PaloaltoがHi-Lite RecordsのCEOから退き、アーティスト活動に専念することを発表

Written By Sakiko Torii

記事タイトルの通りなんですが、なんか今年はこういうニュースが続いてますねー!

1月のSwingsのCEO辞任に始まり、Dok2の脱退からのILLIONAIRE RECORDS解体。それからJerry.kもつい数日前の8月25日、daze aliveをクルー形式にすると発表したばかりです。

daze aliveについてだけ記事を書いてなかったので、ザックリと説明しますね。KebeeとThe Quiettがかつて運営していたSoul Companyに所属していたJerry.kは、レーベル解体後に自分だけの事務所としてdaze aliveを立ち上げました。2013年7月には同社をレーベル化させ、Rico、SLEEQ、Don Malikが加入。2018年にDon Malikが退社した後は3人体制で続けてきました。

ちなみにSLEEQは今年放送されたテレビ番組『GOOD GIRL』に出演してついに大衆的な知名度を得ました。それまでもアンダーグラウンド・ヒップホップのファンの間では有名でしたが、同番組でトップシンガーたちと競演したことで一気に注目の的に。個人的にはこれをきっかけにdaze aliveの人気が少しでも上がるといいなと思っていたのですが、daze aliveがレーベルからクルー形式にされたことを機に、SLEEQはYour Summerという会社に移ったようです。

しかしこうして見てみると、昨今の韓国ヒップホップシーンに関してひとつの兆候が見えてきますね。まずはちょっと歴史を遡ってみましょう。

Soul CompanyとBig Deal Recordsを中心に回っていた2000年代の韓国ヒップホップシーンは、両レーベルが2010年前後に解体されると同時にひとつの時代の終わりを迎えました。Soul Companyの看板アーティストだったThe QuiettはILLIONAIRE RECORDSを立ち上げ、CEOだったKebeeは兵役に。その間に代理でCEOを務めていたJerry.kは、レーベル解体後にdaze aliveを設立。KebeeはStandart Musicに移ったあと、BrandNew Musicに移籍。ILLIONAIREとdaze aliveのその後は先述の通り。

Big Deal RecordsにいたDeepflowはVMCクルーを作り、のちに同クルーをレーベル化。同じくBig Deal RecordsにいたPrimaryはその後Amoeba Cultureに入りましたが、今年3月に独立してレーベルPAKTORY COMPANYを立ち上げました。

The Quiettと「P&Q」というチームを組んでいたためSoul Comapanyの所属だと頻繁に勘違いされていたPaloaltoは、2010年にHi-Lite Recordsを立ち上げました。Paloaltoが昔所属していた「神の意志」というレーベルからメインラッパーたちがSoul Comapanyに移籍したので、それも勘違いされる原因のひとつだったと思います。

で、今回のニュースです。Paloaltoが2020年8月30日付で、Hi-Lite RecordsのCEOから退いたことを発表したのです。下記の画像はHi-Lite Recordsの公式発表です。画像の下に日本語訳も載せておきますね。

翻訳:こんにちは、Hi-Lite Recordsです。2010年から2020年まで代表としてHi-Lite Recordsを率いてきたPaloaltoが、本日付で代表取締役から退き、本業のミュージシャン活動に専念することが決定しました。これまでの10年間、Hi-Lite Recordsの代表として所属アーティストたちとスタッフたちのそばにいてくれた彼の苦労に大きな感謝の意を表し、今後も素晴らしいアーティストとしてHi-Lite Recordsと共にしていくPaloaltoに大きな拍手と応援をお願いいたします。また、間もなく午後6時には代表取締役ジョン・サンヒョン(Paloaltoの本名)としての10年間の所感を込めたシングル『Let the Story Begin』がリリースされます。ありがとうございます。

 

せっかくなので『Let the Story Begin』の歌詞も翻訳してみました。よかったらここで歌詞を読んでみてね。

歌詞和訳/Paloalto – Let the Story Begin

 

ってことで話を戻すと、昨今の韓国ヒップホップシーンに関してひとつの兆候が見えますよね。2000年代はSoul CompanyとBig Deal Recordsを中心に回っていて、そこにいたアーティストたちが2010年代に新たな道に進んでひとつの時代を築いた。そしてそれは2020年にことごとく終わりを告げた。

つまり、数年後に2010年代のことを振り返ったとき、「Soul CompanyとBig Deal Recordsが中心だった2000年代」みたいな感じで「Paloalto、The Quiett、SwingsなどがレーベルCEOとしてヒップホップシーンを築き上げた2010年代」みたいな括りができてそうっていうか。あるいは「2020年はCEO相関図に大きな変化が起こった」ともなりそうかな。

とは言っても、The Quiettは今のところまだAMBITION MUSICのCEOのままだし、PaloaltoとSwingsはレーベルに所属したままだし。Primaryは今年独立したばかりだし、Deepflowはまだまだこのまま続きそうだし。Jay Parkは数年以内に引退するとは言ってるけど、まだAOMGのCEOだし。だからこれって、ひとつの時代の終わりっていうよりも節目って感じですよね。彼らのチャレンジは新たな道でこれからも続くわけで。

ここまでいろいろ書きましたが、拙著『ヒップホップコリア』にはこの辺のより詳しい話が載ってるので、よかったら読んでみてください。本記事に名前が登場したレーベルたちの解説はP.100~107、Soul CompanyとBig Deal Recordsの設立から解体までの流れはP.43~45です。

さて。本題のPaloaltoについて何も書いてない気がしますが、つい最近もHi-Lite Recordsがレーベル設立10周年を迎えたことで長い記事を書いたばかりなので、改めてPaloaltoに関する説明とかは特にいらないかなって思って(笑)

Hi-Lite Recordsがレーベル設立10周年記念アルバム『Legacy』をリリース! この機会に、過去10年の歴史をザっと振り返る!

 

しいて個人的な話を付け足すとしたら、私がPaloaltoさんと知り合った頃は確かに社長業に追われている様子でした。当時のHi-Lite RecordsやILLIONAIRE RECORDSは、普通だったらスタッフが対応するようなこともすべてCEOであるアーティストたちが直接対応してくれました。すべてにおいて。もう本当に、すべて。

これは私にとっては非常にありがたいことでした。なぜなら、実際に制作や実演をするアーティストであると同時に、最終的な決断権を持っている社長でもあるので、とにかく意思決定が速いんです。間にスタッフを挟まないので、その場その場で自分たちのやりたいことを決断していく。サクサク仕事を進めたいタイプの私としては、この意思決定の速さは性に合ってて最高でした。

でも一方で、彼らには常にスタッフからいろんな確認の連絡が来ちゃいます。アーティストであるだけなら来ないような連絡が。The Quiettさんは軽く受け流しながら対応するタイプなのでまだマシだと思うんですが、Paloaltoさんはガッツリ対応しちゃうタイプなので、アーティスト活動をする時間が削られることに悩んでいる様子ではありました。その後はCamo Starrさんが入社して取締役となり、実務スタッフも多く入社してだいぶ改善したと思いますが、それでもPaloaltoさんが会社の運営に携わってることに変わりはないので、悩みは尽きなかったと思います。

その辺のPaloaltoさんの悩みについては『Let the Story Begin』の歌詞を読むとだいたい分かると思うので、上に貼ってあるリンクからぜひ読んでみてください。

レーベル設立10周年を迎えて、所属アーティストも増えて、コンピアルバムも出して、新しいマーチャンダイズも出して、もう大活躍中のHi-Lite Records。PaloaltoがCEOを降りて新たなスタートを切った彼らは、今後10年間でまたどんな歴史を築き上げてくれるのでしょうか。それを見守っていくのが楽しみです。そして最後に私は心を込めて言いたい。Paloaltoさん、10年間お疲れ様でした!

あ、ちなみにマーチャンダイズがかわいすぎてビックリ。今までのHi-Lite Recordsのグッズの中でも圧倒的にかわいい。来日ライブがあればそこで販売したかったのにな~。

Hi-Lite Records x KRSP – 公式マーチャンダイズ「Legacy」発売!

 

writerSakiko Torii

BLOOMINT MUSICの運営者。韓国ヒップホップ・キュレーターとして執筆、ライヴ主催、音源/MV制作サポート、メディア出演など多方面に活躍中。イギリスに音楽留学していた本格派。著書に『ヒップホップコリア』。



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