Paloalto「初めから終わりまでHI-LITE」インタビュー by DAEHAKNAEIL

Written By Sakiko Torii

韓国の大学生向けのメディアサイト、DAEHAKNAEIL(大学明日)にPaloaltoのインタビューが掲載されていたので、和訳しました。

インタビュー内ではヒップホップ・サバイバル番組『Show Me The Money』への出演についても言及しています。ご存知の方も多いかと思いますが、HI-LITEのアーティストたちは、この番組に対して一貫して否定的な姿勢を取ってきています。Paloaltoも同様に否定的な姿勢を取ってきたのですが、やはり社長として、レーベルの知名度を向上させたいという思いがおありのようです。

短くてサラッと読めるインタビューですので、ぜひご覧になってみてください。

 


 

HIGHLIGHT of HI-LITE | ラッパー Paloalto

「みんなが目立とうとあがくのは、本当に見苦しい。それぞれの役割があるものだ。無理に露出しなくても、認める人は認める」

6月4日の深夜にPaloaltoがTwitterに残したこの言葉には、彼がヒップホップシーンに身を置いて11年という深みがある。目立とうとあがく観客をきまり悪くすることなく、黙々と自分の歌詞を書き、彼を認めたラッパーはハイライト(HI-LITE)レコーズに集まり、毎瞬間のハイライト(Highlight)を作っている。ファーガソンおじいちゃん、1勝の追加に失敗(※1)

※1 ファーガソンおじいちゃん:スコットランドの元サッカー選手であり、元監督であるアレックス・ファーガソンのあだ名。なんでここでこれが突然出てくるのか不明です。誰か分かる人、教えてください

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初めから終わりまでHI-LITE

HI-LITEのラッパーであり社長ですが、HI-LITEの所属アーティストはみんな勤勉です。B-Free、Huckleberry P、また最近グローバルに騒がれているKeith Apeまで。会社の雰囲気もそうですか?

会社の立場から、アーティストに誠意を強要することはできません。基本的に彼らはみんな音楽に対する情熱が高いので、自然に作業量が多くなるんです。どうしてもヒップホップミュージシャンたちはみんなこうなります。歌詞を書いたり、ビートを作る作業は仕事というよりも日常ですからね。だけど僕は、実は作業量は作品のクオリティを保証するものではないと思っています。アーティストごとに傾向が異なるので。作業量が多くなくても、時々ものすごくクールな結果を出す人だっているんですよ。

 

今年はHI-LITE設立5周年ですが、もうある程度のレベルまで行きましたよね。会社を運営しながら、一番大変だったことは何でしたか?

会社は設立したけど、僕は基本的に音楽をする人間じゃないですか。会社自体は、所属アーティストたちとの音楽的な絆で始めたものなんですよ。だけど会社を運営するためには、冷静にならなければならないんです。作業をするときや会場で一緒に遊ぶときは気楽に過ごしても、仕事をするときは真顔でやるべきなのに、彼らは混同したんですよ。どうやら僕の立場を100%理解するのは難しいのでしょう。そのような部分で、内面では葛藤が少しありました。「ヒップホップ界の劉備玄徳(※2)」という声まで聞こえたけど、会社を切り盛りするなら曹操(※3)でなければならない場合も多いんですよ。

※2 劉備玄徳:三国志の登場人物。決して人を切らない親分肌の人情に厚い人物
※3 曹操:同じく三国志の登場人物。現実的で策士、時に非情な姿を見せる

 

すべてを手に入れることはできないと気付いたとき、取り散らかしていたすべてのものを元の位置に(Paloalto – 『좋은 밤(良い夜)』より)。私が本当に好きな歌詞です。ところで、実際に多くのものを手に握りしめるほど、手放すのは困難でしょう

僕は中でもアップ・アンド・ダウンがひどいほうです。欲が大きくなるときもあるし、運命に任せようと思うときもあるし。その歌詞を書いたときは、自分がうまくできることや、自分自身のことを正確に分かろうというものでした。必ずしも音楽の話だけではなく、生きながらたくさん感じるのは、僕自身が誰なのかということについて常によく分かっている必要があると思います。そうでなければ、周りの人にとっても、僕にとっても良くないです。

 

Ameoba CultureからIllionaire Records、BrandNew Musicなど、ヒップホップのレーベルが多いですね。その中で、HI-LITEが守るべきカラーとは何でしょうか?

HI-LITEは既存のシステムに妥協せず、本人たちの音楽をこだわってやるという面でたくさん支持を受けていると思います。実はそれは僕たちが意図したというより、自然にそうなったんですよ。たまたま既存のシステムに不満が多かったミュージシャンたちがHI-LITEに集まって、そういう人たちが一緒に作業をするから結果もそうなって……。基本的にはみんな頑固です。腕が内側に曲がるけど(※4)僕から見ても、うちのアーティストたちは各自の信念を音楽で表現していてかっこいいと思います。

※4 腕が内側に曲がる:韓国のことわざ。腕が自分の方へ曲がるように、身近な人ほど情が移るという意味

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時間という矢は、どれほど遠くまで飛んでいくのか

サイファー映像をひとつ見ました。ほかのラッパーは、カメラに食らいつくようにジェスチャーを強くしますが、Paloaltoさんはおとなしくリズムに乗って、自分のパートだけ消化していました。ときにはもっと弾けたいこともあるのではないでしょうか?

僕の印象は強そうでもないし、図体も小さいし、ラッパーだと連想するような強いイメージがありません。僕の音楽だけを聴いた方は、実際に僕を見るとすごく驚きます。「ものすごく温和なんですね?」って。だから、最初はもっと強そうなふりをするように注文も多く受けました。だけど僕の元々の性向や歌詞、ラップ、モーション、表情、こういったものの一貫性を保つことが一番自然な姿でしょう。普段は静かなのに、ラップをするときだけイカついコスプレをするのもおかしいから。見る人もぎこちなく感じるでしょう。

 

以前のインタビューで「ヒップホップの大衆化」について言及したことがあります。HI-LITEもヒップホップの大衆化に貢献した側面があり、同時に受益者でもありますが……

その言葉自体がちょっと曖昧です。 「ヒップホップの大衆化」がひたすら良いということでもないんですよ。どのような方法でするかが重要なんです。かっこいい人が登場して、ヒップホップのクールな部分を示すことができればもちろん歓迎です。その例がBeenzinoです。すべての歩みがかっこよくて、音楽も本当に良くて、しかも有名で。今の時代のリーダーだという気がするほどだから。だけど僕の好きなヒップホップという文化がかっこ悪く広がるのであれば、むしろ人々には知られたくないですね。僕たち同士だけで楽しむほうがいいでしょう。

 

幼いときに決意したその姿どおりに年を取る(Paloalto – 『Forest Gump』より)という歌詞を見て、聞きたかったです。本当なのか? 本当なのであれば、その姿とは果たして何なのか?

多くの人は子供の頃に良い心を持って生きるのに、大人になって社会人生活をしながら波風を多く経験します。詐欺に遭うこともあるし、大きな傷を受けることもある。善良に生きれば損害を被るという事実をつくづく思い知るから、自分自身もよく分からずに利己的に変わっていきます。そうではなく、大人になっても子供の頃の純粋な善意が変わらなければ良いということです。僕の伯父がそうなんです。年齢にはふさわしくなく肌がつるつるで、顔は常に笑顔で。僕も年を取ったとき、そのような顔であればいいなと思います。

 

日常や普段の考えをそのまま歌詞に入れるほうですね。ところでご結婚もされて、会社も落ち着いて、安定した生活をしてみると、それが歌詞や音楽に否定的な影響を与える可能性もあると思います

はい、そのような話はたくさん聞きました。僕が軍隊に行くときも、「軍隊に行ってきたら感性が落ちる」という先入観が多かったけど、実際に僕は同意することができませんでした。感性ではなく、情熱が落ちたんです。だから僕は軍隊にいても、一生懸命に歌詞を書いて、休暇に出るたびにフィーチャリング参加をしました。除隊後、ラップが上手になったという声もよく耳にしました。同様に、結婚後、音楽がダサくなるという言葉は聞きたくないです。単に僕がその時その時の気持ちを自然に音楽に収めれば、自然に僕の変化を受け入れてもらえるのではないでしょうか?

 

Paloaltoさんにとって結婚はどのような意味でしたか?

人生の完成です(笑) 子供の頃から早く結婚したかったんですよ。両親2人の関係が本当に良かったんです。だからポジティブなエネルギーも多く受け継いだし。当然僕も結婚して幸せな家庭を築くのが人生の完成だと思ったんです。だけどいざ結婚をしてみたら、これからもやっていかなきゃいけないことが増えましたよ。人生の新しい章が始まった感じ? 忙しくても家に帰って妻に会うと、なんか……ものすごく幸せです。妻も明るい性格なので僕は多くのエネルギーを受けるし、彼女の友達からも力を得ます。このまま維持できたらずっと幸せだと思います。

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ヒップホップは音楽以上の存在だ

『Show Me The Money 4』の審査員として撮影を開始しましたが、なぜ引き受けることにしたのかとても気になります。昨シーズンのときは拒絶したのに

HI-LITEのミュージシャンたちが歌詞に乗せて書いたでしょう(※5)。Reddyは「Show me the money イカサマしなくても韓国代表 」と書いたし、Huckleberry Pも僕が出ることを尊重してくれるけど、自分なら出ないと言われたし。たくさん悩みました。何よりも、新しい領域を体験してみたかったんです。そこから新しいエネルギーが生じるから。あと、テレビに出れば、もっと名前を知らせることができて、HI-LITEのアーティストたちも、もっと知ってもらえるじゃないですか。僕が信じ、愛している人は、みんな無条件で出れますよね? 妻や、親友や、HI-LITEのメンバーなど。

※5 歌詞に乗せて書いた:B-Freeが昨年リリースした『My Team』という曲のこと。過去記事「Single | B-Free – My Team (Feat. Reddy, Okasian, Huckleberry P, Paloalto, Keith Ape)」参照

 

ヒップホップを好きな人たちが、ミュージシャン 対 観客ではなく、審査員 対 参加者として出会った新しい経験だったと思います

HI-LITEのミュージシャン同士、フィードバックは具体的にしないです。良ければ「良い」、あまり良くなければ「よく分からない」でおしまいです。あと、僕はちょっと単純で、こういうことを補完して、こういうことを生かして、というディテールに話すことに慣れていません。だけど参加者は、ディテールなフィードバックに飢えているじゃないですか。自然にそうやって言ってくれる人に心が動くでしょう。僕も気に入った参加者を見たとき、それを表現したいのに、「ああ、本当にとっても良かったです」としか言えないから、ちょっと残念でした(笑)

 

Zicoと同じチームになりました。ラインナップが明かされてから、審査員であるZicoが参加者であるP-Typeを評価することについて話題になりましたよね

Zicoとは会社も違うし、一緒に作業をしたこともないので、今回の『Show Me The Money 4』を通して初めて会いましたが、仲良くしています。お互いに配慮して、コメントを合わせながら。そして参加者と審査員の境界は、既に崩れたと思います。SwingsからSnacky Chan兄さん、Vasco兄さんなどみんな出たじゃないですか。Zicoはそれなりに自分の音楽を作り、プロデュースもしながらキャリアを積み上げてきたので、制作スタッフが審査員として選択したのでしょう。重要なのは、誰がどれだけかっこいいものを見せてくれるかです。

 

以前のインタビューを見ると、音楽的に他者とコミュニケーションすることの楽しさを強調していました。その楽しさについてより具体的にお聞かせください

どこでも常に自然に会話を引き出す人がいますよね。だけど僕は口数が少なく、何の話をしたらいいか分からないことも多いです。ただのバカでしょう(笑) その代わり、僕にとって心地いいコミュニケーション方法は、音楽なんです。主題を投げかけて歌詞を書くと、ディテールに話を共有しなくても、ラップを聴いて、その人がどのような考えをしているかを感じることができます。というか、むしろ話すよりも思いが届くことが多いですね。だけど『コントロール大乱』(※6)のときはちょっと残念でした。みんなが喧嘩を見物するのが好きだから話題になったし、僕も興味深く見ていたけど、そのときは僅かに積もっていた感情まで無駄に吐き出すようになってしまっていたでしょう。それは「ディス戦」を代表することでもなく、ヒップホップを代表することでもないのに。

※6 コントロール大乱:過去記事をご参照ください

 

それでも『コントロール大乱』や『Show Me The Money』、『Unpretty Rapstar』などの影響で、ヒップホップへの関心が高まったじゃないですか。だから「Hiphop is more than music」という言葉がまだ肌に触れてはいないと思います

テレビ以外の場所でも素晴らしいものがたくさん行われているんですよ。『Dipcoin』という、僕が最近かっこいいと思っているパーティーブランドグループがあります。ここにはDJからラッパー、デザイナー、フォトグラファーまで勢ぞろいなんですよ。認知度が低いために大規模なヒップホップ公演に招待されない人も、自分だけのヒップホップを一生懸命作っている。現実的に、このようなものは積極的に見て回りながら訪ねることができるので、テレビで放映される『Show Me The Money』や『Unpretty Rapstar』とは異なりますが。ヒップホップの範囲はますます広がっています。もはや黒人だけのものでもないし、ラップではなく歌を歌ってもヒップホップになることもあるでしょう。かっこ悪くても、自分のライフスタイルが含まれていればヒップホップになり得るのに、テレビでは攻撃的でカリスマ的な部分だけ照らします。もう少し深く知ると、もっと多様で自分自身を表現することができるツールが多いんですよ。それがヒップホップだと思います。

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出所:DAEHAKNAEIL (2015-06-09)
日本語訳:Sakiko Torii

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