Nucksalが、村上春樹の小説『1Q84』をモチーフにした2ndアルバム『1Q87』をリリース。作品に込められたNucksalの4年間のストーリーとは?

Written By Sakiko Torii

最近2年ぶりにシングル『AM I A SLAVE』をリリースして話題になったばかりのNucksal。

Nucksalが待ちに待った2年ぶりの新曲『AM I A SLAVE』をリリース!

 

そんなNucksalが、9月30日に2ndアルバム『1Q87』をリリースしました。

2016年2月4日リリースの1stアルバム『작은 것들의 신(小さきものたちの神)』以来、実に4年7ヶ月ぶりのアルバムとなります!

Album | Nucksal – 작은 것들의 신 (小さきものたちの神)

 

前作『小さきものたちの神』というタイトルは、インドの作家アルンダティ・ロイの処女作である同名の小説から取っています。1997年に出版された同作は、世界的に最も権威ある文学賞のひとつであるイギリスの「ブッカー賞」を受賞しました。世界36ヶ国で翻訳されており、「インドの宝石」とも呼ばれるほどインドにとって誇り高き作品となっています。Nucksalのアルバム『小さきものたちの神』は、この本の内容をモチーフに作られています。


小さきものたちの神

 

そして今回リリースされたアルバム『1Q87』は、日本人ならピンとくる人も多いかもしれませんが、村上春樹が2009年に上梓した小説『1Q84』(いちきゅうはちよん)から付けられています。小説のあらすじなどについてはWikipediaでご覧いただくとして、アルバムの「87」という数字は、Nucksalが1987年生まれであることに由来しています。

アルバムのテーマは「今、この世に存在する俺が、果たして本当の俺なのか?」というものです。1stアルバムのリリースから現在に至る4年余りの間に、人生が急激に変化したNucksal。そんな彼の過去4年間のストーリーが全12曲に収められています。

1stアルバムリリース当時のNucksalは、アンダーグラウンドではそれなりに注目されていたものの、一般的な知名度はありませんでした。それが今や『高等ラッパー』シリーズで2年連続で司会を務め、『SHOW ME THE MONEY 6』では準優勝をし、テレビ番組にYouTubeコンテンツに引っ張りだこの超人気ラッパーにまで成長しました。

アルバムの内容を解説するために、今回はいつもとは違って先にトラックリストを載せますね。以下の通り、ストーリー性を持った12曲によってNucksalのこれまでの4年間が描かれています。

01. BAD TRIP
02. AM I A SLAVE
03. WON (Feat. ウ・ウォンジェ & ODEE)
04. AKIRA (Feat. Gaeko)
05. Crack Kidz (Interlude)
06. Dance Class
07. 연희동 (延禧洞 / Yeonhui-dong) BADASS
08. 브라더 (Brother) (Feat. Don Mills & Los)
09. 나 (俺 / Love Myself)
10. 거울 (鏡 / Mirror) (Feat. Hwaji)
11. 너와 나 (君と俺 / You and Me) (Feat. Gummy)
12. 추락 (墜落 / The Fall) (Feat. DeVita)

 

成功と引き換えに自由を奪われて『AM I A SLAVE(俺は奴隷なのか)』と苦悩し、『나(俺)』はものすごくつらいのに、誰も分かってくれないという孤独の中でパニックと恐怖に襲われる。成功や幸せとは一体何なのだろうと悩みながら、現実と非現実の間を行き来する長い『BAD TRIP(悪い旅)』を経て、『연희동(延禧洞)BADASS』では故郷へ錦を飾ったNucksal。ようやく『거울(鏡)』の前に立ち、疲弊した自分を慰めようとする。そこで見たこの世はユートピアなのか、はたまたディストピアなのか。『추락(墜落)』という結末で締めくくるこの物語を通し、何を感じるか、どうすべきと思うか、それはNucksal自身への問いであり、聴く人すべてへの問いでもある。

 

とまあ、私なりにアルバム解説やインタビューなどを読んだ結果を要約してみましたが、こんな感じのストーリーが込められた作品となっています。すごく文学的で、内容をまとめながら胸がいっぱいになってしまいました。

アルバムのメインプロデューサーにはVMCのレーベルメイトであるBuggyを迎え、同じくVMCのFredi Casso、HOLYDAY、外部からはCODE KUNSTなどもプロデューサーとして参加しています。フィーチャリングにはレーベル内からODEE、Don Mills、Los、Hwajiが、レーベル外からはGaeko、ウ・ウォンジェ、DeVita、Gummyが参加しています。

ってかGummyって! 私がYGファミリーを熱烈に応援していた2011~2012年頃、GummyもYGに所属していたのでファミリーコンサートで何度も生歌を聴かせていただきました。YGファミリーコンサート、懐かしいな~!

Gummyは2013年にYGからC-JeS Entertainmentに移籍し、その後もずっとご活躍されています。ちなみに、ちょっと前まで同じ事務所にCrucial Starも所属していました。Crucial Starは今年の6月にレーベル「Starry Nightt Music」を設立し、つい今週の9月29日にはレーベルコンピレーションアルバム『Starry Nightt Vibe』をリリースしたばかりです。

ってだいぶ話がそれましたが……。

アルバム『1Q87』からは、今のところ3つの映像が公開されています。ひとつめは前回の記事に貼った先行シングルの『AM I A SLAVE』のビジュアライザー。そして新たに公開されたのが『BAD TRIP』『AKIRA』のダイジェストMV。そしてもうひとつは、『연희동 (延禧洞 / Yeonhui-dong) BADASS』のライブパフォーマンスです。ちなみに『AKIRA』は日本の漫画/アニメの『AKIRA』をモチーフにした曲です。

[MV] Nucksal –  BAD TRIP + AKIRA (Feat. Gaeko)

 

[DF LIVE] Nucksal – 연희동 (延禧洞 / Yeonhui-dong) BADASS

 

※10月8日追記:『브라더 (Brother)』のミュージックビデオも公開されました

[MV]  Nucksal – 브라더 (Brother) (Feat. Don Mills & Los)

 

※10月14日追記:『추락 (墜落 / The Fall)』のミュージックビデオも公開されました

[MV]  Nucksal – 추락 (墜落 / The Fall) (Feat. DeVita)

 

前作『小さきものたちの神』は、アルバムを出す、出すと言いながらリリースまで2年以上が掛かりました。そして今作『1Q87』も、2018年2月から出す、出すと言いながら2年以上が掛かりました(アルバムの制作を実際に開始したのは去年だそうですが)。

そういうタイプのアーティストは世界中にたくさんいますが、韓国のヒップホップ/R&Bシーンで代表的なのは、DEANとE SENSですかね。ストリーミングが主流である今の時代は、スピード感を持って次々にリリースしていくのが成功の秘訣ですが、納得がいくまでじっくりと作る作品はやはり芸術性が高くて素晴らしいことが多いので、個人的にはそういうスタイルのほうが好きだったりします。

ラップスキルも一流、リリシストとしても一流、ライブパフォーマンスも一流、キャラも立っててトークもうまくてオールマイティな才能を発揮してきたNucksal。前作から5年近くも時間が経っていたため相当な期待が掛けられていましたが、その期待を1ミリも裏切らない素晴らしい作品で真の才能を証明してくれました。

最後に「HYPEBEAST KOREA」に掲載されているNucksalのインタビューもご紹介させてください。私の盟友であるsoulitudeさんが実施したインタビューなのですが、『1Q87』というタイトルを付けた背景とか、『AKIRA』というタイトルにした話とか、연희동(延禧洞)という場所に込められた思いとか、ほかにもアルバムを作る上で影響を受けた映画や曲などの話が盛りだくさんです。

特にアルバムタイトルを付けた背景の話、연희동(延禧洞)の話、「墜落」という言葉に込めた話などがめっちゃ興味深かったです。Nucksalのファンのファンの方は必読ですよ! 自動翻訳でだいたいの内容は分かると思います!

>>> HYPEBEAST KOREA – Nucksal インタビュー「1Q87年から終わらないクエスチョン」(2020年10月1日)

 


 

Nucksal – 1Q87 のご視聴はこちらから

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