TABLOのアルバム『열꽃(熱花)』が好きすぎる件

Written By Sakiko Torii
TABLO 1stアルバム『열꽃(熱花)』
発売日:2011年11月1日

 

韓国の音楽に昔から詳しい人たちからしてみたら「今さら?」って話なんだと思いますが、韓国音楽シーンになくてはならない、本当にすごい才能の持ち主だと思いました。前から韓国のバラエティ番組などで「TABLO」という名前はよく目にしてたけど、これまで音楽をちゃんと聴いたことはなかったです。今回YGエンターテインメントと契約したことをきっかけに、ちゃんと聴く機会を得ることができました。

YGの社長であるヤンサが「最近はもうずっと毎日このアルバムしか聴いてない」って言ってたのもうなずける。私もまんまと同じ状況に陥っていますから。ブラックミュージックでありながら、白人サウンドの要素も強くて、カナダ育ちの韓国人というアイデンティティを持つTABLOだからこそ出せたオリジナリティでもあるかと思います。

最近はBIGBANGや2NE1などのYGサウンドを聴くことが多いのですが、楽器構成とか音響バランスの点でもう一工夫欲しいなって思うことが多々あります。そんな中、このアルバムはそういう物足りなさも埋めてくれました。クレジットを確認したところ、ほぼ全曲の作詞・作曲・編曲をTABLO自身が手掛けているのですね。衝撃です。

そもそもこのアルバムを買うことにしたきっかけは「TABLOが大好きなYGに入ったから」という単純なものでしたが、実は先週韓国に行ったとき、明洞でこのアルバムの収録曲のひとつである『나쁘다(BAD)』が流れていたんです。その時は「誰これ?超カッコいい!欲しい!」って思ってたんだけど、結局誰の曲だったのか分からずじまい。だけど帰国してこのCDを聴いてみたら、イキナリその曲が入ってたものですから、そりゃもう大興奮でしたよ!

それでヤンサと同様に毎日こればっか聴いてるって状況に陥ったこの機会に、収録曲全曲について語りたいと思いまして。この記事を読んでアルバムが買いたいって思った方は、iTunesのダウンロードもいいけど、ジャケットと同じ画集の歌詞カードがステキなのでCDがおすすめです。歌詞カードの紙質も上質だし、付属のYGファミリーカードを登録したら壁紙とかBadのMVメイキング動画も観れますよ。では、1曲目から暑苦しく語ってみたいと思います。

 

01. 집(家) Feat. イ・ソラ

近代クラシック色が強いです。イ・ソラさんの歌声もそうだし、ピアノの旋律がまた特にそう感じさせます。何より電子ピアノじゃないところがいい!最近どの曲も電子ピアノばっかりで物足りないと思っていた私には、響きまくりです!そしてピアノ弾きの人には、真似して弾きたくなっちゃうような曲です。

イントロで切ないピアノの旋律が鳴り、そこにTABLOの感情のこもった語り口のラップが続きます。そしてイ・ソラさんの優しくて丸みのある歌声にシフトします。ここでまた、なんとも美しいピアノソロ! 大きなため息が出ます。

後半からはボイス加工するわ強めのドラムビートが入るわで、一瞬「ロックっぽくなるのか?」と思わせつつ、壮大な現代音楽的サウンドに移り変わる。楽曲の構成がめっちゃ考え込まれています。

 

02. 나쁘다(Bad) Feat. Jinsil

上記に書いたように、ソウルの明洞で偶然聴いてそっこー惚れ込んだ曲です。最初は洋楽かと思いました。Jinsilさんの声質が独特でいいですね。Bjorkのような感じっていうと言い過ぎかな? イギリスの女性歌手に多そうな声質(Bjorkはアイスランド人だけど)。

サウンドも洋楽っぽいけど、Jinsilさんの歌声によってさらに洋楽っぽさに拍車がかかってる感じです。キャッチャーなメロディもシングル向きでいいですね。テンポもよくて、聴いた瞬間に「お?」と興味のそそられる曲だと思います(←自分の体験談)。

ミュージックビデオもトラックの世界観を表現できていて素晴らしいと思います。過去のEpik Highのミュージックビデオと比較すると、衣装とか世界観が結構YGっぽくなってるの感じ?

 

03. Airbag Feat. Naul

Naulさんの切ない歌声とアコースティックギターの旋律から始まります。続いてシンセ音とベース、ドラムが入ってきます。この流れって古典的ではあるけど、逆に最近減ってきてるような気もする。とても心地いい流れです。そしてそのままTABLOのラップが低くて優しいトーンで始まるんだけど、3小節目から高いトーンでハモってきて、4小節目で上のキーにボリュームを絞っていって、5小節目で完全に下のキーがなくなる。この瞬間に悶絶です。しかもそのとき「ハン!」って小さく言う瞬間があって、そこがのたうち回るくらい好き!

韓国語だから何言ってるか分からないけど、とにかくTABLOのラップが切なくて、感情の深い場所に訴えかけてきます。奥深い内容の歌詞に違いない! そして英語の歌詞は分かるので、「Guess I’m all alone again…  Once again」ってところが歌詞とメロディの相乗効果で泣きそうになります。

Naulさんの歌声もいいです。後半が特に、一瞬のハーモニーとか声を張るところとか、本当にブルっときます。あと、後半はピアノの音色もいいです。とにかく電子ピアノじゃないのがいい!(2回目)

 

※後日追記:この曲の歌詞を翻訳しました。歌詞を読んだらもっともっとこの曲が好きになりました!

歌詞和訳/Tablo – Airbag (Feat. Naul)

 

04. 밀몰(満ち潮) Scratch by DJ Friz

めっちゃかっこいい!ユーロサウンドとブラックミュージックの融合的なものを感じる。スクラッチがガッツリで、ズンズンって低音リズムで、アルバムのここまでの流れから意表をつくようなサプライズ感もいい。

水音をサンプリングしてるなど、細部にまで凝って作られています。耳を澄ますといろんな音が聞こえる。その合間合間にスクラッチがまだ心地いい。しかもこれ系の曲に、またまたピアノの旋律を響かせちゃうところとか萌え!

あと、サビのメロディ&歌い方が超かっこいい。「Swim swim swim away~」ってのがかっこよくて、そのあと「Dive~!」ってところでエコーを効かせるのとか、本当に痺れる。

 

05. 밑바닥에서(奈落の底から) Feat. Bumkey

左右の音響バランスをちょこちょこ変えていたり、サイレントな瞬間が入ったり、この曲もまた小細工が盛りだくさんです。音の構造がシンプルだからこそ、そういう小細工が余計に光ります。最後に入ってるのはTABLOのお子様の声かしら?

Bumkeyさんの歌声がまた切なくていいんですけど、イ・ソラさん、Jinsilさん、Naulさんと続いて切ないオンパレード。韓国には切ない歌声のボーカリストがたくさんいるのね! 同じ切なさの中にもそれぞれピュアさ、気怠さ、儚さなど違いがあって良いです。

この曲の一番の醍醐味は、やっぱりズンドコズンドコってリズムですかね。このループされる打ち込みに中毒性があります。こういうアフリカを思わせるようなズンドコリズム、大好物なんです。

 

06. Tomorrow Feat. Taeyang

テヤン(SOL)がフィーチャリングしてるので、BIGBANGのファンの方々はすでにこの曲は聴いているかと思います。音だけ聴いてても最高だけど、ミュージックビデオを観ながらだと、頭の中から変な物質がドクドク出てくる感じ。またまた切ない!TABLOは全体的に「切なかっこいい」(エロかっこいい風)。

テヤンの歌にTABLOのラップがかぶさるところが悶絶です。あと、ブリッジ部分でテヤンが「ニガトラオルテーカージーン(君が戻ってくる時まで)」って歌うところの「カージー」の「カー」が好き。ここ、分かる人いる?「カー」だけ何度もリピートして聴いちゃう。

後半のピアノが、すごく古典的なポップスって感じの旋律を弾くんだけど、リズムとの相性なのか、ダサくならないのね。最後のほうのドラムもコッテコテのポップスなビートなのに、全然ヤボッたくないのがすごい。ピアノの旋律もドラムビートもそれだけ切り取ると本当にダサいんだけど、なぜかこの曲ではオシャレに聞こえる。本当に素敵。

 

07. 출처(出所) Scratch by DJ Tukutz

これはマジでヤバイ。イントロのスクラッチとか、レコードノイズ・エフェクトとか、左右の音響バランスとか、いきなり興奮ポイントが盛りだくさん。イントロからもうノックアウトされました。そして後半は電子音がトリッキーにぶっこまれて、とにかく細部にまで至ってとことん楽しませてくれる。

サビのスクラッチが激しいとことか、本当に悶絶すぎですよ!気絶してまうわ!このアルバムってどんなタイプの曲にもピアノが使われるんだけど、それがまた私の好み!この曲のピアノは音量が小さくて聴き取りづらかったけど、たぶん電子だと思うのですが、曲によってそういうサウンドの使い分けができてるのも高度でいいです。

この曲のラップは、ほかの曲に比べるとやや攻撃的で、そこがまたかっこいいです。あら、こういう一面もあるのね?って感じでちょっとポッとしてしまいます。エネルギーが溢れてくる感じもしていい。

 

08. Dear TV/해열(解熱)

出た!ズンドコリズム!ライオンキングとか思い浮かんじゃうくらいのズンドコ。大好物です。

ほかの曲に比べると、この曲のラップはかなりブラックミュージックな感じがします。同じ英語でラップしていても、ほかの曲では白人っぽいラップに聞こえるんだけど、この曲は2000年以降とかの黒人ラップな感じ(←私の勝手なイメージ)。

「You sell my record, not me」(←「お前は俺の曲を売るんだ、俺じゃなくてね」って意味のこのメッセージもめちゃくちゃかっこいい)のあとからシタールと三味線のオンパレード。アフリカンなサウンドに、アジアの音を入れてくるのがおもしろい。こういう民族音楽的なのって本当に好き!

 

09. 고마운 숨(ありがたい息) Feat. Yankie、ポン・テギュ

ここに来て、ものすごいポップな感じがきましたね。アコースティック・ギターのイントロがとっても爽やか!急に海をドライブしたくなる、みたいな。

最初から最後まで3種類の同じコード進行パターンがループし続けるところが、かなり洋楽っぽいです。J-POPやK-POPの多くがダサイ理由のひとつに、コード進行が煩雑であるということがあるんですよね。対して洋楽はコード進行がシンプルです。アリシア・キーズなんて2つのコードだけの曲とかもあるけど、本当にかっこいいもんね!

ところでこの曲でフィーチャリングしてる男性ボーカルも個性的でいいですよね。昔いたNew Radicalsっていうアメリカのバンドのボーカルの声とか歌い方に似てる。良かったらそっちも聴いてみて。『You Get What You Give』って曲は欧米でかなりヒットしました。

 

10. 유통기한(賞味期限)

アルバムのラストを飾るのにふさわしい、穏やかで安らかな気持ちになれる曲です。タイトルを見ると全然穏やかで安らかじゃないんだけど、なにせ歌詞が分からないもので(笑)

これ歌ってるの本当にTABLOだよね?って確認したくなるくらい、ほかの曲のラップからは考えられないほど優して静かな歌声。そしてハーモニーが本当に美しいです。ボーカル・エフェクトのオン・オフ切替の瞬間とか、ため息がでます。このアルバム聴いてると、悶えたりため息がこぼれたり大変です。

この曲の醍醐味は、心地よいダブルベースの音色ですね。このベースこそ、この曲の主役だと思います。あと、この曲も同様にピアノの分散和音が美しいです。久々に電子楽器ではなく、生楽器の心地よさを堪能できて幸せな気分です。そして最後はTABLOのボーカルだけで静かにアルバムが終わるのです。

 

 


 

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音源ダウンロードまたはストリーミング(Pt.1と2に5曲ずつ分かれています)

 

 

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