TKによるSupreme Team『이릿(Eat it)』の作業記
VismajorのプロデューサーであるTKの個人ブログ『Dream Box』を愛読しているのですが、そこに載っていたSupreme Teamの曲『이릿(Eat it)』に関する記事が興味深かったので翻訳してみました。音楽用語がいくつか出てくるので、オレンジ色で注書きを入れてあります。
TKは『이릿(Eat it)』をSimon Donimicと共同で作曲し、プロデュースした人です。まだ23歳という若さですが、韓国には若くて才能溢れるミュージシャンがたくさんいて、いつも驚かされます。
Supreme Team「이릿(Eat it)」作業記
こんにちはTKです。
今回は、最近発売されたSupreme Teamの復帰シングルアルバムに収録された『이릿(Eat it)』の作業記を書こうと思います。
この曲はかなり急に、そして即興的に作った曲でした。
これまでの作業記にも書いてきたように、Simon Dominic(以下ギソク)兄さんとの作業をずっと進めていたのですが、そうするうちに1月に入ってSupreme Teamの復帰に集中することになりました。それでE SENS(以下センス)兄さんとギソク兄さんと3人でよく顔を合わせて、たくさん対話しましたよ。
ほかのインタビューを読めば分かると思いますが、ギソク兄さんはプロデューサーをかなり圧迫するスタイルです。僕は冗談を込めてご主人様と呼びますが、その理由は、作業期間中は友人に会いに行くにも許可を取らなければならないほどだったからです。
不思議なことに、僕がしばらく外に出ていると、どうやって知ったのかギソク兄さんがカカオトークを送ってきたりしました。だからほとんど流刑されたゾンビのように、家にこもって曲だけを作り出す日々でしたね。かなり多様でたくさんの曲を作りました。
そんな中で復帰シングルの発売時期が決まって、ギソク兄さんが「今週までに受け取った曲しか受け取らないから、最後に一曲だけ作業してみよう」と言ったのですが、いいアイディアが浮かばなくて作業をしないでいたら、ついに僕の仕事部屋まで攻め込んで来ました……。
上の写真は僕の仕事部屋ですが、僕はそこのコンピュータの前に座って、ギソク兄さんはその後ろにあるソファに座って僕を監視? 指導? とにかく無限の圧迫感を与えてきました。「早く仕事しろ!」と言われ……。メンブン(韓国の若者言葉でメンタルが崩壊すること)になりましたが、屈せずに作業を始めました。
そろそろ音楽的な話をしましょう。
まず、この曲はトラップなフィーリングのある曲です。トラップというジャンルは二つに分類されます。一つはサザン・ヒップホップ(アメリカ南部で発生したジャンル。強いビートに重厚なサウンド、シンセサイザーの多用などが特徴)から派生したトラップで、代表的なプロデューサーとしては、Lex Luger Jahlil Beats等。
もう一つはエレクトロニック音楽のジャンルとしてのトラップがありますが、両方とも共通して808スネア(ローランドのシンセサイザーTR-808を使ったスネアドラムの音)を多く使い、サブキック(バスドラム用のマイク。振動を利用して音を収録するため迫力ある重低音が再現できる)などを使用している割れたリズムと遅いテンポの音楽です。
この二つの違いは、ヒップホップのトラップは既存のサザン・ヒップホップのようにブラス(管楽器)、ストリングス(弦楽器)、チューブラー・ベル(筒状になったベルが並んだ楽器)など壮大な感じの音色がよく使われているのに対し、エレクトロニック音楽のトラップは破裂するようなリード(シンセサイザーの音色)やピョンピョンする音のエフェクトの音色のボイスサンプルが主ですね。
サザン・ヒップホップ・トラップとエレクトロニック・トラップを何曲か例示してみようと思います。違いを見てみましょう。
Rick Ross – So Sophisticated (Fea. Meek Mill)
The Quiett – 2 Chainz & Rollies (Feat. Dok2)
では、今度はエレクトロニック・トラップジャンルを聴いてみようかと思います。最近有名なハーレム・シェイク(昨年バウワーがリリースした楽曲。この曲に合わせてダンスを踊った動画を撮影してネットに投稿することが世界中で爆発的に流行しています)もこちらに属します。
G-Dragonの『Crayon』や最近発売された『미치GO』もこちらの系列に属すると見ています(『Crayon』が出たときは衝撃的でした。韓国で一番早くこのような音楽を取り入れたから……)
Baauer – Harlem Shake
G-DRAGON – 미치GO
どちらのスタイルも、似ているスタイルのリズムに乗っているサウンドが違っていて、確かに別のジャンルでしょう?
『이릿(Eat it)』を作業しながら、エレクトロニック系のトラップを多く追っていこうと努力しましたね。この当時、僕はTNGHTというチームが好きで、彼らの曲をたくさん聞いて研究しました。それを元に『이릿(Eat it)』ができました。
実際『이릿(Eat it)』のデモ・バージョンでは『ハーレム・シェイク』や『미치GO』のように電子音でメインテーマを構えたけど、どうしてもああいったスタイルの勉強をする時間が不足していて、表現する上で限界がありました。だから僕には元々あったサザン・ヒップホップのスタイルが混在されるんです。
最初のバージョンを作成するとき、ギソク兄さんとたくさんアイデアを交換しながら作業しました。僕がザックリと一通り作って、ギソク兄さんが「ああ、これは良い」とか「これより違う感じがいいな」、「こうではなくてああやってみたらどうかな」、こんな会話を続けながら作業を進めました。
そのアイデアの一つが「声をサンプリングして楽器のように入れよう」というものでした。「チェーコリシャイシャイシャマムマムメヤ」(サビのE SENSパートの合間に入ってる高音部分ですね。曲の0:10あたりとか)や「フィットゥル~マットゥル~」(曲の1:30あたりですね)のようなものをギソク兄さんがその場で録音しました。それをこすって炒めて最大限サンプリングした感じが出るように作りました。
そのように楽しく仕事をしていたら日が昇っていました。朝9時になってギソク兄さんが帰宅して、僕もセッションを一時保存して、作業を終えることになりました。
ここで終わりではありませんでした。そこから修正の修正の修正の修正を……続けて修正作業をして、現在の『이릿(Eat it)』が誕生することになりました。デモバージョンだけでもほかのスタイルで10個は超えました。
そのようにして、この曲が誕生しました。そのようにできた曲をレコーディングし、その後フック部分をピッチダウン(音の高さを下げること)して編集をしましたね。「イルボクトジョ」の部分(Simon Dominicの声を加工(=ピッチダウン)して歌ってるフック部分。曲の0:15あたり)です。
そのときセンス兄さんとギソク兄さんと僕の3人で僕の作業室に座って、これをどのように料理するかアイデアを与えてもらいました。かなり笑ったのが、2人は編集をする上での専門用語をあまり知らないので、ジェスチャーや言葉、ボディランゲージで表現するのがとても面白かったです(笑)
その作業が終わって、その日3人で外に出てすぐにビールを飲みましたね! あの時のビールの味は忘れられないです。
これで『이릿(Eat it)』の作業記は終わりです。僕がSupreme Teamと作業する曲はこれ一曲だけではないので、今後も引き続きご期待ください!
Source: Dream Box