『SHOW ME THE MONEY 777』で話題沸騰中のラッパー「Mommy Son」とは? 脱落後に発表したトラック『소년점프(少年ジャンプ)』が大ブレイク!

Written By soulitude / Sakiko Torii

今、韓国のヒップホップシーンで話題の中心になっているものと言えば、それは間違いなく『SHOW ME THE MONEY 777』でしょう。当サイトでも番組開始直前にこちらのコラムで過去シーズンの振り返りや今シーズンの見どころなどをご紹介しました。現時点では第3話までが放送されたところですが、早くも有名ラッパーたちの明暗がくっきりと分かれ、次はどうなるのだろうかと観ているこちらまでハラハラの連続です。

ところでそんな挑戦者の中に、番組の枠を飛び越えてとてつもない注目を浴びている謎のラッパーがいることをご存知でしょうか? 彼の名はMommy Son(マミソン)。彼が9月14日に公開した『소년점프(少年ジャンプ)』という曲のミュージックビデオは、なんと公開からわずか10日足らずで、すでに800万回再生に迫る勢いです。無名のラッパーとしては異例の事態と言えるのではないでしょうか。

Mommy Sonが初めてその姿を現したのは、9月7日の番組初回放送の時。派手なピンク色の覆面をかぶったまま予選に登場し、その場にいた多くのラッパーたちやカメラの目を一斉に引きました。素顔が全く分からないだけではなく、ラップネームもまた韓国で有名なゴム手袋のブランド「マミソン」をそのまま使っていて、ただならぬ存在感を放っていました。

[参考画像] 審査会場でのMommy Sonの様子 – 『SHOW ME THE MONEY 777』第1話より

 

9月14日に放送された第2話では、さらに不思議な場面がいくつもありました。プロデューサー(審査員)のSwingsが、一切正体を明かしていないはずのMommy Sonに向かって「ヒョン(兄さん)」と呼んだのです。覆面のすき間からのぞく目尻のシワで年上だと予想でもしたのでしょうか。同じくプロデューサーのDeepflowもまた、Mommy Sonの挑戦に対して「とても勇気のある決断」と感慨深そうに話していました。まるで今自分が座っている席に、かつてMommy Sonが座っていたとでも言わんばかりの言葉の重みです。

Mommy Sonはそんな微妙な感じの空気が漂う中で、初めてラップを披露しました。なぜかここ10年ほどの間、何度となく聴いてきたような気のする声です。熟練した彼のハイトーン・ラップはとても攻撃的かつ変則的なスタイルで、まるで “気の狂った道化師” のようでした。この放送を観た人たちの間では、彼のラップを聴きながら、なぜか2000年代半ばに韓国のアンダーグラウンド・ヒップホップシーンを率いていたレーベル「Soul Company」の思い出や、『SHOW ME THE MONEY』のシーズン2や5の様々な場面が走馬灯のように頭に浮かんできたという不思議な体験を告白した人も少なくありません。

しかしMommy Sonはラップの途中で歌詞のミスをしてしまい、どのプロデューサーからも選ばれずに脱落してしまいました。どうやら覆面をかぶっていたせいで、ビートがよく聴こえなかったのが原因のようです。審査後のインタビューで、プロデューサーのPaloaltoは「覆面の耳の部分も開いていたら良かったのでは」と語っていました。同じくプロデューサーのThe Quiettも「僕たちもライブの時にフードをかぶると音がよく聴こえない」と話した上で、まるで昔の仲間のことを思っているかのように「今日の脱落者の中で一番悲しい脱落だった」と切なそうに語っていました。

[参考画像] Mommy Sonの審査シーン – 『SHOW ME THE MONEY 777』第2話より

 

しかしこの脱落もまた、彼の青写真に含まれていたのかもしれません。Mommy Sonは自分の脱落が放送されたその日、待ってましたと言わんばかりに『소년점프(少年ジャンプ)』のミュージックビデオを公開しました。曲の紹介欄に「Things are going as planned(計画通りに進んでいる)」という意味深なメッセージを添えて。

曲名はそのまま、日本人にとってはお馴染みのマンガ雑誌『少年ジャンプ』から来ています。Mommy Sonは歌詞の中で自分自身を少年マンガの主人公に例え、「序盤では苦労するが、試練を乗り越えて最後は笑う」と語っています。どうやら今回の脱落はその試練のひとつだったようです。Mommy Sonはさらに歌詞の中で『SHOW ME THE MONEY 777』のプロデューサー8人の名前を列挙し、彼らを「悪党」と呼んでいます。「悪党ども、待ってろ!」と。

[MV] Mommy Son – 소년점프(少年ジャンプ)(Feat. ペ・ギソン)

 

それにしても無名のラッパーであるMommy Sonがどうやってキャスティングできたのか、『SHOW ME THE MONEY』のシーズン2出身のラッパーDinDin(ディンディン)がこのミュージックビデオにカメオ出演しています。さらにシーズン5でマイクを渡されずに脱落したDonutmanに対して謝っている歌詞があることを見ると、Mommy Sonが何らかの形で同番組と縁があるように思えてなりません。しかしどんな縁があるのか、決して明かされることはないのです。

ちなみにこの曲にフィーチャリングしているペ・ギソンは、2004年に日本のロックバンド「TUBE」の代表曲『ガラスのメモリーズ』を翻案した『내 생에 봄날은(我が人生に春日は)』で名が知られるようになったデュオ「CAN」のメンバーです。これまでヒップホップシーンとの交流は全くなかったので、とても意外なコラボです。楽曲の内容も、ビデオの独特な編集も、どれを取ってもとてもじゃないけど普通ではありません。Mommy Sonとは一体何者なんでしょうか。ますますその正体が気になって夜も眠れません。

一方、こんな状況の中で、有名ラッパーのMad ClownがMommy Sonをディスしたことが話題になっています。9月15日に開催された「RAPBEAT FESTIVAL 2018」のステージに上がったMad Clownは、「最近ちょっと変な人がいますね。覆面なんかかぶって。『SHOW ME THE MONEY』で落ちたらミュージックビデオなんか出したり。聴いてみましたか? なんかラップも超簡単でした」などとMommy Sonをバカにするような発言をし、『소년점프(少年ジャンプ)』の一部をマネしたりもしました。

そんなMad Clownですが、先日なぜか突然、ゴム手袋ブランドの「マミソン」から製品10箱(600枚)が贈られたそうです。Mad Clownはそれを自身のインスタグラムに掲載し、ハッシュタグで「#이걸왜나에게(これをなんで俺に)」と驚きの気持ちを伝えました。

 

“気の狂った道化師” という意味のラップネームを持つMad Clownは、The QuiettとKebeeが運営していたレーベル「Soul Company」のメンバーとして活動を始めたラッパーです。『SHOW ME THE MONEY』のシーズン2では一般の参加者として、そしてシーズン5ではプロデューサーとして出演しました。メジャー事務所である「STARSHIPエンターテインメント」に所属し、アイドルともコラボするなど幅広い活動を重ねてきています。鋭いハイトーン・ラップと非常に攻撃的なラップ・スタイルが特徴的ですが、デビュー初期から歌詞を忘れるミスが多いことでも有名です。

同番組でプロデューサーまで務めたほどの有名ラッパーであるMad Clownが、早々と脱落してしまった無名の新人のことをディスするなんて辛辣ですね。Mad Clownは元々性格が内気なことでも知られていて、ギャグ的な要素からはかなり距離があるラッパーでしたが、Mommy Sonの持つユーモラスな雰囲気に嫉妬でもしているのでしょうか。

いずれにせよ、『SHOW ME THE MONEY 777』の放送開始直後でいきなりラッパーがブレイクしたのは初めてのことですし、しかもそれが番組の序盤で脱落したラッパーであること、正体不明であることなど、何もかもが初めてのことだらけで話題が尽きません。今後のMommy Sonの活動に大きな期待が集まります。

writersoulitude / Sakiko Torii

soulitude / 日韓の大衆音楽事情を専門とするライター。歌詞・記事の翻訳や音源の流通、キュレーションなどの職業を経て、今は日韓の音楽シーンの架け橋となるべく活動中。Sakiko Torii / BLOOMINT MUSICの創設者および編集長。韓国ヒップホップ・キュレーターとして執筆、ライヴ主催、音源/MV制作サポート、メディア出演など多方面に活躍中。

Related

/

Access Top

/

Subscribe us!

BLOOMINT MUSICの最新情報をお届けします。

友だちに追加