2019年2月のピックアップアルバム

Written By Sakiko Torii

皆さん、こんにちは。BLOOMINT MUSICの編集長、鳥居咲子です。

ちょっと久々に作品紹介的なコラムを書いてみようかと思いまして。実はこのウェブサイトがまだ前身の「ヴィヴィアンの音楽ヲタブロ。」だった頃、「今日の一曲」という不定期コーナーでいろんな曲をランダムに紹介してたんです。その時パッと思いついた曲について語ってたら、ちょっと古めの洋楽ばかりになっちゃったりして。

その「今日の一曲」を最後に更新したのが2015年9月なのですが、「ヴィヴィアンの音楽ヲタブロ。」が今の「BLOOMINT MUSIC」にリニューアルしたのが2015年10月なので、ちょうどそのタイミングで更新が止まったみたいです。意図したわけじゃないのですが、今のサイトの形にしたら、なんとなく韓国ヒップホップ以外の記事が書きづらくなったのが原因かと。

そんな「今日の一曲」の進化版として、韓国ヒップホップのお勧めアルバムについて語ってみようと思い立ったのでした。これまた不定期に更新するので、気が向いた時だけ書くことになると思うんですけど、余暇の読み物として楽しんでいただければ幸いです。2月のプレイリスト記事にも書いた通り、2月はものすごいリリースラッシュだったのですが、その中から私が個人的に「これ!」って思った5枚をセレクトしてみました。

 

 

Hwaji – Femme Fatales & Getaway Planes

リリース:2019年2月14日

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アワードの常連、Hwaji(ファジ)の新作EP。2009年のデビュー以降、常に音楽評論家や音楽マニアからめちゃくちゃ高く評価されてきてるのに全然売れない。韓国大衆音楽賞でも『EAT』と『ZISSOU』がそれぞれ2014年と2016年に「最優秀ラップ&ヒップホップ・アルバム」を受賞してます。アメリカ育ちだからか身体の中にソウルフルなリズムが染み込んでて、かなりレイドバックするラップと、ソウルやジャズをベースに音楽的な完成度をとことんまで高めたサウンドなどが特徴のラッパーです。

 

本作にもHwajiらしいディープでソウルフルなサウンドがたっぷり詰まってます。4曲入りと短いEPですが、音楽的なカラーを明確に打ち出すためには、このくらい短いほうがスッキリ聴けていい。一言で言うと、とにかく音楽的な完成度が異常に高い1枚。伴奏の作り込みもすごいけど、バッキングボーカルの入れ方が尋常じゃない。ハーモニーもガヤ入れも最高。音としては完全に洋楽。「全然売れる気ないでしょ?」って本人に言いたくなるくらい売れ路線から外れてる。でもアメリカで活動するアメリカ人アーティストだったら、きっと売れてただろうな~とも思う。

 

 

 

MUNCHEESE – You Had to Be There

リリース:2019年2月25日

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VMC所属のWutan(ウータン)とHwajiによるプロジェクト・チームMUNCHEESE(マンチーズ)の1st EP。「またHwajiかよ!」って突っ込まれそうだけど、同じ人間が何のしがらみもなくセレクトするとこうなります(笑)。どうやらWutanとHwajiだけでなく、クリエイティブ・ディレクターの「통(トン)」も合わせたチームらしいのですが、アートワークはVMCのRow Diggaが担当しててちょっと謎。CDに封入されてるチーズのステッカーが超かわいい!

 

これまたサウンドのカラーが明確に出ている作品で、6曲にコンパクトにまとまってていい感じ。Hwajiの持つソウルフルさとWutanの持つサウス感が合わさって、より骨太なヒップホップに仕上がってます。プロデューサーにはViann(トラック1, 2)、Young Soul(3, 5)、O’NUT(4, 6)の3名を迎えていますが、いずれのトラックにもHwajiっぽさが反映されてる気がする。プレイリストには比較的エネルギッシュな『Space Bar』を入れたけど、韓国レゲエ界のキングであるKoontaをフィーチャーした『Kid in the Candy Store』と最後まで迷いました。

 

 

 

XXX – SECOND LANGUAGE

リリース:2019年2月15日

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ものすごい重厚感のある電子音サウンドで知られるXXX(エックス・エックス・エックス)は、ラッパーのKim Ximya(キム・シムヤ)とプロデューサーのFRNK(フランク)の2人から成るデュオ。サウンド的にはもはやヒップホップにカテゴライズしていいのか分からないんだけど、ラップスキルという点から見ると韓国ヒップホップシーンで上位に入る実力。出す曲、出す曲、とにかく実験的だし革新的。グーンとお腹に響く電子音とか、いろんな音が鳴り響きながら次々に曲構成が展開していくのが最高。

 

去年12月にリリースした『LANGUAGE』の続編とも言える本作は、実は2年前に作ったんだそうです。だからKim Ximya自身もリリースに対してあんまりテンションが上がってないようで(笑)。でもリスナーの立場から聴くと全然2年前の古さを感じないどころか、むしろ相変わらず革新的なサウンドだな~と。同じ音楽性の曲が10曲続いても全然疲れないのは、目まぐるしく展開する曲構成の賜物かな。強いエレクトロビートとアグレッシブなラップの相性が抜群で、個人的には超イチオシです。

 

 

Young B – Stranger

リリース:2019年2月16日

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このアルバムについては記事も書きました(これ)。Young B(ヤング・ビー)はIndigo Musicに一番最初に入ったけど、ほかのメンバーに比べてソロ活動が活発ではなく、Kid MilliやJvcki Waiなどから若干遅れを取っていた印象。とは言え『高等ラッパー』で優勝したほどの実力だし、Indigo Musicのコンピレーション作品では良い結果を残してきたので、ソロ作に期待が高まってました。そして期待を大きく超えるものが出た!

 

Indigo Musicは先鋭的なサウンドとか、キャッチーなイントロやフックを仕掛けてくる傾向があるけど、本作はトレンドにこだわるよりも音楽的に丁寧に作り込んだような印象です。もちろんトレンド先端な感じの曲も入ってるけど、古典的なヒップホップらしさやハードコア系なども含む彩り豊かな1枚です。これだけ多様な顔を見せるアルバムだと、13曲入っていても飽きずに聴ける。全体的にはダークな曲が多くて大人びた印象です。Young Bの控えめな発声と滑舌の良いラップも素晴らしい。

 

 

 

Uneducated Kid – HOODSTAR

リリース:2019年2月1日

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このアルバムについてはsoulitudeさんが記事を書いてくれました(これ)。記事にも書いてある通り、Uneducated Kid(アンエデュケイテッド・キッド)は、かなり濃いめのキャラで韓国のヒップホップシーンに新しい風を運んでいる新鋭ラッパーです。本作は、SUPERBEEが先月設立したレーベル「Yng & Rich Records」と契約してから初めて出した作品です。

 

全体的にはサウス感が漂う曲が多めだけど、単調なトラップではなくてアメリカの最新トレンドをバッチリ取り入れてる。合間合間に全然違ったタイプの曲が来るのもおもしろい。特にJay Parkが参加した『Make U Dance』の引きの強さは逸品。そして久々にOkasianの名が。あの独特なトーンで言う「지금(チグム、意味:今)」ってフレーズがめちゃくちゃツボです。Okasianの登場は韓国ヒップホップのトレンドの動きに大きな影響を与えたけど、Uneducated Kidもそういう存在になるかも?

 

 

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