憂鬱なラップで知られる『高等ラッパー2』出身のVINXENが、1stアルバム『유사인간 (BOY TO MAN)』をリリース
2018年春に放送された『高等ラッパー』のシーズン2に出演したVINXEN(ビンチェン)。番組を通して憂鬱な様子を見せ続け、時にはその憂鬱なリリックとラップスタイルで聴き手の心をえぐりながらも成長する姿を見せ、最終的に3位という好成績を収めました。1位がHAON、2位がRohann、4位がASH ISLANDといった強力な面子の中で、かなりの健闘と言えます。
そんなVINXENが、7月9日に1stアルバム『유사인간 (BOY TO MAN)』をリリース。プロデューサーのBOYCOLDとコラボEP 『BOYCOLD 2』をリリースして以来、約1年7ヶ月ぶりの作品となります。全14曲が収録された本作は、バラバラなテーマの曲の集まりではなく、全14曲がひとつのテーマに基づいて起承転結を完成させているそうです。フィーチャリングにはSik-K、HAON、Im Soo、OVANを迎え、プロデュースにはLeellamarzとコラボアルバム『BAMBOOCLUB[A]』をリリースしたばかりのPanda Gommのほか、Girlnexxtdoor (GXXD)などが参加しています。
アルバムタイトルの「유사인간」を日本語に訳すと「類似人間」となるのですが、これはVINXENが「人間ではなく、人間の感情を完全に感じない種」と定義した言葉のようです。人間に類似はしてるけど人間ではない、ロボットのような存在。そんな自分が今の時代を生き、感じたことを解きほぐす。そんなテーマで作ったアルバムだそうです。
VINXENは本作を「20歳のイ・ビョンジェ(VINXENの本名)を集めたアルバム」と説明しています。また、4月で20歳(韓国は数え年なので21歳)になったVINXENが、少年から大人の男性になったということからか、英題は「BOY TO MAN」となっています。MANには大人の男性という意味のほか人間という意味もあるので、人間になったという解釈もできるでしょう。
そしてVINXENはなんと、「類似人間」のイメージを実装するために2ヶ月かけて15kgも減量したそうなんです! 2ヶ月で15kgって健康面で心配なんだけど……若いから大丈夫か(笑)。これまでは上半身どころか顔もあまり見せてこなかったVINXENが、その肉体美を惜しみなく披露しています。
見事な腹筋と共に公開されたアルバム『유사인간 (BOY TO MAN)』は、ヒップホップというジャンルに収まるというよりも「VINXEN」というひとつの新しいジャンルに挑戦したということです。
リリースに際して、VINXENがとっても長い文章を公開しています。アルバムを聴く前と聴いた後に読んでほしいとのことなので、皆様もぜひ聴く前に一度読んでみてください。最初は文章の一部だけを抜粋してご紹介しようかと思ったのですが、VINXENの思いをそのままお伝えするため全文を訳しました。
こんにちは、VINXENです。
アルバムを聴く前と聴いた後にこの文章を読んだら、アルバムをより楽しんでいただけると思います!
20歳のイ・ビョンジェを集めたアルバムです。
iという曲を除いて、残りの13曲はすべて去年作りました。
類似人間になりたかった。
人間が感じるすべての感情が嫌だった。
人間も嫌だった。
ネガティブな感情はもちろん、愛、幸せ、余裕、そんな感情すら憎かったです。ただロボットになりたかった!
つらかった。憂鬱だった。死にたかった。酒に溺れて暮らしてました。そんな20歳を過ごした子のアルバムだと説明するのがふさわしそうです。
21歳になったイ・ビョンジェが聴くと、しんどいアルバムのようです。
屏風(※VINXENが一番最初に出したミックステープ)から始まって、類似人間を最後に、つらくなるのはもうやめて、ただ人が生きるように生きてみようと思います。
楽しんで聴いてください!
(追伸。いいビートをプレゼントしてくれたBangjaさん、ヒョジェ様、ヘソンさん、Vangdaleさん、Advancedさん、ありがとうございました。愛してます。
ビートはもちろん、ほとんどすべての曲で時間を割いてレコーディングしてくれたPanda Gommさん、本物に格別に愛してます。つらかった時期にたくさん慰めてくれて、そばにいてくれてありがとうございました。
ビートはもちろん、ほとんどすべての曲のミキシングをしてくれたヘチャンさん、ありがとうございました。愛してます。マスタリングをしてくれたクォン・ナム様、ミキシングとマスタリングをしてくれたチョンソンさん、ありがとうございました。愛してます。
声で力を貸してくれたSik-Kさん、いつも信じてくれて、助けてくれて本当に感謝してます。愛してます。
声で力を貸してくれたOVANさんにはいつも感謝してます。愛してます。
声で力を貸してくれたIm Soo、本当にありがとう。愛してる。
声で力を貸してくれたHAON、本当にありがとう。格別に愛してる。たくさん学んでるよ、いつも。
衣装とスタイリングをしてくれたウン、忙しくて大変な時でもいつも気にかけてくれて、助けてくれて、笑いを与えてくれて本当にありがとう。
前のコンサートから今のアルバムまで綺麗に写真に収めてくれたソンフィ室長もありがとうございます。愛してます。撮影中は楽しかったです。
以前の曲からいつもMVをかっこよく作ってくれるハ監督、そしてサンビン監督、いつも感謝してます。愛してます。
いつもスケジュールを取りまとめてくれるフィゴンさん、ありがとうございます。愛してます。
兵役中のセジョンさん、休暇の時も僕の声を聴いてくれて苦労させて本当に申し訳ないです。ありがとうございます。愛してます。
以前からアートワークを担当してくれて、僕のお気に入りのキャラクターの友だちまで作ってくださった会長、ありがとうございます。愛してます。
最後に、何もない時から僕のためにいつも頑張ってくださっている社長。毎度ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。本当にありがとうございます。愛してます。
本当に最後に、待ってくださって、いつも応援してくださるファンの皆さん、本当にありがとうございます。愛してます。皆さんがいなかったら、今の僕もいません。より良い音楽で応えていきます。
本当に本当に本当に最後に、お母さん、お父さん。愛してるよ。)
『高等ラッパー』の放送ではご両親との確執も放送されていましたが、最後に書かれた愛してるという言葉を見てジーンとしてしまいました。VINXENには類似人間ではなく、人間らしい人間として、豊かな感情と健やかな心をもって末永く活動してほしいと思います(←誰)。
ということで、VINXENがリリースした1stアルバム『유사인간 (BOY TO MAN)』、皆さんもぜひ聴いてみてください。アルバムからは『i』と『BLIND』の2曲のミュージックビデオが公開されています。特にEDMプロデューサのAdvancedが手掛けた『i』は、これまでのVINXENのイメージをくつがえすので要チェックです!
[MV] VINXEN – i
[MV] VINXEN – BLIND
アルバム『유사인간 (BOY TO MAN)』のトラックリストは以下の通りです。VINXEN自身が全曲にコメントを寄せているので、こちらも翻訳しておきます。
01. 불시착 (不時着 / Crash)
この世に存在する前から「地球に生まれたい」と思って、多くの惑星の中から地球を選んで母親のお腹から出てきた人は誰もいないと思います。地球は僕とは合わない場所だと思って作った曲です。
02. BLIND
19歳という年齢で突然たくさんの物事を得て混乱しました。20歳になってもその混乱は消えませんでした。何も見えなかったです。真っ黒同然でした。過去の僕も見えなくて、何になりたかったのかも見えなくて。
03. 바다 (海 / Why does Ocean)
深いスランプに陥って何もできなかった時、独りぼっちの青い部屋でひどく酔っぱらって書いた歌詞です。ファンの方がくれた海のライトをつけたまま、天井をとめどなく眺めていました。今でも祖母は時々、僕が子供の頃に「おばあちゃん、どうして海は終わりが見えないの?」という質問をしたことが不思議だし可愛かったと言ってくれます。「どうして」という質問は、どうして幼い頃にだけ美しいのか分かりません。
04. STUPID NIGHT (Feat. Sik-K)
アルコールにひと月あたり1000万ウォン(約100万円)使って、バカみたいに暮らしてた時に作った曲です。楽しくてバカバカしい日々でした。
05. IMOK
別れと恋しさを言い訳に酒に溺れて暮らしていた20歳のイ・ビョンジェによる、ありふれた別れの曲です。
06. 바람 (風 / Wind)
雲に乗って、波に乗って、風の吹くままに遥か遠くまで行きたかった。人間のいない場所、生命のない場所に。
07. 꽃봉오리 (つぼみ / Blossom)
花が咲く前に、文字にたくさん踏みにじられました。前の花になることもできたけど、いつだって花が咲く直前に、何度も死んでしまいました。
08. SINK (Feat. Im Soo)
「今」に存在できずに過去を思い浮かべ、郷愁に浸って沈みながら作った曲です。たまに子供の頃に戻りたくなる瞬間があるのですが、そういう時は本当に妙な気分になります。
09. i
言いたいことを言うのが恥ずかしくて、ずっともったいぶってる僕の話を描いた曲です。話したい対象が誰なのか、どんな言葉をそう伝えたかったのか、なぜリード曲なのか、曲の最後の部分にすべて盛り込んでみました。判断がつかないのであれば、解釈は自由です!
10. 노을 (夕焼け / Sunset) (Feat. OVAN)
幸せ、良い瞬間、良い人、きれいな記憶。夢のようなあらゆることは、24時間の中で夕焼けの瞬間のように刹那的です。もしそういったものが24時間存在したなら、それに対する感謝も感じないだろうけど、この曲の歌詞を書いている瞬間はその刹那の時間に立ち止まっていたかった。僕も星の王子さまのように、夕焼けを1日に44回見られる惑星に行ってみたいです。
11.텅 (空っぽ / Empty) (Feat. HAON)
空っぽ
12. 광대 (役者 / Clown)
今回のアルバムで、理由もなく一番愛着がある曲です。自分自身を見つけられず、どこに行っても演技していました。特に被害妄想が激しかった頃、ステージの上で僕は誰かが操作する操り人形とか道化師のようでした。もし20歳の僕と同じような方がいたら、他人に合わせようと仮面をかぶらず、マスクを脱いだあなたのことも愛してくれる人たちと愛を分かち合ってみてはいかがでしょうか。
13. 바래 (願い / Will)
理由もなくいつも不安でした。僕自身が作った不安ではあるけど、ただ死にたかったです。過去が嫌で、未来が怖くて、死を願ってました。そうでありながら、お母さんの幸せを願っていました。親不孝者でした。お母さん、ごめんね。
14. 회고록 (回顧録 / Memoirs)
アルバムの最後を飾る曲です。屏風をずっと聴いてくれてるファンの皆さんは、本当に楽しんで聴くことができると思います。結局は行き場を失って、もとの位置にじっと立って終わりますね。
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