『SHOW ME THE MONEY 777』から初の音源リリース、チャート上位を独占!

Written By soulitude / Sakiko Torii

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※注意:本コラムには番組のネタバレが多く含まれます

 

本サイトでもたびたび動向を追ってきているヒップホップ・サバイバル番組の『SHOW ME THE MONEY 777』。このたび本シーズンから初の音源がリリースされ、大きな話題となっています。

10月5日放送の第5話までに勝ち残った挑戦者は16人。この日は4組のプロデューサー・チームに4人ずつ振り分けられ、「音源ミッション」が開催されました。各チームとも、プロデューサーから与えられたビートを元に短い制限時間内でラップメイキングとパフォーマンスの練習をし、それをステージで披露するというミッションです。4人で構成された各チームは、互いに協力し合いながらトラックとステージを作り上げていきます。良いトラックとステージを作るためにはチームワークがとても重要になりますが、その4人の中から1人ずつが落とされるというミッションなので、チームメンバーでもあってバトル相手でもあるというなかなか複雑な関係です。

この「音源ミッション」のステージは、もともと香港の野外ステージで夜景を背景に開催される予定でした。プロデューサーと挑戦者たちは全員香港まで行き、ご飯を食べたり遊園地や動物園などで遊んだりしながら交流を深め、一緒にトラックを制作するところまで撮影は済んだのですが、大型台風の到来によって野外ステージでの開催を断念。結局韓国に戻り、ステージはスタジオで披露することになりました。

夜景をバックに撮れなかったことは残念でしたが、ミッションの課題曲として作られた4つのトラックは非常にクオリティーが高く、ヒップホップ・ファンの間で好評を博しただけでなく、番組の話題性が高いということも重なって全曲がチャートの上位を占めるという快挙を成し遂げました。中でもPaloalto & CODE KUNSTチームの『Good Day』は1位を獲得するという快進撃です。

本コラムでは、今回リリースされたその4曲について簡単にご紹介したいと思います。番組では4人でパフォーマンスしていますが、実際にリリースされた音源には勝ち残った3人のみが参加しています(厳しい!)。

 

The Quiett x CHANGMOチーム: 사임사임(サイムサイム)

사임사임(サイムサイム)のステージ

 

The Quiett x CHANGMOチームの音源『사임사임(サイムサイム)』は、番組の中で印象的なパフォーマンスを披露したものの脱落してしまったイ・ドンミン(Ice Puff)が抜け、CoogieSUPERBEED.Ark、そしてプロデューサーのCHANGMOがフィーチャリングするという構成でリリースされました。ビートはCHANGMOによるプロデュースなのですが、The Quiettが番組の中で「キュート・ヒップホップ」と言ったくらい、ゆるくて聴きやすいトラップ・ビートに仕上がっています。

楽曲タイトルで使われた「사임(サイム)」という言葉は、韓国の通貨で一番高額な紙幣である5万ウォン札に描かれている人物である「신사임당(申師任堂、読み:シン・サイムダン)」のことを指しています。申師任堂が女性であることから、5万ウォン札について「彼女は愛らしい」と言うなど、お金を擬人化するという面白い表現をしています。そういえばThe Quiettも昔、『11:11』という曲の中で申師任堂のことを「彼女は俺の祖先」とラップしたことがありますね。

この曲のフックでは、CHANGMOが自身の代表曲『Maestro』の歌詞にある「5歳の時から俺はピアノを弾いた」に掛け、「5歳の時から稼ぎ方を習った」と歌っています。最初のヴァースではCoogieがグルーヴィーなフロウの導入からシンギング・ラップまで多彩な魅力をアピールし、印象的な高音も披露しています。次のヴァースではSUPERBEEが特有のウィットに富んだ歌詞で笑わせ、最後は2004年生まれ(!)の中学生ラッパーD.Arkが派手なラップスキルで閉めるという流れになっています。特にSUPERBEEの歌詞は、あとで別途ご紹介したいぐらいおもしろい表現が盛りだくさんです。

 

Swings x GIRIBOYチーム: 공상과학기술(空想科学技術)

공상과학기술(空想科学技術)のステージ

 

Swings x GIRIBOYチームの音源『공상과학기술(空想科学技術)』は、番組の中で一緒にステージに上がったYunBが抜け、naflaOLNLODEEの名義でリリースされました。さらにフィーチャリングとしてプロデューサーのSwingsがヴァースに参加し、GIRIBOYがフックを担当しています。

ここで使われている「空想科学」というのは日本で言う「SF(サイエンス・フィクション)」のことです。そのタイトルからもすぐ分かるように、このトラックは最近リリースされたGIRIBOYのアルバム『공상과학음악(空想科学音楽)』を引き継いでいるものです。同アルバムでも高評価を受けたGIRIBOYならではの実験的なビートに、「ゴンサングァハッギスル(空想科学技術)」という言葉を繰り返すフックは一度聴いたら耳から離れなくなるような中毒性があります。

どんなビートでも安定したスキルの高さを披露してきたODEEが最初のヴァースを担当し、すば抜けてレベルの高いスキルやトーンで最大の優勝候補とされているnaflaは、ビートに合ったロボットを彷彿とさせるようなフロウで次のヴァースを制します。OLNLはSFというテーマを生かしたコミカルな歌詞でシンギング・ラップを駆使し、その後ビートがブームバップ風に変わる部分からSwingsが入って最後のヴァースを飾ります。VMC(Vismajor Company)に所属するODEEが、Just Musicという全く異なる音楽性を持つチームにも完璧に似合ったラップをしていることが印象的です。また、GIRIBOYの個性溢れる宇宙的なビートが大衆にも受け入れられている点も興味深いところです。

 

Nucksal x Deepflowチーム: 패(札)

패(札)のステージ

 

Nucksal x Deepflowチームのトラック『패(札)』は、VMCが本番組に参加するということが知らされた時から誰もが予想していた通り、正統派のハードコア・ブームバップで攻めています。このビートを手掛けたのは、2003年の活動開始当初からブームバップ一筋の職人として活躍してきたベテラン・プロデューサーのMild Beatsです。

チームメンバーは、ビートが醸し出すヘヴィーでダークな雰囲気にこれ以上ないくらいピッタリの4人でしたが、そのうちLosが惜しくも脱落。リリースされた音源には勝ち残ったキム・ヒョウンChaboomEKの3人が参加し、プロデューサーのDeepflowNucksalがフィーチャリングしています。ODEE同様、キム・ヒョウンもまた、自身が所属しているAmbition Musicとは全く毛色の異なるチームに完全に溶け込んで活躍していますね。

このトラックは番組が掲げている「ギャンブル」というコンセプトを活用したテーマで作られており、香港ノワール映画を連想させるビート、メンバーのビジュアル、ラップスタイルまでのすべてが完璧にそろった作品に仕上がっています。香港の夜景を背景にする予定だったステージがキャンセルされたことは残念でしたが、この音楽だけでも香港の夜景を想像させるには十分ではないかと思います。最初のヴァースでDeepflowがハードコアなラップを投下し、ロートーンが魅力のキム・ヒョウンが次いでその重い空気を増加させます。これ系のビートを得意とするChaboomは生き生きとしたラップで本領を発揮し、その合間にユーモアも忘れません。EKは「どんなビートでも自分のものにできる」と証明するかのようにスキルフルなラップで最後のヴァースを飾ります。ヒップホップのファンだけでなく、香港ノワール映画のファンにまでお勧めしたいくらい格好いい作品です。

 

Paloalto x Code Kunstチーム: Good Day

Good Dayのステージ

 

Paloalto x CODE KUNSTチームの音源『Good Day』は、今回リリースされた4曲の中で最も大衆的な人気を集めている楽曲です。アイドルなども多くいる競争の激しい韓国配信リアルタイムチャートで、初登場から数日間にわたって首位の座をキープし続けました。ビートはプロデューサーの2人が番組の中で何度も自慢してきたCODE KUNSTの400曲を超えるコレクションの中から厳選し、チームメンバー4人の満場一致で決まりました。まるでビルの上で風に当たりながら海を眺めるような気持ちのいいムードの曲で、脱落したQwalaのヴァースもとても似合っていたのですが、勝ち残ったpH-1Kid MilliLoopyの3人とPaloaltoのフィーチャリングという形でリリースされました。

最初のヴァースでpH-1が感覚的で聴き心地のいいシンギング・ラップを披露し、そこからすぐに繋がるKid Milliは対照的にタイトなラップで緩い空気を変えます。後半でPaloaltoがポジティブな歌詞で楽曲のテーマを強化したところに、Loopyがまるでビートとひとつとなったかのようなラップで『Good Day』というタイトルにふさわしい最後を飾ります。Paloaltoは同番組のシーズン4(2014年)に出演した際も、『거북선(亀甲船)』という楽曲のキャッチーなフックが大人気になったのですが、今回もその時と同様にビートにピッタリのメロディー・フックで楽曲をリードしています。普段はヒップホップをあまり聴かないような人でも、その心地良さに魅かれて一日中聴いてしまうと言われているほど好評で、大衆性と音楽性の双方を持った曲と言ってもいいでしょう。

ちょっとした小話ですが、Paloaltoは『거북선(亀甲船)』がヒットした当時、歌詞から引用して「똥통형(肥溜め兄さん)」と呼ばれたそうです。今回の曲では「ウヤヤ~」という部分が印象的なので「우야형(ウヤ兄さん)」に変わるかも、と番組の中で話していました(笑)

 


 

以上、第5話の「音源ミッション」で誕生した4曲をご紹介しました。『SHOW ME THE MONEY 777』の音源は参加者の面々、プロデューサー陣の力量などから見て元々かなり期待はされていました。そこにチームごとの組み合わせによるケミストリーや様々な工夫が加わったことで、その期待をさらに超えるような良い作品が誕生したように思います。番組が進むに連れてまだまだ多くのトラックがリリースされると思いますが、今回はその期待値をさらに上げてくれるような楽曲ばかりでした。『SHOW ME THE MONEY 777』の今後の展開、そして新しいトラックに要注目です!

今回リリースされた4曲は、日本でもiTunesやSpotifyを通して聴くことができます。本コラムに貼ったパフォーマンス動画と同じ曲ではありますが、音源ではメンバーも音質も雰囲気も違った様子が楽しめるので、ぜひ聴いてみてください。一度聴いたらリピート必至です!

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