Hi-Lite Recordsがレーベル設立10周年記念アルバム『Legacy』をリリース! この機会に、過去10年の歴史をザっと振り返る!

Written By Sakiko Torii

Hi-Lite Recordsがレーベル設立10周年を迎えました。Paloaltoが2010年4月に設立してからこれまでの10年間、レーベルの規模もどんどん大きくなり、メンバーも何度も入れ替わり、そのたびにレーベルのカラーやイメージも変わり、絶賛されたり批判されたりと様々なプロセスを経て迎えた10周年。

最初は同世代の男性アーティストだけが集まって男臭い空気をプンプン漂わせていたHi-Lite Recordsですが、今や女性アーティストを3人も抱え、10代から30代後半まで幅広い世代のラッパーとシンガーとプロデューサーたちが明るいエネルギーを振りまくレーベルになりました。

その進化や成長をちょっぴりだけ近くから見守ってきた者として、この10周年を本当に感慨深く思いますし、心の底から「おめでとう!」を言いたいです。

Hi-Lite Records、10周年おめでとうございます!!!!!!

っていきなり締めの言葉みたいになっちゃいましたが、記事はまだまだ続きます。ってか、ここからが本題です。

Hi-Liteのレーベル・コンピレーションアルバムと言えば、2013年にリリースされた『HI-LIFE』は韓国ヒップホップの歴史に残る名盤とされていて、つい先日もyou.will.knovvの記事でそのことについて触れたばかりです。『HI-LIFE』から7年もの時を経てHi-Lite Recordsがどんな姿になったのか。発売前からファンの間でかなり期待が高まっていました。

そして8月16日、ついにそのアルバム『Legacy』がリリースされたのです。全14曲、全51分間という大作となった『Legacy』のトラックリストはこんな感じ。

 

現在所属しているアーティストはもちろん、かつて所属していたEvo(2014年脱退)とG2(2019年脱退)までもが参加していてファンは大歓喜! 特にEvoが参加した『Cool Kids, Part.3』は超嬉しい! 『Cool Kids』は個人的に『HI-LIFE』を超える名盤だと思ってるPaloalto & Evoの『Behind The Scene』にパート1が、そしてHuckleberry Pのアルバム『gOld』にパート2が収録されています。

そんなEvoとかG2の話も含めたレーベルの変遷は記事の後半に書くとして、まずはアルバムのラストを飾るトラック『Kid Rock』のミュージックビデオからご覧あれ。こちらは私とsoulitudeさんが日本語字幕を担当したので、ぜひ字幕をONにして観てください。

[MV] Paloalto, jerd, Reddy & Soovi – Kid Rock

 

サビの「Oh, oh, oh…」って部分はライブでめっちゃ盛り上がりそう! 全員のパートがそれぞれ自分らしさを表現できてるし、ステイホーム時代をよく表したミュージックビデオも最高。キャッチーなトラックなので一度聴いただけでも覚えられるし、ポジティブバイブスに溢れてて元気をもらいますね!

こんな感じで、『HI-LIFE』とはおよそ同じレーベルとは思えないほどの変化を見せました。『HI-LIFE』は男臭くて攻撃的で、当時としては最新のヒップホップサウンド満載のDOPEなアルバムって感じでしたから。メンツだけでなく、音楽性、醸し出される雰囲気、何もかもが今とはまったくの別モノ。それに関して賛否両論だというのも事実ですが、私はどちらのHi-Liteにもそれぞれの良さがあると思うし、どっちも好きです。

っていうか世の中で変わらないものなんてほとんどないし。特に人間なんて変化の著しい生き物。長く生きていれば見た目も変化するし、趣味とか食べ物の好き嫌いとかだって変わります。人間関係も変わるし、仕事の内容も、住む場所も、いろんなことが変わっていく。だからレーベルの所属メンバーや音楽性が変わるのもおかしなことじゃないし、何だったら韓国ヒップホップシーン自体がすごい変わりようです。前のほうが良かった部分、今のほうがいい部分、色々あるけどそういうの全部ひっくるめて楽しんでます。

そんなHi-Liteの変遷を、レーベルポッセカット(団体曲)のMVを観ながら振り返りたいと思います。Paloaltoが2010年4月に立ち上げた当時は小さなサークル規模というか、音楽仲間の少人数で細々と始めた状態でした。その頃はちょうど多くのアーティストたちが自分のレーベルを設立し始めた時代で、同時期にJust Music、Illionaire Records、BrandNew Music、Standart Music、Independent Recordなどが立ち上がりました。現在も残ってるレーベル、解体されたレーベル、その行く末は様々です。

Hi-Liteはラップコンペティションなどを開きながら少しずつメンバーを増やして大きくしていきました。当時はジャジーなビート、ポップなビートが多く、サウンド的にはむしろ今のHi-Liteに近いように思います。でもこの『What We Do』のような感じで、今よりもしっとりしたビートが多かったかな。

[MV] Soul Fish – What We Do (feat. Okasian, GLV, Paloalto, B-Free, Huckleberry P & Evo)

 

そして2013年、レーベルコンピレーションアルバム『HI-LIFE』をリリース。今でも韓国ヒップホップシーンの歴史に残る名盤と評価されているこのアルバムは、アワードも見事受賞しました。その後もPaloaltoのアルバム『Chief Life』やB-Freeのアルバム『Korean Dream』など連続でアワードを受賞し、Okasianに至ってはシーン全体の新たなトレンドを作るほどの存在に。

[MV] Evo, Huckleberry P, Okasian, Paloalto, Reddy, B-Free & Soul One – What We Do II

 

私が初めてHi-Liteの事務所を訪問したのもその頃でした。地下にある小さな部屋に、ボロボロのソファと1台のパソコン、雑多に置かれたテレビ、ゲーム機、ウォーターサーバーにカレンダー。まだ韓国ヒップホップがマニアだけのものだった当時、「彼らはこんなしなびた(←失礼)場所であんな素晴らしい作品を生み出しているのか!」と感動したものです。

そして2014年、当時の韓国ヒップホップシーンで大きな物議を醸した『My Team』が出ました。『SHOW ME THE MONEY』を批判する内容でありながら、その後PaloaltoやReddyが同番組に出るようになったため、様々な意見が飛び交いました。

[Official Audio] B-Free – My Team (feat. Reddy, Okasian, Huckleberry P, Paloalto & Keith Ape)

 

この曲を機に本格的にHi-Liteに正式に加入したKeith Apeは、この少しあとに『It G Ma』によってワールドワイドにブレイク。それによってHi-Liteの存在もより広く知られるようになります。その後は韓国の超巨大企業であるCJの傘下に入るなど、どんどん発展していくHi-Lite。

それからしばらくして、Hi-Liteは事務所を引っ越しました。会社のロゴを掲げた看板のついた建物の写真を見て「立派になったもんだ」と謎目線で感慨深くなりました。それから1年も経たないくらいでまた事務所を引っ越したので、私は2つ目の事務所は訪問できないままでした。

ちなみに3つ目が現オフィスとなるのですが、建物の地下から2階までの3フロアが丸々Hi-Liteで、もう「立派になったもんだ」なんてもんじゃない。足を踏み入れるのが恐れ多いくらいです。設備の充実したレコーディングスタジオもオフィス内にあって、所属アーティストたちにとっては最高の環境が整いました。

G2やSway Dが加入した2015~2016頃には、それまでHi-Liteの持ち味でもあったアンダーグラウンド色がすっかりなくなり、現在のHi-Liteに近い姿となりました。MVにもしっかりと投資をし、トラックはトレンドをつかみつつも自分たちらしいカラーを失わない、そんなスタイルです。『식구 (家族)』のMVでは、そんな進化した姿をしっかりと感じることができます。

[MV] G2 – 식구 (Feat. B-Free, Okasian, Reddy, Huckleberry P, Paloalto, Sway D & DJ Djanga)

 

その一方で、レーベル設立メンバーだった最重要スタッフのミングさんが去り、設立当初から所属していたB-Free、Soul One、GLVなどが去り、黄金期のHi-Liteを支えたEvoとSoul Fishも去りました。そしてHi-Liteを一気にトレンドのトップに引き上げたOkasianとKeith Apeも去り、それに伴って彼らが所属するクルー「The Cohort」との距離も開きました。

C JAMMとSimba ZawadiによってHi-Liteに関する間違った噂が広まり、大炎上するという経験もしました。今では誤解も解けて解決済みではありますが、当時は見ていられないほどの叩かれようで悲しかったです。音楽性の面でも『HI-LIFE』時代を懐かしむファンから叩かれるし、間違った噂のせいで多方面から叩かれるし、踏んだり蹴ったりだったと思います。

それでも自分たちのことを信じ続けて活動を続けたHi-Liteは、YunB、Yosiといったプロデュース能力の高い若い才能を迎え入れ、音楽性の幅も広げていきます。『HI-LIFE』の時代は所属アーティストみんなが似たような音楽スタイルになっていましたが、各自の個性がしっかりと分かれ、成熟した大人のレーベルに発展していきました。

[MV] Reddy, Sway D, Paloalto, YunB, G2, Huckleberry P & Camo Starr – Break Bread

 

全員が20代だったHi-Liteのメンバーたちも、気が付けば30代ばかり。そんな中、2018年以降はチョ・ウォヌ、Swervyといった10代のアーティストが立て続けに加入し、世代の幅も広がりました。

この頃になると韓国でヒップホップはもうマニアだけのものではなくなり、すっかり一般大衆にも根付いたジャンルのひとつになりました。そうなると若いアーティストがどんどん出てくるし、ファン層もどんどん若くなるし、時代に置いていかれないように若手を入れていくというのは当然の流れですね。

[MV] Reddy, Sway D, Paloalto, G2, YunB, Huckleberry P & チョ・ウォヌ

 

Paloalto, Swervy, チョ・ウォヌ & Huckleberry P – 한라산 (Hi-Lite Sign)

 

さらに今年に入ってからはOwell Mood、Soovi、jerdと3人のニューフェースが加わり、女性アーティストは全部で3人に。『HI-LIFE』時代のDOPE感はすっかりと影を潜め、明るくて多様な姿を見せてくれるレーベルへと成長しました。さらにアメリカにサブレーベル『Airplane Mode』も設立し、CJから独立し、G2が去り、って感じでちょっと目を離すと状況がどんどん変わっていきます。

B-Freeも最初は円満退社だったのに、あとからぐちゃぐちゃ揉めたりして(B-Freeが悪いんだけど)相変わらずPaloaltoは踏んだり蹴ったりって感じなんだけど、音楽活動はシーン全体の中でも最も安定しているうちのひとりだし、レーベル10周年を迎えたっていうのは本当に誇らしいことだと思います。

ここまで書いてから一番上の『Kid Rock』に改めて戻ったら、本当にいろんな変化を通して現在の姿になったんだなと様々な感情が浮かんできました。そして記事のあまりの長さに驚愕。皆さんにスクロールさせるのも申し訳ないので、もう一度『Kid Rock』のMVを貼っておきます。

[MV] Paloalto, jerd, Reddy & Soovi – Kid Rock

 

私個人の話で恐縮ですが、これまでにHi-Liteの来日ライブを4回、Paloalto & Evoのライブを1回、Korean Third Waveを1回、それからReddyとSKY-HIのコラボを2回、Paloaltoと菊地凛子さんのコラボ、PaloaltoとTeddyLoidのコラボ、テレビ番組『ブレイク』の出演など、たくさんの仕事をHi-Liteと共にしてきました。

昔からのHi-Liteのファンの皆さんとは、そのすべての時間を一緒に共有してきたので、本当にありがたく思っています。途中からファンになった方も、途中でファンじゃなくなった方も(笑)、一度でも一緒にライブやラジオや記事などを通して楽しさを共有したことのある方には、一緒にこのカルチャーを盛り上げてきたということで勝手に仲間意識を持っています。いつも本当にありがとうございます。

ここまでダラダラとHi-Liteの歴史について書き出していきましたが、当サイトにはそれらの歴史がたっぷり詰まってます。懐かしくて振り返りたい人、昔のことがよく分らないから読んでみたい人などは、以下からどうぞ。ものすごい量なので種類別に記事を分けようかと思ったけど、流れが分かったほうが良さそうなので時系列に並べました。

 

アルバム『Legacy』のトラックリストは上にも画像で貼りましたが、改めて文字でこちらに記載します。

01. Simple Things – Paloalto, jerd, Huckleberry P & Owell Mood
02. Trynna Be – Soovi, Swervy, Paloalto & Owell Mood
03. u dunno – Sway D, Paloalto, Huckleberry P, jerd & チョ・ウォヌ
04. YEZZIR – Paloalto, Huckleberry P, Reddy & G2
05. Bad Bad Bad – jerd, Huckleberry P & Reddy
06. Ooh La La – Paloalto, Swervy, Huckleberry P & Sway D
07. Organization – Sway D, Swervy, Owell Mood & YunB
08. D.R.E.A.M – Soovi, YunB & Swervy
09. Ain’t Got Time – Soovi, Owell Mood & Reddy
10. Cool Kids, Part 3 – Evo, Paloalto & Huckleberry P
11. 송석현 vs. 송석현 (Sway D vs. Sway D) – Paloalto & Sway D
12. U DUNNO – Reddy, Soovi, Paloalto, Owell Mood & Swervy
13. Step – チョ・ウォヌ, Soovi, Huckleberry P, jerd & Swervy
14. Kid Rock – Paloalto, jerd, Reddy & Soovi
 


 

Hi-Lite Records – Legacy のご視聴はこちらから

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