Simon Dominicの新作『火気厳禁』参加アーティスト10人を紹介![前編]

Written By soulitude

AOMG所属のSimon Dominic(サイモン・ドミニク)が9月3日にEP『화기엄금(火気厳禁)』をリリースした。

EP | Simon Dominic ‐ 화기엄금 (火気厳禁)

 

彼は長い間、優秀なラップスキルを持っていながら「リリースが少ない怠け者のラッパー」という汚名を着せられていた。そのためアルバム制作に対する大きなストレスを抱えていた彼は、昨年AOMGのCEOを辞任。7年ぶりにリリースされたアルバム『DARKROOM』もまた、自信満々でパワフルだったかつての姿が全く見られない憂鬱な雰囲気の作品となった。もう以前のような豪快で堂々とした姿の彼は見られないのかと思われた。

しかしいったん『DARKROOM』をリリースすることでストレスをふっ飛ばしたSimon Dominicは、前作とは180度違ったパーティートラックたっぷりのアルバムで戻ってきた。自信を取り戻した彼のラップは期待を裏切らない。しかもミュージックビデオをひとつも制作しなかった前作とは違い、今回は全トラックのミュージックビデオを制作するという。さらにその合間にAOMGのオーディション番組『Signhere』にも出演している。もう誰も彼のことを「怠け者」とは呼べないだろう。

本作では数多いフィーチャリング・アーティストを迎えている。『DARKROOM』にはボーカルが2人参加しただけだったが、本作には幅広い世代とジャンルから10人ものアーティストが参加。すでに日本の韓国ヒップホップファンの間でよく知られているアーティストもいれば、日本で知名度がなくとも韓国のヒップホップシーンで大きな注目を集めているアーティストもいる。本作を楽しむのはもちろん、これらのアーティストたちの音楽もぜひ聴いてほしいと思い、この機会に彼らを紹介したい。

*前編と後編に分けて5人ずつ紹介します

 

GooseBumps(グースバンプス)

本作『화기엄금(火気厳禁)』の全トラックを手掛けたプロデューサーが、GooseBumpsだ。彼はSimon Dominicが使用するスタジオ「DARKROOM」のルームメイトで、自然とニューアルバムに参加することになったという。スタジオ名の「DARKROOM」はSimon Dominicが去年リリースしたアルバムのタイトルにもなっている。Simon Dominicは前作の暗い雰囲気とは正反対の雰囲気を持ったアルバムを求め、GooseBumpsとの協業を決めたのだ。

[MV] Simon Dominic – DAx4

 

GooseBumpsは日本では知られていないが、韓国のクラブシーンで長い間活躍してきたアーティストだ。全羅北道の群山(クンサン)という地域を拠点に活動を開始した彼は、2012年にシングル『C.I.G.F』でデビュー。同じ地域出身のアーティストが集結したクルー「ADDVALUER(アドベリュアー)」のプロデューサーおよびDJとして活動を重ね、2016年には1stアルバム『GooseBumps Track』をリリースした。2018年にリリースした2ndアルバム『STAGE II』では前作とは異なるメロウな雰囲気の音楽も披露した。

[MV] GooseBumps – BIRD GO BIRD GO (Feat. SIMAHOY)

 

Sik-K、LOCO、Coogie、PNSBなどのラッパーたちにトラックを提供するなどプロデューサーとして活動を広げる一方、DJとしてはクルー「DIPCOIN」のメンバーとしてパーティーを開催したり、SBSで放送されたDJバトル番組『DJショー・トライアングル』に出演したりと幅広く活躍。ちなみに「DARKROOM」のスタジオメイト同士の交流は深いが、今のところ正式な団体として結成されているわけではないとのこと。

[MV] Sik-K – WATER (Feat. Woodie Gochild, pH-1, HAON, Jay Park) (Prod. GooseBumps)

 

 

Crush(クラッシュ)

つい最近「P NATION」への移籍を発表したCrushは、Loopyと共に『화기엄금(火気厳禁)』の『make her dance』という曲にフィーチャリングした。Simon Dominic とGooseBumpsが同トラックによく似合うアーティストとして思いついたのがLoopyとCrushだったという。

[MV] Simon Dominic – make her dance (Feat. Loopy & Crush)

 

先日リリースしたシングル『NAPPA』を含め、自身の楽曲ではスムーズなR&Bを主に披露してきているCrushだが、‎クルー「FANXY CHILD」の楽曲や今回のようなフィーチャリングではセクシーでパワフルな魅力を発散することもある。アマチュア時代はラッパー志望だったということもあり、時にラップを披露することもあるが、今回は歌とラップの両方を繋げた印象的なヴァースを組み立てた。ミュージックビデオでさりげなく見せたダンスも格好いい。

[MV] Crush – NAPPA

 

実はCrushとSimon Dominicとの交流は意外と長い。2013年には『그대로 있어도 돼(そのままでいてもいい)』という曲で共演し、当時のCrushのインタビューにもSimon Dominicの話が出てくる。Crushの1stアルバム『Crush On You』に収録された『Give It To Me』という楽曲には、Simon DominicとJay Parkが参加している。この楽曲と今回の楽曲は雰囲気が相当相違しているため、両方を比べて聴いてみるのもおもしろいだろう。

[Official Audio] Give It to Me (Feat. Jay Park, Simon Dominic)

 

 

Loopy(ルーピー)

Crushと共に『make her dance』にフィーチャリングしたLoopy。日本でも『SHOW ME THE MONEY 777』の視聴者であれば誰もが知っている存在だ。しかし彼が韓国のヒップホップシーンで注目を集め始めたのは、その何年も前のことである。

[Live] Loopy – NoNo (Feat. Simon Dominic)

 

彼はロサンゼルスに留学していた頃にはすでにラッパーとして活動しており、「KHILA – Korean Hiphop in LA」というドキュメンタリーでも彼の姿が見られる。当時彼がスキルフルなラップを披露した『GEAR 2』のライブ映像がインターネット上で話題になり、韓国のヒップホップファンにもその存在が知られるようになった。その勢いに乗り、2016年にはロサンゼルスで一緒に活動していたnafla、BLOOと共に帰国し、レーベル「MKIT RAIN」を立ち上げた

[MV] MKIT RAIN – Weathermen

 

韓国に帰国して間もなく韓国ヒップホップシーンで引っ張りだことなり、Paloalto、CODE KUNST、Dumbfoundeadなど様々なアーティストとのコラボを果たした。ソロ名義でも3枚のEPをリリースし、レーベルのコンピレーションやコンサート活動なども精力的に行った。2018年にはレーベルメイトであるnaflaと共に『SHOW ME THE MONEY 777』に出場し、naflaの優勝に続いて準優勝を獲得。「MKIT RAIN」の名前をさらに広げることとなる。同番組が終わってからはnaflaと正式にデュオを結成し、シングル『Woke Up Like This』を皮切りにいくつものトラックをリリースし、今年6月にはEP『LooFla』も発表した。

[MV] Loopy – KING LOOPY

 

 

JayAllDay(ジェイオールデイ)

日本人ラッパーのKOHHとLootaが参加したKeith Apeのヒット曲『It G Ma』で、最初のヴァースを担当しているのがJayAllDayだ。Keith Ape、Okasian、B-Free、Dbo、CokeJazzなどが所属しているクルー「The Cohort」のメンバーでもある。EP『화기엄금(火気厳禁)』では『ya ain’t gang』というトラックにフィーチャリングした。

[MV] Keith Ape – It G Ma (feat. JayAllDay, Loota, Okasian & Kohh)

 

実はJayAllDayは別に本業を持っており、ラップはただの趣味だという。そのためこれまでリリースされた楽曲はもちろん、フィーチャリングした楽曲も決して多くはない。そんな彼がSimon Dominicのアルバムに参加したのは意外に思われるが、実はこの2人は元々親しい。飲み仲間として普段からよく会い、一緒にお酒を飲みながら話し合ったりしているという。

[MV] Simon Dominic – ya ain’t gang (Feat. JayAllDay & SIMO of Y2K92)

 

力の抜けた低音ボイスでゆっくりと歌詞を踏んでいくようなユニークなラップスタイルを持つJayAllDayだが、今回は友人のためということもあり、自身のキャリアの中で最も早いラップをがんばったという。Simon Dominicの力強いラップとは真逆のラップスタイルで、楽曲のバランスにいい効果をもたらしている。

[MV] JayAllday – Sirens (Feat. Ness)

 

 

SIMO(シモ)

SIMOはヒップホップからエレクトロニックまで幅広いジャンルを行き来するラッパー兼プロデューサーだ。JayAllDayと同じく『ya ain’t gang』にフィーチャリングした。Simon DominicはJayAllDayの起用を決めたあと、GooseBumpsのアルバム『GooseBumps Track』に収録された『멍청이(バカ)』というトラックでJayAllDayとSIMOが共演したことを思い出し、その組み合わせを再現しようと思って声を掛けたという。

[Audio] SIMO – 칙칙 폭폭 (Chick Chick Pok Pok) (Feat. Jibin, Supreme boi, MalmiKing)

 

SIMOは2006年から活動を始め、「Simo&Mood Schula」としてエクスペリメンタルなエレクトロニック・ヒップホップでシーンに衝撃を与えた。韓国のクラブシーンではその名を知らない人はほとんどいない。今はJIBINと「Y2K92」というチームを結成して再び実験的な音楽性を放つトラックをリリースしている。意外性のあるユニークな音楽を求める人は、ぜひ「Simo&Mood Schula」と「Y2K92」をチェックしてみてほしい。

[Live] Y2K92 – Outro (BUDXBEATS In the Studio)

 

JayAllDayもそうだが、SIMOもここ数年はラッパーとしてフィーチャリングなどの活動が多くなかったため、かなり意外な参加者だと言われた。ちなみに今回のEP『화기엄금(火気厳禁)』の10人の参加者の中で、『ya ain’t gang』に参加したこの2人のみがSimon Dominicより年上である。

[Audio] SIMO & Mood Schula – Kick Ass

 

後編へ続く
↓ ↓ ↓

Simon Dominicの新作『火気厳禁』参加アーティスト10人を紹介![後編]

 

writersoulitude

ポピュラーミュージックを専門とするライター。日韓の両国で記事執筆、歌詞や記事の翻訳、音源の流通などの仕事をしている。多様なメディアを通じて日韓の音楽シーンの架け橋となるべく活動中。



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