Dok2がILLIONAIRE RECORDSを脱退

Written By Sakiko Torii

先日Twitterにも書いたのですが、Dok2がILLIONAIRE RECORDSを2月6日付けで脱退しました。脱退っていうか、退社っていうか、こういう時ってどう言うのが一番ふさわしいのかな。

本当は脱退が発表されてからすぐにでもちゃんとした記事を書きたかったんだけど、ちょっとあまりにも忙しくて当分パソコンに向かう時間が取れなそうだなーと思い、ひとまずTwitterでお知らせした次第です。


ILLIONAIREは、Dok2とThe Quiettが2011年1月1日に設立したレーベルです。最初は2人だけでスタートしましたが、ほどなくしてBeenzinoが加入し、3人体制でこれまでやってきました。Jay Parkが2013年にAOMGを設立する以前は、Jay ParkもILLIONAIREに所属してると勘違いされるくらい、4人で活動することが多かったです。

私が韓国ヒップホップを本格的に聴くようになった2011~2012年当時、ILLIONAIREの人気は群を抜いていました。Dok2、The Quiett、Beenzinoの3人とも大人気で、中でもBeenzinoは半端なかった。当時は韓国現地でもヒップホップが全然マイナーで、メジャーシーンにはDynamic DuoやSupreme Teamがいたものの、インディーレーベルのヒップホップはマニアのみが愛好しているものでした。そんな中でBeenzinoは大衆的にも知名度が高く、Twitterのフォロワー数も文字通りケタ違いでした(今でこそ同じくらいのフォロワー数を持つラッパーはたくさんいるけど)。

大衆的にはBeenzinoの人気が圧倒的でしたが、アンダーシーンでは絶大な支持を得ていたDok2とThe Quiett。彼らが2014年に出演した番組『SHOW ME THE MONEY 3』がヒットしたことをきっかけに、彼らだけでなくヒップホップそのものが韓国でブレイクすることとなります。その頃にリリースした『연결고리 (YGGR)』も、当時の韓国ヒップホップシーンとしては異例の大ヒットを遂げました。

ILLIONAIRE RECORDS – 연결고리 (YGGR) (Feat. MC Meta)

 

その後、現在2020年に至るまでILLIONAIREはシーンの中心で活躍を続けています。2016年には傘下レーベルとしてAMBITION MUSIKも設立し、そこに所属するCHANGMOは今やスターラッパーです。The Quiettは新人発掘にも勤しみ、若手からベテラン仲間たちまで幅広い層とのコラボレーションで人気の高さをキープし続けています。

ところがここ2~3年、少しずつDok2とThe Quiettは方向性に違いが見られるようになってきました。そもそもDok2は、活動を始めた10代前半の頃からゴリゴリギャングっぽいスタイル。一方、The Quiettと言えば2000年代はSoul Companyというレーベルを運営し、爽やかでメロウで詩的なスタイルがウケていました。ILLIONAIREの設立と同時にThe QuiettはDok2のようなスタイルに変貌を遂げ、それがまた人気を博した要因となったのですが、それから10年近い年月が経過する中でThe Quiettは元のスタイルに少しずつ戻っていったようです。

つまりThe Quiettが「自分らしく自然なスタイルで韓国でやっていきたい」というのに対し、Dok2は「アメリカで現地のラッパーたちと本場のヒップホップを追求したい」ということなのでしょう。実際Dok2は2018年11月にILLIONAIREのCEOを辞職し、アメリカに移住しました。その後はアメリカの人気ラッパーであるTygaとチームを結成したり、NBAの試合のハーフタイムでパフォーマンスしたり、ライブもバンバンやったりと順調に活躍しています。

移住を決断した理由はいろいろあるようですが(ジュエリー代金未納問題でCEOを辞職したとか、ご両親の昔のトラブルで論争の的になって疲弊したとか、そもそもDok2はインターナショナルな環境で育ったので韓国社会になじめない部分もあったとか)、とにかくDok2はすでに1年以上前からILLIONAIREどころか韓国と距離を置いていました。だからファンにとっては、今回の脱退ニュースも「やっぱり」って感想が多いかもしれません。

こちらがインスタグラムに掲載された公式文章です。

翻訳:ILLIONAIRE RECORDSとDok2は、2020年2月6日をもってそれぞれの道に進むこととなりました。これまでDok2を応援してくれたファンの皆様には心よりお礼申し上げます。ILLIONAIRE RECORDSは、Dok2の未来を応援します。

 

Dok2の腕に刻まれていたILLIONAIREのロゴのタトゥーがブッダの顔に上書きされたのもあり、Dok2とThe Quiettの不仲説が出ちゃったりしてますが、それはないと思います。お互いの方向性を尊重するからこその決断だと思います。私はこの2人と何度も一緒に仕事をしていますが、この2人を近くで見ていると、年齢差もあるからか友人同士というよりも仕事仲間として尊重し合っている関係のように見えます。

ちなみにBeenzinoは、ILLIONAIREに加入した頃からずっとDok2とThe Quiettとはちょっと距離のある場所で自由に活動を続けてきているので、こういった話の中には名前が出てきません(笑)。9年も所属しているのに、ILLIONAIREのイメージがあるような無いような、ちょうどいい立ち位置をキープしているのが素敵です。

それぞれの道に進むこととなったDok2とThe Quiett、そして相変わらず自分の道を進んでいるBeenzino、3人のことをこれからも応援します!

 

writerSakiko Torii

韓国ヒップホップを専門に文筆業、イベント主催、音源/MV制作サポート、メディア出演など多方面に活躍。



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