Simon DominicがAOMGの代表を辞任。新曲『Me No Jay Park』で心境の告白も
最近アルバム『DARKROOM: roommates only』でカムバックしたばかりのSimon Dominicが、7月25日に新たなシングル『Me No Jay Park』をリリースし、AOMGの代表を辞任することを明かしました。
リリースの前日、曲名と共に意味深な画像(下図)を公開していたSimon Dominic。これは『Me No Jay Park』の歌詞が書かれた書類の画像なのですが、インクがぼやけているため何が書いてあるかよく読めないようになっています。ここには一体どんな内容が書いてあるのか、「俺はJay Parkじゃない」という曲名からも多くの人々の関心を集めました。
AOMGやSimon Dominicのファンであれば、曲名だけでどんな内容なのかだいたい想像がつきますよね。Jay Parkと共にAOMGの共同CEOとしてこれまでやってきた中、シングルにアルバムにミュージックビデオにと次々に新作を発表するJay Park。様々なラッパーやシンガーのトラックに絶え間なくフィーチャリングし続けるJay Park。Roc Nationと契約をし、全米デビューを果たしたJay Park。
それに対してSimon Dominicはなかなか新作を出さず、多くのリスナーから叩かれてきました。「仕事しろ、仕事しろ」と叩かれ続け、「インスタやる時間があるなら曲を出せ」と言われてインスタの投稿を全て削除し、さらに長年『Show Me The Money』をディスってきた立場でありながら結局プロデューサーとして出ることになった時もボロクソに叩かれました。
だから「俺はJay Parkじゃない」という曲名からして「俺は俺、Jay ParkはJay Park」といった内容なのだろうと想像していたのですが、実際に曲がリリースされてみるとそんな程度のものではなく、つまるところ「CEOの辞意表明」でした。リリースと同時に公開された画像はこちらです。一番上には「辞任書」と書いてあり、Simon Dominic自身の署名も記載されています。
歌詞の中にはJay Parkが自身のアルバムタイトル通り「Worldwide」に活躍していること、Jay ParkはH1GHR MUSICまで設立して新人育成でも成功してること、それにひきかえ過去のヒットに頼ってばかりの自分が情けないこと、Jay Parkのスピード感について行くのが大変だったこと、CEOとしてのメンツのため仕方なく『Show Me The Money』に出たこと、大衆から「仕事しろ、仕事しろ」と言われ続けたこと、そして辞任することを決意したことなどが書かれています。
とはいえ誰かと不仲になったというようなことは全くなく、今後も所属アーティストとしてAOMGに残るということです。だからネガティヴな話ではなくて、これからの新しいSimon Dominicと新しいAOMGのスタートだと前向きに考えるのが正しいようです。新生AOMGに対して「おめでとう」の言葉と共に、これからの更なる活躍にも期待したいと思います。
こちらは『Me No Jay Park』のミュージックビデオです。音源はiTunesやSpotifyなどを通して発売されています。
Simon Dominic – Me No Jay Park のご視聴・ダウンロードはこちらから
ここから下はダラダラと長ったらしく個人的な話が続きますので、マニア以外の方はそっと画面を閉じることを推奨します。「マニアって、一体何の?」って思われそうですが、具体的に言うなら「鳥居咲子によるセンスちゃんネタ」のマニアです(笑) これまでそのネタを何度か書いてきた肌感としては、全国に15人くらいいるように思います。
と言っても今回はセンスちゃんの話は置いといて、サムディの話を中心に書きましょうか。あ、私はSimon Dominicのことはサムディと呼んでいます。彼がAOMGに入るより前からのファンにとっては、それが最も馴染み深い呼び方だと思います。AOMGに入る前、つまり「Supreme Team」時代、彼はSimon Dまたはサムディ(쌈디)という名義を主に使っていました。
かつてのサムディは、Dynamic Duoが運営する所属事務所「Amoeba Culture」の看板アーティストでした。E SENS(ここで言うセンスちゃん)と結成したSupreme Teamは、大衆的かつ骨太なヒップホップで人気を博し、バラエティ番組でも大活躍でした。今でこそ「AOMGの人」というイメージが強いサムディですが、私の中では相変わらず「Supreme Teamの人」であり、「バラエティ番組に引っ張りだこの人」であり、「I.Kの人」のままです。I.Kについては以前まとめたことがあるので、こちらをご参照ください。
しかしE SENSが大麻で捕まったのを機に、サムディのバラエティ出演は止まりました。そしてまた2人で音楽活動を再開するわけですが、その辺の詳しい話は昔のインタビュー(こちら)を読んでいただくとして。とにかく個人的には、2013年3月に韓国まで観に行ったSupreme Teamの復活ステージがとっても大切な思い出となっています。その時のレポはこちらでお読みいただけます(4本立てと長いので要注意)。
そして同年7月、E SENSはAmoeba Cultureから契約解除されてしまいました。それと同時にSupreme Teamも解散。その時の記事はこちらにてご確認ください。その後はこちらの記事にある通り、E SENSはI.Kまで脱退してしまって、この2人はもう二度と同じステージを踏まないのかなって切なく思ったものです。でもいつだったか、何かのイベントで一緒になった2人が即興的に彼らの代表曲『Dang Dang Dang』をやったことがありました。いつの何のイベントだったか忘れちゃったけど。
とにかくE SENSが事務所を出た時、Amoeba Cultureは最初からSupreme Teamなんて無かったみたいな扱いをしたし、その翌月には「Control大乱」が勃発しちゃたし(下記の記事4つ)、その数日後に開催されたNasの来韓コンサートで雨の中サムディとE SENSが抱き合ってる写真(下図)が出回って泣けたし、今思うと2013年は本当に韓国ヒップホップ的に濃い一年だった。何と言っても私が韓国ヒップホップに関する活動を始めたのもこの年だし。
- E SENSが『You Can’t Control Me』でGaekoをディス
- Gaekoが『I Can Control You』でE SENSに反撃
- E SENSが『true story』でさらにGaekoを攻撃
- Simon Dominicが『Control』でついに応戦
*Photo credit: hunybk
なんで突然こんな昔話を語り始めたのかというと、今回の『Me No Jay Park』に「I.K」と「JTONG」が出てきたからなのです。これはもうSupreme Teamのファンだったら心が掻き乱されちゃいますよね。AOMGの代表を辞任したことよりも、何倍もインパクトが大きい。それで「ああ、ちょっとこの機会にあの頃の話を整理しておこうかな」って思ったのでした。
「思い出のI.Kも無感覚になった」「最後までShout outしてくれたJTONG」という歌詞。サムディに関して私の時計はあの時で止まっちゃってるけど、サムディも同じだったのかなって思ったり。いや、もちろん形としては彼は間違いなく大きく前進しているんだけど、やはりこのような歌詞を書く彼を見た時、最近のオシャレなビートと歌詞で溢れているシーンの中で、いい意味でも悪い意味でも止まってるなーと思いました。センスちゃんはグングン進んでるけど。
Supreme Teamのファンは、2013年に心が置いてけぼりになってる人も多いと思う。私の場合はこういう仕事をしているから、時間の流れについていけない自分の心の部分を無視して最新の韓国ヒップホップ情報を追い続けている。正直なところあの頃の韓国ヒップホップが懐かしい。でも時間はどんどん進んでいくから、必死についていくしかない。だけどやみくもについて行こうとすると、元々自分が何を求めていたのか分からなくなってくるのも事実。
……あれ? これってなんかすごい既視感。と思って記憶の引き出しを探ってみたところ、「そうだ、E SENSの『毒』だ!」と気づきました。
急いでついて行こうとすると
どんなものが俺なのか 忘れていく 徐々に
止まらなければならないのなら 今止まれ
俺たちは 重要なものを
あまりにもたくさん逃してしまう
急いでついて行こうとすると
どんなものが俺なのか 忘れていく 徐々に− E SENS『독(毒)』より
これはE SENSが大麻で捕まったあと最初に復帰作として出したトラック『독(毒)』のラストの部分です。歌詞全体については、史上最も気持ち悪い記事となった「E SENS 『독 (毒)』 歌詞和訳&分析」の中に詳しい解説が書いてあります。約6年前の曲になりますが、6年越しにセンスちゃんに教えられた気分。しかもサムディの歌詞を読んだことで感じたメランコリーに対してだなんて。ぐるっと回ってここに帰ってきちゃうなんて。さすが私のセンスちゃん!(← 久々)
サムディも同じような気持ちで取り組んできたのかな。だったら今回の『Me No Jay Park』はサムディ版の『독(毒)』だな。自分の心境を告白した上で、新たなステージを迎えるってことだから。とか何とか言いつつ、これはあくまで私の一方的な推察なので、全くもって的外れってこともあります。あしからず。
まあそういうわけで、サムディの歌詞にあった「I.K」「JTONG」に反応して色んな思いが頭の中を巡って、「センスちゃんのことは置いといて」って言いながらやっぱりセンスちゃんの話になるというオチまでかまして一体何だったのか!? というしょうもない感じのコラムでした。約15名のマニアの方には久々にお喜びいただけたのではないでしょうか。
では、サムディとAOMGの新しい門出に改めて乾杯!!!!!