ついに優勝者決定! 波乱の『SHOW ME THE MONEY 9』ラスト2話(第9〜10話)を振り返る

Written By Sakiko Torii

いやー、シーズン9がついに終わっちゃいましたね!

シーズン2からリアルタイムで観てきたくせに、こんなにたくさん『SHOW ME THE MONEY』についてコラムを書いたのは今回が初めてです。私にとっても歴代最高のシーズンだったなという感想なのですが、韓国でもそのように言われているようです。

視聴率もシーズン5と6をピークに低迷していき、去年はいろんな意味で失敗のレッテルを貼られたシーズンでしたが、今年は視聴率もだいぶ回復し、ミッションごとに話題性が高まったりヒット曲も出たりして、3年ぶりに番組が大きな盛り上がりを見せました。

本コラムではラスト2話(第9〜10話)を振り返ろうと思いますが、これまでに書いた『SHOW ME THE MONEY 9』関連のほかのコラムをまだ読んでない方は、まずはそちらからお読みいただければと思います。

 

 

 

 

 

 

さて。上記のうち、下から2番目の「第7〜8話を振り返る」を最後までお読みいただいたことを前提に話を進めたいと思います。それではラスト2話、つまりセミファイナルとファイナルについて振り返ります。

  • 映像審査:ラップしている映像を送って合否の通知
  • 1次審査:アカペラでラップを披露して、合格者122人
  • 2次審査:60秒のステージパフォーマンス。合格者10人×4チーム=40人
  • 3次審査前のリーダー選抜戦:各チームで1人ずつ脱落。合格者9人×4チーム=36人
  • 3次審査:トリプルクルーバトル。チーム内で3人ずつ3つのクルーに分かれて対決。合格者6人×4チーム=24人
  • 4次審査:音源ミッション。チーム内で3人ずつ2つのクルーに分かれて対決。合格者4人×4チーム=16人
  • 5次審査:チーム対抗ディスバトル。負けた2チームから1人ずつ脱落=合格者14人
  • 本選前のマイク選択:各チームから1人ずつ脱落=合格者10人
  • 本選ステージ対決:負けた2チームから1人ずつ脱落=トップ8
  • セミファイナル:8人が1対1でステージ対決をし、勝ったほうがファイナル進出=トップ4
  • ファイナル:4人が順番にステージを披露し、視聴者投票の多かった順に順位が決定

 

セミファイナルでは本戦ステージで勝ち残った8人が1対1でステージ対決をしました。対戦相手は以下の通り。

Untell vs MUSHVENOM
Layone
vs Wonstein
Mirani vs Lil Boi
Swings vs Khundi Panda

もうここまで来ると、残ってるのは実力者ばかり。しかもこの8人うち、Swings、Lil Boi、Khundi Pandaの3人は番組が始まる前から優勝候補と言われていました。ほかにも去年『왜 이리 시끄러운 것이냐(なぜこんなにうるさいのか)』でブレイク()したMUSHVENOM、『高等ラッパー』出身のUntell、Mommy Sonの会社に所属して今年『Good Girl』という番組で注目を集めたWonstein、Basickの会社に所属する若手注目株のLayone、そして今シーズンの『SHOW ME THE MONEY』を通して一気に知名度を上げ、YouTubeアカウントの登録者数がメキメキ伸びているMirani。

※この曲については、去年私がリアルサウンドに寄稿したこちらのコラムの一番最後で解説してます。

とまあこんな感じの8人なので、誰が勝ってもおかしくない状況の中でセミファイナルが始まりました。ステージの内容についてですが、これはもう実際に映像を観て楽しんでくださいとしか言いようがないので、このあと動画を貼ろうと思います。それぞれが自分の持ち味を発揮したので、負けた人たちも悔いはなかったでしょう。

結局のところ『SHOW ME THE MONEY』って、前半は単純にラップスキルだけで勝ち進んでいくけど、途中からはテレビ的なおもしろさや華やかさを出せた人が有利になるし、最後のほうのステージでは観客とか視聴者の好みが大きく左右するから。フィーチャリングアーティストが豪華だとそれも有利になるし。だから負けたとしても実力が劣ってるという意味ではなくて。

結果についてはそうやってある程度冷めた目で見ておいて、あとは自分がそれぞれのステージをどう感じたか、好きとか感動したとか自分の気持ちを大切にするのが一番いいんじゃないかなって思います。ちなみに私的にはWonsteinとKhundi Pandaのステージが一番好きでした(元から推しだから贔屓目に見てるというのはあるけど)。

しかしKhundi Pandaの対戦相手はSwings。うーん、相手が悪すぎる。先ほど「第7〜8話を振り返る」のコラムを最後までお読みいただいたことを前提に話を進めたいと書いた理由がここから始まるのですが、そのコラムの一番下のほうで「Control大乱」について説明をしました。おかげさまで7年も前の出来事なのに、その当時の記事の閲覧数がめっちゃ伸びてます。

その「Control大乱」の仕掛け人であり、当時のラッパーたちの人間関係を振り回しまくったSwingsが、その最大の被害者の一人であるSimon Dominicをフィーチャリングに迎えたのです!
 

\久しぶりだな〜/

 

\お、サムディ/

 

\うおああああ!!!/

 

CODE KUNST曰くとても交渉が大変だったそうだし、Simon Dominicも簡単な決断ではなかったと言っていました。私個人の感想としては「ああ、あの事件はこんなふうに幕を閉じるんだな」って思いました。一番の当事者であるE SENSがそっちのけっていうのが、E SENSファンの私としては何とも悶々とします。

でもこの和解劇、こんなこと言うのもアレだけど、テレビ向けの演出だと思うんですよね。普通に考えて、もともと一緒に音楽やってた仲間同士でグチャグチャのどろどろに揉めて絶縁したら、7年後に「あの頃はいろいろあったけど、これからまたよろしくね」なんて気持ちに切り替えられるわけないですよね。あれ? 私、ネガティブすぎ?

サムディは『高等ラッパー4』でメンターもやるからMnetの仕事を断れないし……いや、もうこれ以上ネガティブなことを言うのはやめよう。きっと和解したんだ。7年分大人になったし、前みたいに仲良しになるってほどじゃなくても、仕事で一緒にステージに立てるくらいには許し合ったんだ。良かった良かった。ポジティブに受け止めよう。E SENSのことだけ引っかかるんだけど、でもこういうのって意外と本人が一番何とも思ってなかったりするし、そういうことにしよう。

ではセミファイナルの動画を貼っていきます。ここでは放送されたバージョンではなく、フルバージョン(未編集でステージだけを映したバージョン)の動画を貼っていきます。放送されたバージョンが観たい人は、それぞれの動画の下にリンクを貼っておくのでそちらに飛んで観てください!

 


 

Untell – 결 (GRAIN) (Feat. Dynamic Duo & BewhY)

VS

MUSHVENOM – 고독하구만 (Godok) (Feat. SUPERBEE)

※放送バージョン(Untell vs MUSHVENOM)

 


 

Layone – iii (Feat. Basick, Kid Milli & Paloalto)

VS

세상에 나쁜 개는 없다 (No Bad Dogs) (Feat. YDG & Zion.T)

※放送バージョン(Layone vs Wonstein)

 


 

Mirani – Part Time (Feat. Queen WA$ABI)

VS

Lil Boi – Bad News Cypher vol.2 (Feat. TakeOne)

※放送バージョン(Mirani vs Lil Boi)

 


 
 

Swings – 악역 (Villain) (Feat. イ・ハイ & Simon Dominic)

VS

Khundi Panda – Hero (Feat. JUSTHIS & Golden)

※放送バージョン(Swings vs Khundi Panda)

 


 

以上8曲です!

ところでLil Boiのステージ『Bad News Cypher vol.2』ですが、この前身となる「vol.1」は以下の記事でご紹介しています。GIRIBOYの『vv 2』のビートにLil Boi、TakeOne、Don Malik、JUSTHISの4人がラップを乗せたものです。

Lil Boi、TakeOne、Don Malik、JUSTHISが参加した『Bad News Cypher vol.1 – vv2 remix』の動画が公開

 

Lil BoiのこのステージにフィーチャリングしたTakeOneは、Lil Boiと共にGRDL(Ja Mezz、Mckdaddy、Skyminhyukなどが所属するレーベル)を出てHalftime Recordsを設立しました。Lil BoiはソロではGRDLを出たけど、Geeksとしてはまだ所属していて、今年9月に新曲『Heartbreak Hotel』をGRDLから出したばかりです。余談ですが、TakeOneも「Control大乱」に参戦してました。TakeOneはディス戦の常連だからね。

というわけでセミファイナルの結果、ファイナルへの進出が決まったのはSwings、MUSHVENOM、Layone、Lil Boiの4人。そしてこの時点でDynamic DuoとBewhYチームは、残念ながらチームごと脱落となりました。

Untell vs MUSHVENOM
Layone
vs Wonstein
Mirani vs Lil Boi
Swings vs Khundi Panda

ここで今シーズンの『SHOW ME THE MONEY』の優勝報酬についておさらいしたいのですが、賞金1億ウォン(約1千万円)+自動車(ミニクーパー)+CJ(Mnetの親会社)が新しく立ち上げるレーベルでアルバム制作やマーケティングなどのサポート、という内容です。

これ、万が一Swingsが優勝したら意味不明ですよね。もっといい車に乗ってるし、むしろレーベル作って新人をサポートしてきた側だし。Lil Boiもすでに自分のレーベル持ってるし、そもそもかつてはメジャーシーンでバカ売れしてたラッパーだし。Layoneは新人ではあるけどBasickの会社に所属してるし。

そう考えると、MUSHVENOMが優勝するのが一番綺麗だな。そんなことを勝手に思いながらファイナルの生放送()を迎えました。なんであれ、ファイナルは視聴者の投票結果が大きく左右するので、番組として一番綺麗に収まるMUSHVENOMじゃなくてSwingsが優勝しちゃうことだって全然ありえるわけで。

※コロナの感染拡大を受け、パフォーマンスは無観客で事前収録。結果発表とインタビューのみ生放送で行われました。

そしてファイナルの内容ですが、これまた映像を観て楽しんでくださいって感じなので、映像を貼っておきます。ただしファイナルは1人2回ずつステージをやったのと、脱落者たちによるステージパフォーマンスが3本あったので、全部で11本の映像があります。もうすでに上に8本貼っていてページが重くなっちゃうので、ファイナルの映像は別ページに貼りました。映像を観たい方はこちらの記事をご覧ください ↓

『SHOW ME THE MONEY 9』のファイナルで披露されたステージ映像11本のまとめ+オマケいくつか

 

実際の映像はそちらで観ていただくとして、私の感想としては、まずフィーチャリングが豪華すぎ! プロデューサーによるフィーチャリングを除くと、Jay Park、GRAY、Loco、Simon Dominic、sogumm、ウ・ウォンジェ、The Quiett、YUMDDA、SUMIN、Mommy Son、Jessi、イ・ヨンジ、JAMIE。年末の音楽祭か! ってかAOMG祭りか!

めっちゃ豪華なフィーチャリング陣は観ていて最高に楽しいんだけど、視聴者投票がフィーチャリングアーティストの人気投票になっちゃいそうなのがちょっと心配になりました。Lil Boiの実力だけでも十分に大量の票を獲得できるのに、フィーチャリングがJay ParkとGRAYとLocoって、Lil Boiが霞んで見える気すらしたし(笑)。

一方で知名度や人気は劣るけど、SUMINを起用したSwingsの1ラウンド目のステージは個人的にすごく好きでした。主人公であるSwingsの魅力が引き立ってたから。あとはLayoneの1ラウンド目のステージもすごく良かったです。sogummとウ・ウォンジェの効果もあるけど、コンセプト通り本当に夢の中でまどろんでるようでとても印象に残りました。あと、MUSHVENOMが一貫して仲間をステージに上げ続けたのも良かったし、メッセージ性も高くてかっこよかったです。

トップ4による8回のステージで一番良かったのは、Lil Boiの2ラウンド目の『CREDIT』です。作品などに関わった人たちの名前を表示したものを指す「クレジット」をテーマにした曲で、Lil Boiが多くの人たちへの感謝の思いをラップすると共に、バックスクリーンには映画のエンドロールのようにズラッとクレジットが流れてとても感動的でした。

何より、曲の後半でこれまでLil Boiのことを支えてきたプロデューサーであるGIRIBOYとZion.Tの2人が揃って登場した瞬間、鳥肌が立ちました。たまたま8回のステージのトリを飾る曲でもあったけど、今シーズンの全10話分の集大成のように感じて、番組の最後を飾るにふさわしい曲だと思いました。Zion.Tの歌声が胸に響く! その動画だけここに貼っちゃう!

 

というわけで、ファイナルの8つのステージが終了し、結果発表です。ファイナルの審査方法はオンラインで事前にステージを見た審査員たちが投票(60%)、そして生放送中に視聴者が投票(40%)、それを合算した結果で順位を決めます。視聴者投票は韓国で定番のやり方で、指定の電話番号宛てにSMSで送信します。

毎年のことですが、結果発表が引っ張る引っ張る。どんだけ待っても引っ張られ続け、その間にハミガキしたり寝る準備をしてました。なんせ番組が23時に始まって、終わったのが深夜2時近かったし。そして散々引っ張られたのち、ついに優勝者の名前が発表!

優勝したのは……

 

……

 

……

 

ここでも引っ張る(笑)

 

……

 

……

 

チュッカハムニダ!(番組風に)
優勝者は、Lil Boiです!!!!!

 

あーやっぱそうなったかー!

実力からしても申し分ないし、番組を通して素晴らしいパフォーマンスを見せ続けてきたし、最初から最後まで一貫してポジティブなエネルギーを見せ続けたLil Boi。スマッシュヒット曲も出したことのある超メジャー級アーティストだし、新人と競うには当然有利な立場ではあったけど、総合的に判断しても納得の結果なのではないでしょうか!

最後の『CREDIT』のステージもあまりにも良かったし、最後にこの曲をやったその流れで優勝というのは、番組としてはとても綺麗だったと思います。優勝報酬である新レーベルのサポートを一番必要としてるのはLil Boiではないとは思いますが、自分のレーベルをこれから軌道に乗せるためには願ってもないチャンスなのではないでしょうか。

ファイナルの最終順位は以下の通り。

1位:Lil Boi
2位:MUSHVENOM
3位:Layone
4位:Swings

惜しくも優勝を逃した3人、残念だったけど、ベテランも多く含む23,000人の応募者からトップ3に入ったLayoneとMUSHVENOMは本当にすごいことです。Swingsはそもそもプロデューサー側にいるべき人ですが、ベテランになると逆に古いってバカにされたりする風潮がある中で、番組の盛り上げ役として本当に素晴らしい役回りをされたと思います。

セミファイナルまで行ったKhundi Panda、Wonstein、Untell、Miraniもこれからますます活躍していくのだろうと思うと楽しみです。トップ16に入ったMunchman、Chillin Homie、Khakii、ホ・ソンヒョン(Rose de Penny)、DSEL、kaogaii、Mckdaddy、Skyminhyukもお疲れ様でした。トップ16まで入れば箔が付きますからね。来年もまた番組があるならぜひ再挑戦してほしいです。

ってなわけでー!

今シーズンはバラエティ要素強めでおもしろかったし、審査基準も若干思うところはあったけどいつもよりフェアだったし、とても楽しませていただきました。番組からリリースされた全34曲のプレイリストをApple MusicとSpotifyで作ってあるので、良かったらそちらもフォローしてね!(Apple Music プレイリストSpotify プレイリスト

では最後に改めて、Lil Boi、おめでとうございます!!!


Lil Boi Instagramより

ちなみにGIRIBOYはシーズン7から3年連続で優勝者のプロデューサーとなりました。3年連続で出たことを叩かれもしたけど(審査する側が特定のレーベルに偏ることが危惧されてる)、これだけ結果を出してるんだから素直にすごいですよね!

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