に数本、新譜リリース情報やコラムなどの記事を寄稿してくれることになりました!

「limasulって誰や!?」って思った人がほとんどかと思いますが、私とよく一緒に執筆活動をしてきているあの人、とだけ言っておきましょう。もちろん私も気まぐれでちょいちょいコラムとか書く予定ですので、2021年もBLOOMINT MUSICをよろしくお願いいたします!

 


 

それでは本題!

2020年、韓国ヒップホップシーンに何が起こったか? 当サイトに書いた記事を使いながら、1月から順を追って振り返ってみましょう。量が多いので、サクサクっと進めていきたいと思います。

まずは1月。84年生まれのラッパーが集結した「DAMOIM」のプロジェクトが終了しました。この前の月にリリースされた『아마두 (アマドゥ)』は単なるヒットに止まらず、韓国の重要なアワードのひとつである「MELON MUSIC AWARDS」で「ベスト・ラップ/ヒップホップ」を受賞しました。そして後述しますが、「DAMOIM」のメンバーであるThe QuiettとYUMDDAは11月にレーベルを共同設立しました。

84年生まれのラッパーが集結した<DAMOIM プロジェクト>がついに終了! YUMDDA、The Quiett、Simon Dominic、Paloalto、 Deepflowの5人が残した全4曲を一挙ご紹介!

 

同じく1月、私はSKY-HIさんのラジオ番組『IMASIA』に出演してCHANGMOの『METEOR』をご紹介。『METEOR』はこの時から1年近く経った今もずっとチャートの上位に居続けています。ちなみに昨日(2020年12月28日)付けのデイリーチャートでは37位。この曲だけで豪邸が建つんじゃないかってレベルですね。

今年はこの『METEOR』以外にもZICOの『아무노래 (Any Song)』、BLOOの『Downtown Baby』、H1GHR MUSICの『GANG Official Remix』、『SHOW ME THE MONEY 9』の『VVS』や『내일이 오면 (Tomorrow)』などラッパーたちのヒット曲が続々と出ました。

そしてこれも同じく1月、韓国ヒップホップシーンに衝撃を与えるニュースが飛び込んできました。Swingsが「Indigo Music」「Just Music」「Wedaplugg Records」すべてのレーベルからCEOの座を降りたというのです。Swingsはまだ韓国でヒップホップがアンダーグラウンドのものだった頃からJust Musicを大きくしてきたので、ラッパーたちにとっても衝撃のニュースでした。

Swingsが、IMJMWDP(=Indigo Music、Just Music、Wedaplugg Records)のCEOを辞任

 

2月になり、SwingsのCEO辞任をしのぐレベルの衝撃ニュースが飛び込んできました。Dok2がILLIONAIRE RECORDSを脱退したというのです。もうこのレベルになると事件ですね。大事件。

「2010年代の韓国ヒップホップの象徴的な存在」と言っても過言ではないのが「Dok2率いるILLIONAIRE RECORDS」です。Dok2、The Quiett、Beenzino、この3人が同じくらい重要だし、このうち1人でも抜けても成り立たなくなるものではありますが、それでもDok2は特にその中心にいたということもあり、ILLIONAIREは結局このあと7月に解体することとなりました(後述します)。

Dok2がILLIONAIRE RECORDSを脱退

 

そして3月になると、Paloaltoさんのソロ来日ライブ『UNITE TOKYO』が発表されました。企画・主催はHi-Lite Records、ライブの制作は私。そう、私の仕事。私の大切な仕事が、そしてファンの皆様が心待ちにしていた大切なライブが、コロナでキャンセルになったのでした。

にっくきコロナ!

しかしコロナの感染が拡大するギリギリ直前に、私はひとつの仕事をやり遂げていたのです。

それがこちら、3月にリリースされたm-floの『tell me tell me』フィーチャリングSik-Kです! コロナの感染拡大が深刻化する前にレコーディングとMV撮影を終えることができました。Sik-Kとコロナ怖いねって話とかしてたのですが、その時はまさかここまでのことになるとは思ってもみなかった。楽曲のリリース直後に来日ライブも検討されてたのですが、残念ながらそれは叶いませんでした。

m-floの新曲『tell me tell me』にSik-K、 eill、向井太一がフィーチャリング!国と世代を超えた最高のコラボレーション!

 

同じく3月、韓国では毎年恒例の『Korean Hiphop Awards』の結果が発表されました。詳しい内容は記事をご覧いただくとして、受賞者がYUMDDA、DAMOIM、CHANGMOなど先ほどからこのコラムに出てきている名前と重なっていますね。

4〜5月は注目度の高いアルバムリリースなどは相次ぎましたが、特筆すべき事件やニュースもなく比較的穏やかに過ぎました。そんな中でJvcki Wai、Coogie、Paloalto、The Quiett、Bassagongの5人がコラボしたシングル『Fadeaway』は話題性が高かったですね。この曲が出た直後は今年最大のコラボになりそうって思ったけど、直後に『GANG Official Remix』がリリースされて上書きされちゃった感があります。

その『GANG Official Remix』とは6月にリリースされた曲で、H1GHR MUSICのJay Park、Sik-K、pH-1、HAONの4人がスーパースターのRAIN(ピ)とコラボしたものです。CHANGMOの『METEOR』、ZICOの『아무노래 (Any Song)』、BLOOの『Downtown Baby』などに並ぶ2020年最大のヒップホップ・ヒットソングとなりました。

Jay Park、Sik-K、pH-1、HAONが『GANG』のリミックスでRAINと共演してチャート1位に!『GANG』についても一挙解説!

 

2020年最大のヒップホップ・ヒットソングのひとつに挙げられたBLOOの『Downtown Baby』ですが、曲自体がリリースされたのは2017年です。しかし今年6月、『GANG Official Remix』がチャート1位を取って大盛り上がりしてからわずか2週間後、今度はこの『Downtown Baby』が1位を取りました。この曲のチャート快進撃は本当に興味深いので、ぜひ記事を読んでいただきたいです。

BLOOは今はちょっと残念なことになっていますが(後述します)、『Downtown Baby』は昨日(2020年12月28日)付けのデイリーチャートで62位と健闘中です。

BLOOが2年半前にリリースしたトラック『Downtown Baby』が韓国の主要チャートで1位を席巻中!

 

そして7月に入ると、2020年最大というか、ここ10年くらいで最大の事件が起こりました。ILLIONAIRE RECORDSの解体です。

ひとつの時代を築いたレーベルの解体。私自身もこれまで韓国ヒップホップの活動をやってきた中でILLIONAIREの存在は大きかったので、未だに信じられない気持ちです。ひとつの時代が終わりを迎えたという感じで寂しいですね。彼らの単独来日ライブを全て手掛けることができたのは、大きな誇りです。

ILLIONAIRE RECORDSが10年の歴史に幕を下ろす

 

今年はHi-Lite RecordsにOwell MoodSoovijerdの3人が加入したり、VMCにHwajiが加入したり、WEDAPLUGG RECORDSにOLNLとK.vshが加入したり、H1GHR MUSICにTRADE Lが加入したり、you.will.knovvにMokyoが加入したり、それからさっき記事を書いたばかりだけどP NATIONにD.Arkが加入したりと、様々なレーベルに様々なアーティストが加わりました。

そんな中でも特にニュース性が高かったのがこちら。7月にAOMGに加入したイ・ハイです。下の記事の中にも書いてありますが、私はハイちゃんがオーディション番組に出ていた頃から応援していたので、今やこんな大物シンガーになって本当に感慨深いです。同様にパク・ジミンちゃんもJAMIEとして超大物になって、オーディション番組で応援してた子が活躍するのってこんなに嬉しいもんだなって実感しています。

イ・ハイがAOMGに加入! レーベル移籍第一弾シングル『홀로 (HOLO)』もリリース!

 

7月にはColdeが新レーベル「Layered Island」を設立。余談ですが、Coldeが運営するもうひとつのレーベル「Wavy」に所属するKhakiiとアン・ビョンウンは『SHOW ME THE MONEY 9』で活躍しました。

そして8〜9月にはHi-Lite Records、H1GHR MUSICの2つのレーベルからコンピレーションアルバムが立て続けにリリース。どちらもアーティストがCEOをやっていること、そしてレーベル名が「ハイ」から始まるという共通点を理由に比較されまくりました(PaloaltoとJay Park自身もYouTube番組でおふざけの対決をしてた笑)が、比較なんかしないでそれぞれ楽しめばOK!

ちなみに同時期にAmoeba Cultureもコンピレーションアルバム『THEN TO NOW』を出したのですが、全編ジャズにアレンジしたアルバムのため上記2レーベルとの比較対象にはなっていません。

Hi-Lite Recordsがレーベル設立10周年記念アルバム『Legacy』をリリース! この機会に、過去10年の歴史をザっと振り返る!

H1GHR MUSICが初のコンピレーションアルバム『H1GHR : RED TAPE』をリリース。第二弾は今月16日にリリース予定!

H1GHR MUSICがコンピレーションアルバム『H1GHR:BLUE TAPE』をリリース!『H1GHR:RED TAPE』に続く第二弾!

 

そしてHi-Lite Recordsですが、コンピレーションアルバムをリリースした少し後、レーベルの設立者であり10年間CEOを務めてきたPaloaltoがCEOを辞任したことが発表されました。SwingsのCEO辞任、 Dok2のILLIONAIRE脱退&解体などに続き、韓国ヒップホップシーンに大きな衝撃を与えたニュースでした。

SwingsもPaloaltoも辞任の理由はアーティスト活動に専念するためなので、「退く」というよりも「進む」という表現のほうが合ってるように感じます。本人たちにとってはひたすら喜ばしいことなのだと思いますし、ファンにとっても今後の活躍に期待が膨らみますね。

(あ、そういえばHi-Lite Recordsの10周年記念ドキュメンタリーに私もちょっとだけ出てるんだった。3本に分かれてて、3つ目のこの動画の最後のほうにチョロっとコメント出演してます)

PaloaltoがHi-Lite RecordsのCEOから退き、アーティスト活動に専念することを発表

 

10月に入ると『Fadeaway』や『GANG Official Remix』をしのぐレベルのコラボ曲がリリースされました。Chancellorを中心に集結したBabylon、twlv、MOON、BIBI、Jiselle、以上6名の実力派シンガーによるプロジェクトシングル『AUTOMATIC』です。

この曲は翌月11月に、さらに人数を増やして28名のコラボ曲としてリミックスも公開されました。さらに12月にはHi-Lite Recordsによる『Hi-Mix』も公開され、BLOOMINT MUSICのプレイリストでも10月から3ヶ月連続でこの曲のビートが流れることに。

Chancellorが『AUTOMATIC』のリミックスを発表。Jay Park、イ・ハイなど総勢28名が参加&15分を超える大作に!

 

11月には嬉しいニュースも飛び込んできました。The QuiettとYUMDDAが新レーベル「Daytona Entertainment」を設立したのです。ILLIONAIREの解体で寂しい気持ちになっていたファンには、楽しみのひとつが追加されたのではないでしょうか。

ところで最近のThe Quiettの動向を見ていて思ったのですが、The Quiettってその時一緒にレーベルを運営している相手に染まりますよね。KebeeとSoul Companyを運営していた頃はKebeeのような爽やか好青年、Dok2とILLIONAIREを運営していた頃はDok2のようなギャング感、そしてYUMDDAとDaytonaを運営し始めた今、 YUMDDAのようなひょうきんで変なキャラを出してきています。

The QuiettとYUMDDAが新レーベル「Daytona Entertainment」を共同設立

 

そして12月。最も大きかったニュースは『SHOW ME THE MONEY 9』とnaflaの件の2つですかね。まずはnaflaの件から。ここでようやく上述の「BLOOは今はちょっと残念なことになっています」を回収することになります。

まず、naflaやBLOOが所属する「MKIT RAIN」の所属アーティスト全員が大麻喫煙で摘発されるという事件が起こりました。摘発自体は去年(2019年)の9月でしたが、発覚したのが今年の10月。これによってMKIT RAINは事実上の活動停止状態となっています。Loopyは先日新曲を無料公開しましたが、正式なリリースはありません。

そして12月にnaflaがMKIT RAINを去り、そのあとVIXXのRAVIが運営する「GROOVL1N」に加入しました。公式発表によるとnaflaの移籍は事件より前から決まっていて、移籍手続きの最中に事件が発覚したとのことです。この移籍については炎上中でもあり、今は状況を見守るしかありません。

先日MKIT RAINを去ったnaflaが、VIXXのRAVIが設立したレーベル「GROOVL1N」に合流!

 

最後に明るいニュースを持ってきましょう。10月から放送がスタートした『SHOW ME THE MONEY 9』が12月18日にファイナルを迎えました。同番組はシーズン5と6をピークに人気が衰えていき、シーズン8はいろんな意味で失敗に終わってしまったのですが、今シーズンは「歴代最高」と絶賛されるほどに成功しました。

(そういや今シーズンの放送がスタートする前にSKY-HIさんの『IMASIA』に出演して、番組の魅力について語ったな)

ヒット曲も多く出て、元々有名だったラッパーはさらに人気を高め、無名だったラッパーもたくさん名を売りました。これまでプロデューサーとして常連だったSwingsが挑戦者として出場したことも大きな話題になりました。CEOの職務から解放されたからこそできたことなのでしょう。

私もこの番組をここまで楽しく観たのは初めてのことで、コラムを何本も書いてしまいました。ファイナルを迎えて書いた最後のコラムに全コラムのリストがまとまっていますので、良かったら上から順に読んでいただけると嬉しいです。最後のコラムだけ優勝者が誰なのか書いてあるので要注意ですが、ほかのコラムはネタバレを極力控えてあるので、これから番組を観る予定の人が読んでも大丈夫なはずです。

ついに優勝者決定! 波乱の『SHOW ME THE MONEY 9』ラスト2話(第9〜10話)を振り返る

 

このように2020年はCEO辞任、レーベル設立/解体、レーベルへの新メンバー加入、レーベルのコンピレーションアルバムのリリースなど、レーベル単位で大きな動きが続いた一年でした。数年後に振り返った時、確実に「韓国ヒップホップの歴史が大きく動いた年」と呼ばれるだろうと思います。

今年は兵役に行くアーティストも多かったです。9月に兵役を終えてEP『SOME TIME』カムバックしたLocoと入れ替わるように、11月にはCrushが入隊。このほかにも6月にはSik-Kが、7月にはZICOが、10月にはHash SwanKim Ximyaが入隊。

そして今年はコロナの影響も大きかったですね。韓国もライブ活動ができず、各レーベルやアーティストは大打撃を受けています。ワールドワイドにファンを抱えるK-POPグループや大きなヒップホップレーベルなどはオンラインライブで稼げるからいいんだけど、そうでないレーベルは大変そうです。日本も状況は同じですが、2020年は韓国ヒップホップシーンにとってもコロナに振り回された一年となりました。

間もなく新しい年を迎えます。ほとんどの方がご自宅で静かな年末年始を迎えることになるかと思いますが、それぞれに幸せな時間をお過ごしいただきますように。そして2021年はもっといい一年になることを祈りましょう。「来年はうまくいくだろう、アマドゥ(=たぶん)」というフックが印象的なこの曲を聴きながら、「来年こそは!」という思いを強調して、このコラムを終わりにしようと思います。

それでは皆さま、よいお年を!

そして来年もBLOOMINT MUSICをよろしくお願いいたします!

 

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