Interview | Part Time Cooks - 7:30


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2016年8月3日、日本のヒップホップレーベルGOON TRAXが主催するライブ出演のために来日したPart Time Cooks(パート・タイム・クックス)のメンバーSaul Goode(ソール・グッド)をキャッチしました。Part Time Cooksとは、アメリカ・ノースカロライナ出身のSaul Goodeと、南アフリカ・ダーバン出身のBlack Moss(ブラック・モス)による2人組のヒップホップチームで、韓国を拠点に活動しています。

今年6月に彼らがリリースしたアルバム『7:30』は、ニュージーランド在住のプロデューサーSoulChef(ソウルシェフ)とPart Time Cooksのコラボ作です。韓国の大人気レーベルVMC(Vismajor Company)所属のNucksalがフィーチャリングした『Smash Town』という収録曲は、その軽快なサウンドと、ミュージックビデオで繰り広げられるストーリーの特異性が目を引きます。今回のインタビューでは、SoulChefやNucksalとのコラボのきっかけ、韓国で活動をしている理由、今後の展望など、詳しい話をSaul Goodeから聞くことができました。

 

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写真左:Saul Goode、右:Black Moss

 

今日はお忙しい中、お時間を取ってくださってありがとうございます。実はPart Time Cooksに関する日本語の情報って、ネット上に全然ないんですよね。充実した内容の公式サイトはありますが(※)、すべて英語で書いてあるのでちょっとハードルが高いです。なので、この機会に日本のファンにたくさんアピールができればと思います。

いいですね! ぜひお願いしたいです!

※公式サイト: http://www.parttimecooks.com/

 

では、まずは簡単に自己紹介からお願いします。

僕はPart Time CooksというチームをやっているSaul Goodeです。アメリカのノースカロライナ出身です。Black Mossって奴とチームをやってます。Black Mossは南アフリカ出身で、2人とも韓国に住んでいます。今回はBlack Mossが日本に来れなかったのが残念です。

 

Part Time Cooksの公式サイトとFacebookをチェックしてきたんですけど、FacebookにJoe Rollinsというメンバーの名前が書いてありました。実際は3人組ということですか?

あ、そうなんです。元々は3人で始めたんだけど、途中でJoe Rollinsがアメリカに帰国しちゃって。だからJoeはニューアルバムにも参加してないし、今はBlack Mossと2人でやってるけど、Joeが韓国に戻ってきたらまた一緒にやります。

 

それにしても、アメリカ出身と南アフリカ出身のメンバー同士がチームを結成して、韓国で活動するって、ちょっと変わってますよね。そうなった経緯を教えていただけますか?

僕は最初、1年間だけ住むつもりで韓国に来たんです。でも韓国にすっかりハマっちゃって、結局そのまま居ついてしまった。そのうち韓国人のラッパーとか、韓国に住んでる外国人とか、いろんな人と少しずつ知り合うようになって、Black Mossはそのうちの一人ですね。

 

韓国にはもう何年住んでるんですか?

もう5~6年になりますね。

 

そんなに? 長いですね! ではBlack Mossさんとは韓国で知り合って、一緒にチームを結成することになったんですね。それはいつ頃の話ですか?

2014年だから、2年前ですね。知り合ったのは3年前で、チーム結成が2年前です。

 

それぞれの役割を知りたいんですが、2人ともビートメイキングと作詞とラップをするんですか?

最初はみんなソロアーティストだったから自分で何でもやってたんだけど、僕の場合は、今はラップと作詞がメインでビートメイキングはしてないです。ニューアルバムの『7:30』はニュージーランドに住んでるSoulChefとのコラボアルバムなんだけど、SoulChefがメインプロデューサーとしてビートを全部手掛けました。でも実は僕たち、SoulChefとは会ったことないんですよ(笑)

 

え、会ったことないんですね! ではどうやって知り合ったんですか?

SoulChefがメッセージを送って来たんです。僕たちの音楽がすごく好きだということで。で、Part Time Cooks & SoulChefとして一緒にアルバムを作ろうよって話になって。あとはメールとかでやり取りをして、まだ実際に顔を合わせたことはないんです。

 

なるほど。では「Part Time Cooks & SoulChef」というのは単発的なコラボレーションであって、正式にそういうチームを結成したということではないんですね?

はい、単発的なコラボレーションです。

 

ところでPart Time Cooksというチーム名の由来は?

僕はずっとソウルに住んでるんだけど、Black Mossが最初はちょっと遠いところに住んでたんですよ。今はもうソウルに引っ越してきたから問題ないんだけど、最初の頃はBlack Mossが遠くに住んでるからどうしても会えるのが週末に限られちゃってて。だから「俺たちまるでパートタイムマーみたいだな」って話になって(笑) フルタイムじゃなくて、週末だけのパートタイムで働いてるからこの名前にしました。

 

Cooksっていうのは、そのままCooking(料理)のCookという意味で使ってるんですか?

そうです。でも実際に料理するという意味ではなくて、料理をするみたいに音楽を作るっていうか。パートタイムで料理をするシェフっていうイメージですね。

 

GROSTO(※)って知ってますか? Grocery Storeの略なんですけど。韓国のヒップホップ・チームで、彼らも音楽を作ることを料理に例えていて、それでGrocery Store(食料品店)っていうチーム名なんですよ。

へぇ、知らなかったです! GROSTOですね、チェックしてみます!

※GROSTOの詳しい記事はこちら

 

それで、2年前にPart Time Cooksを結成したあと、これまで3枚のアルバムを発表したということですね。念のためディスコグラフィーを確認したいんですけど、これで合ってます?

  • EP 『Midnight Snack』 (2014-05-10)
  • EP 『Baker’s Dozen』 (2016-02-16)
  • Full Album 『7:30』 (2016-06-15)

はい、それで合ってます。最初に週末だけ集まって作業をしていた頃に『Midnight Snack』を作ってみて、それがすごく良かったので続けて一緒に活動をすることになりました。

 

※3アルバムともSoundCloudで全曲視聴可能

 

 

 

ニューアルバムの『7:30』は、YouTubeにも全曲フルでアップしてますよね。CDでも販売しているのに、どうしてYouTubeでも無料公開することにしたんですか?

一番の理由は、とにかく僕たちの音楽をできるだけ多くの人に聴いてもらいたかったからです。それに、例えば僕が大好きなAnderson .Paak(※)も最近は無料で公開しているけど、今はそうやってアルバム全体を無料公開するのが世界のトレンドになりつつありますよね。僕がAnderson .Paakの曲を最初に聴いた時も、彼の他の曲をもっと聴きたいって思ってYouTubeでどんどん聴いたし。それに今はもう、日本以外の国では誰もCDを買わないですしね。

※Anderson .Paak:アメリカ人ラッパー。2010年代のトレンドとなったジャズを取り入れた強いグルーヴ感あるサウンドや、生楽器で演奏される骨太なサウンドが特徴的。現在のアメリカのアンダーグラウンド・ヒップホップシーンで最重要人物の一人に数えられる

 

なるほど。ところでこのアルバムはGOON TRAXからリリースしたということですよね? Part Time Cooksは、韓国ではインディペンデントだけど、日本ではGOON TRAXと契約をしているという理解で合ってますか?

はい、とりあえず『7:30』について契約を結んでいます。韓国では毎回違った形でアルバムを出していますね。最近だとLink6ってところから曲を出したりもしています。

 

Link6は、A June(※)が運営しているレーベルですね。そんなA JuneもGOON TRAXとつながりが深いですが、Part Time Cooksのお二人がGOON TRAXと契約することになったきっかけを教えてください。

GOON TRAXの代表を務める寿福知之さんからメールをもらったんです。僕たちの最初のEP『Midnight Snack』を聴いて気に入ったということで。それでGOON TRAXが定期的に出している『IN YA MELLOW TONE』というコンピレーション・アルバムに僕たちの曲を入れてくれることになって。そこからの付き合いで、今回アルバム『7:30』から正式に契約をしました。

※ A June:韓国のプロデューサー。コロンビア人プロデューサーのJ Beatと2人でA June & J Beatというチームを組み、主にジャジー・ヒップホップの分野で活躍している

 

そういう流れだったのですね。ところでどうして『7:30(セブン・サーティー)』というタイトルを付けたんですか?

Big L(※)の『Ebonics』って曲の中に、「If you 730, that mean you crazy(もしお前がセブン・サーティーなら、お前はクレイジーってことだ)」っていうフレーズがあるんです。だからアメリカのスラングで「セブン・サーティー」といえば、「クレイジー」って意味なんですよ。

※Big L(ビッグ・エル):ニューヨーク・ハーレム出身のラッパー。1999年、24歳の若さで射殺された。ハイトーンの鋭いラップが特徴的で、フリースタイルのうまさ、絶妙なパンチラインなど、今もなお伝説的なラッパーとして世界中にファンを持つ。RHYME-A-の『K-Bonics』という曲は、Big Lの『Ebonics』のオマージュ

 

へぇ、そうなんですね! ではここからは主に、『7:30』に収録されている『Smash Town』という曲について聞きたいと思います。まず、Nucksalと一緒にやることになったきっかけを教えてください。

Nucksalとは2年くらい前に「In2Deep(※)」で知り合ったんですけど、その時に彼のパフォーマンスを観て、最高のラッパーだって確信しました。それで連絡先を交換して、その後はNucksalのアルバム『작은 것들의 신(小さきものたちの神)(※)』のリリースパーティーにゲスト出演させてもらったりとか交流を続けてきました。そういう流れで、以前からDeepflowとかVismajorのメンバーとは親しくしています。今回の『Smash Town』については、僕たちのほうからNucksalにビートを送って、フィーチャリングをお願いしました。

※In2Deep(イントゥーディープ):Onesun(90年代から2000年代にかけて活躍したMasterplan出身のラッパー)が運営するクラブ

※Nucksalのアルバム『작은 것들의 신(小さきものたちの神)』がリリースされた時の記事はこちら

 

ちょうど今、Deepflowは日本に遊びに来てますよね(笑)

うんうん、食べ歩きしてるみたいですね(笑) 彼は人柄はもちろん、ラッパーとしてもプロデューサーとしても素晴らしいし、ミュージックビデオの監督とか撮影とかもするし、すごいですよね。

 

Deepflowが高校で漫画を習ってたってこと知ってます? だからアルバムのアートワークとかも自分で描いたりするんですよ。絵がすごくうまいんです。

ええっ? それは知らなかったです!

 

去年DeepflowがMild Beatsと一緒にリリースした『Jamcook』(※)ってアルバム分かります? あのアートワークもDeepflowが描いたんですよ。

ええっ!? すごい! 本当に才能の塊ですね!

※Deepflow & Mild Beatsのアルバム『Jamcook』がリリースされた時の記事はこちら

 

それでは今回Nucksalと一緒に作業してみて、何か印象に残ったエピソードはありますか?

曲のコンセプトをNucksalに伝える時、かなり細かい部分についてもしっかり伝えたかったので、友達に韓国語で文章を作ってもらったんです。Nucksalは英語ができないから。それで僕がすごく長い韓国語のメッセージを送ったので、Nucksalがビックリしたみたいで。「これ、兄さんが書いたんですか!?」って興奮して言われました(笑) だから「いやいや、まさか。友達に書いてもらったんだよ」って言ったら、「なんだそうか。韓国語が完璧すぎると思った!」って言われました(笑)

 

『Smash Town』のミュージックビデオは見どころが満載ですよね。ダッチワイフが出てくるし(笑) ビデオのストーリーを簡単に説明していただけますか?

Nucksalが不思議なお店のオーナー役で、ダッチワイフを僕たちに売ってくれるんですけど、その人形のネックレスに隠しカメラを仕込んでるんですよ。で、僕たちはすごく間抜けで馬鹿馬鹿しい行動を繰り返していて、Nucksalはカメラを通してそれを全部見て笑いものにしてるんです(笑)

 

ラストシーンではお二人とも人形になっちゃいますよね。つまりお二人が買った人形も、元々は人間だったということですか?

はい、そうです。まあイメージとしては、Nucksalが魔法を使えるというか(笑) それで僕たちにいたずらをしたっていう感じですね。すべて監督のアイディアなんですけど。

 

監督のお名前は?

Rhory Daniellesという人です。

 

 

最初と最後のシーンで出てくるお店がものすごく気になりました。ぜひ行ってみたいんですけど、あれはソウルにあるお店なんですか?

あのお店、いいですよね! 梨泰院(イテウォン)にあるお店です。僕もあんな店があるなんて知りませんでした。長く梨泰院に通いつめてるのに。ショップオーナーの女性が、自分の店でビデオが撮影されることにすごく興奮してましたよ。「焼酎でも飲みなさい!」って何度も勧められたりして(笑) お店の名前は……なんだったっけなぁ。

 

思い出したら連絡ください(笑) あと、BLOOMINT MUSICの読者に『Smash Town』の聴きどころを教えてもらえますか?

とにかく楽しい曲なので、リズムとかフロウとかノリとか、そういう部分を楽しんでほしいです。パーティーで踊ったりとか。僕たちは普段、もっとシリアスな曲を書くことが多いんですけど、この曲に限っては全然そういうことはないので、気軽に聴いてほしいですね。

 

普段はシリアスな曲が多いんですね。

はい。政治のこととか、人種差別のこととか、アメリカの警察問題とか、社会生活における問題とか、そういうことを語った曲が多いです。でも『Smash Town』は本当にただ楽しむために書いた曲です。

 

他に韓国人アーティストとのコラボ経験はありますか? 今後コラボする予定がもしあれば、それも可能な範囲で教えてください。

はい。まず、2Tak(※)とDon Millsと一緒にやった『Mental』という曲が出ています。今後の予定としては、ちょうど今、VismajorのWutanと一緒に曲を書いているところで、Yann Cavaille(ヤン・カヴァイエ)っていうフランス人がプロデュースしてくれる予定です。

※2Tak:ビートボクサー。この過去記事でちょっとだけ触れたことがあります。Lupangと2人でビートボクシング・チームのPrimateとしても活躍中です

 

 

では、今後一緒にコラボしてみたい韓国人アーティストは?

うーん。僕が最近好きになったラッパーと言えば、naflaですね。『Compton 2 Seoul』っていうコンサート(※)で彼のパフォーマンスを観て、本当にうまいと思いました。あとはOwen Ovadozも好きですね。以前、仲良しのKEEBOMBってラッパーがOwenとコラボしたのがきっかけで存在を知ったんだけど、Owenが参加した『EUNG FREESTYLE』って曲がすごく好きで。

※2016年4月2日にソウルで開催されたヒップホップ・コンサート。アメリカのウェストコースト・ヒップホップの礎を築いたグループ「N.W.A」のDJ Yellaを始め、アメリカと韓国のヒップホップ・アーティストたちが集結して開催された。主な出演者はDok2、The Quiett、Paloalto、Okasianなど。Part Time Cooksも出演した

 

 

『EUNG FREESTYLE』は、本当にかっこいいですよね。

はい。すごく好きです。でも僕は、韓国に限らず、世界中のアーティストとコラボしてみたいですね。各国のアーティストを韓国に呼んだりとか、そういうことをしたいです。でもお互いの国に友人とかがいないと、行き来するのって難しいですよね。だから色々と努力していて、ひとまず9月にはアメリカからWELL$っていうラッパーをソウルに呼ぶことになりました。Vascoが運営している「Secret Society」ってクラブで一緒にやる予定です。

 

それって、A Juneが運営しているLink6と似てますね。Link6って、6大陸をリンクさせるっていう意味でLink6って言うんですよ。A Juneも世界中のアーティストたちとコラボしていきたいそうです。

へぇ、かっこいい! Link6の名前の由来は初めて知りました。そうなんですね。かっこいい!

 

では最後に、今後の計画や将来の目標についてお聞かせください。

ひとまず、9月にAnderson .Paakがソウルでやるライブに僕たちPart Time Cooksも出演します。BeenzinoとDJ Soulscapeも一緒に出るんですよ。あと、僕の最終的な夢は、世界中を旅して回りながら音楽を続けることです。そして母親の近所に家を買って、音楽をやれたら最高です。その夢を叶えるために、今後も世界を回りながら音楽を続けていきます。アメリカ人ラッパーだ、南アフリカ人ラッパーだ、韓国人ラッパーだ、そんな風に限定したりせず、Link6のコンセプトと同じように、国際的な活動を続けていきたいです。

 

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Sakiko Torii
About Sakiko Torii
BLOOMINT MUSICの運営者である鳥居咲子は、幼少期よりピアノと音楽理論を学び、ロンドンに音楽留学をした。現在は音楽記事の執筆、ライブ主催、楽曲リリースのコーディネート、メディア出演など、韓国ヒップホップに関する様々な活動を展開している。著書に『ヒップホップコリア』。音楽以外に関するネタを集めた趣味ブログ『BLOOMINT DIARY』も運営中。別名ヴィヴィアン。
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