次回はベスト8が競い合うセミファイナル! その前に『SHOW ME THE MONEY 9』の第7〜8話を振り返る

Written By Sakiko Torii

この記事はできる限りネタバレ控えめで書くようにしますが、どうしてもここまで来ると誰が残ってるかを書かないわけにもいかず、それだけで「この人が残ってるんだ」「あの人は脱落したんだな」とか分かっちゃいます。日本語字幕放送が出るまで何にも知りたくないという人は、この記事をブックマークに入れるなりして、あとの楽しみに取っておいてください。

この記事では第7〜8話の振り返りをやりますが、その前に過去シーズンと今シーズンの1〜6話までの振り返りもやりたいと思います。それをすっ飛ばしたい方は、ガーッと下のほうまで行って「今シーズン、第7〜8話の振り返り」という項目から読んでください。

 

過去シーズンの振り返り

私が『SHOW ME THE MONEY』を初めてリアルタイムで観たのは、2013年のシーズン2。当時は日本どころか韓国現地でもヒップホップの人気は低く、バラエティ番組で芸能活動をしているラッパーしか知られていませんでした。彼らは音楽性もヒップホップというより大衆的なポップスに寄せていて、そのためヒップホップシーンではアンダーとメジャーがくっきりと分かれていました。

2012年に『SHOW ME THE MONEY』が初めて放送され、ラッパーたちの間では批判の嵐が吹き荒れました。「ヒップホップをろくに理解してないテレビマンが金儲けに利用してる」「大衆に間違ったヒップホップのイメージを植え付けてしまう」「ヒップホップをエンタメ化するな」など、ラッパーもヒップホップメディアもこぞって批判していました。

ところがシーズン2で “韓国ヒップホップの祖” とされるMC Metaが審査員に加わり、さらにアンダーシーンの最前線にいたSwingsが挑戦者として参加したことで、番組を肯定的に捉える人も増えました。そんな私もMC MetaとSwingsが目的で番組を観ました。シーズン2はルールに不備が多くて番組自体はボロボロでしたが、Swingsの人気急上昇っぷりを見て「逆にこの番組を利用してやろう」と思ったラッパーも少なくなかったようです。

『SHOW ME THE MONEY 2』Swings 1次審査の様子

 

そして迎えた2014年のシーズン3。YGエンターテインメントに所属するアイドル練習生たちが参加したことにより、番組の視聴者層が一気に広がりました。若手ヒップホップの典型的なイメージを具現化したようなDok2 & The Quiettがプロデューサーを務めたのも功を奏し、番組の人気はうなぎのぼりに。

それ以降のシーズンは、それまで番組を批判していたラッパーたちも次々に出るようになりました(プロデューサーとしてはPaloalto、Simon Dominic、Deepflowなど、挑戦者やゲスト出演としてはReddy、B-Free、JUSTHISなど)。あれだけ批判してたくせに出るのかよってことで、ファンから叩かれたり、ラッパー間でディスし合ったりと散々な感じでしたが、そうこうするうちに気がつけば『SHOW ME THE MONEY』は年に一度の一大ヒップホップイベントとして認められるようになりました。

毎シーズン、番組の内容に対して何かしら炎上があったり、出演者がプライベートで問題を起こしたり、大ヒット曲が生まれたり、いい意味でも悪い意味でも話題が尽きない『SHOW ME THE MONEY』。2020年は激動のコロナ禍でシーズン9が始まり、そして残すところあと2話というところまで来ました。

 

今シーズン、第1〜6話の振り返り

今年は応募者が過去最高の23,000人でした。ところがよりによって今年はコロナの影響で1次予選に呼ぶラッパーを少なくする必要があったため、映像審査でバシバシと落としたようです。絶対に落ちるレベルじゃないラッパーも落とされたため、プチ炎上気味です(※1:映像審査で落ちたのは誰かというネタバレは、この記事の一番最後に記載します)

そんな厳しすぎる映像審査を経て、厳選されたラッパーたちが集まった1次審査。番組はその様子を流すところからスタートしました。1次審査と2次審査の様子をまとめた第1〜2話の振り返り記事はこちらをご覧ください。

『SHOW ME THE MONEY 9』の第1〜2話を振り返る。現時点での注目すべき参加者も簡単にご紹介!(ネタバレ極力控えめ)

 

そして3次審査と4次審査の音源ミッションバトル(=ベスト16決定戦)までの様子をまとめた第3〜6話の振り返りはこちら。

音源ミッションに突入した『SHOW ME THE MONEY 9』から最初の4曲がリリース。チャート1位を取った曲も!(第3〜6話の振り返り)

 

今シーズン、第7〜8話の振り返り

ここからが本コラムの本題です。5次審査にあたるディスバトル、本選前のマイク選択、本選ステージ対決までの様子をまとめた第7〜8話の振り返りをやります。

  • 映像審査:ラップしている映像を送って合否の通知
  • 1次審査:アカペラでラップを披露して、合格者122人
  • 2次審査:60秒のステージパフォーマンス。合格者10人×4チーム=40人
  • 3次審査前のリーダー選抜戦:各チームで1人ずつ脱落。合格者9人×4チーム=36人
  • 3次審査:トリプルクルーバトル。チーム内で3人ずつ3つのクルーに分かれて対決。合格者6人×4チーム=24人
  • 4次審査:音源ミッション。チーム内で3人ずつ2つのクルーに分かれて対決。合格者4人×4チーム=16人
  • 5次審査:チーム対抗ディスバトル。負けた2チームから1人ずつ脱落=合格者14人
  • 本選前のマイク選択:各チームから1人ずつ脱落=合格者10人
  • 本選ステージ対決:負けた2チームから1人ずつ脱落=トップ8

 

5次審査のディスバトルは、今シーズン初のチーム対抗戦でした。それまではチーム内で戦っては脱落していくので、戦って勝ったというよりは仲間を犠牲に勝ち進んでいく感があってやるせない部分も多かったのですが、ディスバトルではチーム対チームなので正真正銘の勝負って感じだし、何より内容がディスなので、それはそれはバトル感があって楽しかったです。

ディスバトルというと罵り合いのイメージを持つ方も多いと思いますが、『SHOW ME THE MONEY』ではどれだけウィットに富んだ表現で笑いを取れるかが重要です。もちろん本物のディス戦の場合は目を覆いたくなるような泥仕合になることも多いけど、これはテレビ番組なので相手を罵るのではなく笑いに持っていくスキルが求められます。

今回も事前に録音しておいたネタや小道具をたくさん使って、相手のモノマネ、黒歴史、うまくいってない部分など痛いところをついて、小学生男児並みの茶化しを入れつつ、言われた本人も笑っちゃうみたいな楽しい内容でした。その一方で、別のラッパーがラップしてる最中に別のラッパー同士で「何だやるか!?」みたいなどつき合いになってるのも爆笑ものでした。

\何だやるか!?/

 

途中までは私も楽しんでケタケタ笑いながら観てたんだけど、Swingsの番になったらドン引き。ドン引きしたあとは楽しいのか嫌なのか分からない微妙な気分になってしまいましたが、そのあとYouTubeで何度も観ているうちに楽しいと思えるようになりました(※2:なんでSwingsのディスバトルがキツかったのかというネタバレは、この記事の一番最後に記載します)

ちなみにこの記事の一番上に貼ってある画像は、5次審査であるディスバトル全体の模様をまとめたオフィシャル動画のサムネイルです。ネタバレとか気にしないからもう観ちゃおうかなって方は、こちらどうぞ。

[SMTM9] ディスバトルステージまとめ

 

16人で戦ったディスバトル。負けた2チームから1人ずつ脱落者が出て、残った14人が本選に進出……かと思いきや、本選に進めるのは10人とのこと。その10人を決めるのは「マイク選択」というルールです。これはステージに上がる直前のバックステージで実際に誰をステージに上げるか(=マイクを渡す人を選択するか)プロデューサーが決めるというもので、視聴者から非常に評判が悪いルールです。一度は無くなったのですが、残念ながら今シーズンで復活してしまいました。

本選ステージを前に各チームから1人ずつ、合計4人の脱落者が出て残り10人となりました。ところでこの4人の脱落者のうち、1人はちょっと残念な形で脱落することとなってしまいました(※3:マイク選択で残念な脱落となったのは誰か、この記事の一番最後に記載します)

そんな紆余曲折を経て本選ステージに上がった10人のパフォーマンス映像、ここで一気に貼りたい……と思ったのですが、あまりにも多いので別記事に貼ることにしました。映像を観たい方はこちらの記事をご覧ください ↓

『SHOW ME THE MONEY 9』第7〜8話で放送された本選ステージ10本の動画まとめ

 

これら本選ステージの結果、2人が脱落し、ベスト8が決定しました。

そしてついに次回はセミファイナル。8人のうち、ファイナルに進む4人は誰になるのか!? そして優勝は果たして誰の手に!? 優勝者は12月18日(金) の生放送で決定するので、出演者たちも含め、まだ誰にも結果は分かりません。

次のコラムは、最終回が終わって優勝者が決定したときに書こうと思います。いつもはこんなに『SHOW ME THE MONEY』について記事を書くことってないんだけど、今年は内容がおもしろいのと、今自分が取り組んでる仕事の内容がちょっと絡んでる部分もあって、いつも以上に真剣に観ているというのもあります。いずれにせよ残すところあと2話、思いっきり楽しもうと思います!

 


 

ここから先はネタバレシリーズ。上のほうで「※」をつけて青字で「この記事の一番最後に記載します」と書いた3つの解説です。ネタバレが嫌な方は、番組を観終わったあとにまたこの記事に戻ってきてください!

 

※1:映像審査で落ちたのは誰か

映像審査で落ちるレベルじゃないラッパーたちも落とされて、審査基準に対して疑問の声が多くあがっています。落ちたのはJa Mezz、twlv、JJANGYOU、YunB、ICE PUFF、Jay Moon、Cloudybay、LO VOLF、IndEgo Aid、Kor Kash、Bill Staxなど。この中でBill Stax(元Vasco)に関しては、麻薬取締法の前科があるためテレビに映すことができないという理由で落選したので仕方ないです。

過去シーズンで何度も大活躍をしたJa Mezzは映像審査に送った映像を公開していますが、かなりうまくてとても落ちるレベルじゃないとヒップホップファンたちが怒っています。twlvについては本業はシンガーですが、ラップの実力も確かなものなのでこれまた理不尽だと言われています。Jay MoonやKor Kashも注目株で間違いなくうまいし、JJANGYOU、YunB、ICE PUFFについても過去のシーズンで活躍したほどの実力者たち。

彼らの落選について番組側からは特に説明は何もありませんが、問い詰めたところで過去に多く使われた「再挑戦者に厳しくした」という言い訳を使いそうだと言われています。しかし今シーズンで多くの再挑戦者たちが活躍していることを考えるとその言い訳も通用しません。咋シーズンでも「再挑戦者だから厳しくした」という理由でパフォーマンスがすごく良かったラッパーが落とされて、「だったらあのラッパーだって再挑戦だしまあまあだったのになんで合格なの?」みたいな批判があがっていました。審査基準が曖昧で恣意的なところは、毎年炎上している部分です。

 

※2:なんでSwingsのディスバトルがキツかったのか

Swingsはなんと、思い出したくもない、あの2013年の「Control大乱」で使われた『Control』ビートに乗せてきたんです。「Control大乱って何?」という方は、以下の4つの記事を上から順に読んでいってください。

 

余力があれば続編とも言えるこちらも。この3つは私の思いが溢れ出てる暑苦しい記事なので、苦手な人はスルーしてください。でも「センスに捧ぐ。」ってやつの序盤だけは読んでおいたほうがいいかも。「Control大乱」に対するGaekoのその後の心境が知れるので。

 

当時、あちこちにディス戦を仕掛けてシーンを荒らしていたSwings。この「Control大乱」の火付け役であり、外野から煽りまくって状況をこじらせた張本人であり、それらが原因で当時の韓国ヒップホップシーンを牽引していたAmoeba Cultureが窮地に陥り、シーンの流れや相関図を変える原因を作った、その泥仕合の中心にいたSwingsが、これまたその中心にいたGaekoもいる場所でこのビートを使ったのだから。

このビートが流れた瞬間、ラッパーたちは「うおお〜!!!」と叫び、Choizaはもう笑うしかないって感じでGaekoの肩をポンっと叩き、Gaekoはすごい複雑な表情で「いや〜、これを……。心が複雑だ」とつぶやきました。この発言は韓国で今シーズンの名言に数えられています(笑)。Swingsがこのビートに乗せて激しくラップしてる最中、Dynamic Duoの2人の表情がすごく微妙でした(笑)。

 

ビートもビートだけど、Swingsが対戦相手のSkyminhyuk(スカイミンヒョク)の帽子をバンっと叩いて落とし、ヘッドロックをかけながらラップを始めたので、ラッパーやプロデューサーたちから悲鳴のような声が(笑)。

正直イントロが流れた瞬間に私のテンションもだだ下がりだったんだけど、Dynamic Duoの反応を見て、不謹慎ながらクスッと笑ってしまいました。クスッと笑えるくらい時間が経ったんだな〜と実感。あの頃は自分の大好きなラッパーたちが夜な夜なディス曲を出すので全然眠れなかったから。つらくて眠れないんじゃなくて、いつ次の曲が出るのかと思うとハラハラして寝てられない。そのほんの少し前に韓国で彼らのコンサートを楽しんできたばかりだったので、自分の楽しかった思い出が目の前で崩れ落ちていく感覚でしたね。

でもこの対戦で一番面白かったのは、この時SwingsにボコボコにされたはずのSkyminhyukがノーダメージだったことです。むしろおいしい役回りをもらった芸人のような様子で、Swings相手におちょくりまくりの好戦を繰り広げ、好感度が最高に上がりました。

余談ですが、この放送直後から当サイトの「Control大乱」関連の記事の閲覧数が伸びまくりました。思ったよりも番組をリアタイしてる人が結構いるんだな〜と思いましたね。

 

※3:マイク選択で残念な脱落となったのは誰か

答:Chillin Homie

シーズン7と8でも大活躍したChillin Homie。今シーズンも順調に勝ち進んでいきましたが、マイク選択ミッションを目前に体調が悪いと言い始めました。リハーサルにも来なくて、ついには本番にも来なくて。実はChillin Homieは以前からうつ病とパニック障害を患っていたそうです。

薬を飲むと頭がぼうっとするため、番組の前から薬の服用をやめていたそうなのですが、そのせいでだんだん症状が悪化していったようです。それでもがんばって本選直前のマイク選択まで進みましたが、前日の記憶も飛ぶような状況が怖くなって降板を決めたそうです。

ここまで来てこういう形で棄権となったのは残念だけど、実力が高いことは確かだし、今は身体をゆっくりと休ませて、またいつか元気な姿を見せてほしいなと思います。

 

Related

/

Access Top

/

Subscribe us!

BLOOMINT MUSICの最新情報をお届けします。

友だちに追加

Sponsored Link