Column | It G Ma and U Guessed It


Keith Apeの『잊지마 (It G Ma) 』のリリース記事の中で、OG Macoが2014年夏にリリースした『U Guessed It』について少し触れました。上に貼った動画が、Keith Apeの『It G Ma』です。

この曲もビデオも斬新に見えると思いますが、実はOG Macoの『U Guessed It』という曲のオマージュと呼べるものになっています。サウンド、ミュージックビデオ、どちらも非常に似ているのですが、どこにもオマージュという表記がないので、最初はかなり心配しました。

こちらがOG Macoの『U Guessed It』です。

 

ご覧のとおり、曲の雰囲気だけでなくカメラワークにまで影響を感じます。

その後『It G Ma』はアメリカで想像を遥かに超える大ブレイクを遂げ、案の定と言いますか、OG Macoが不満を漏らしました。しかしその不満は、どちらかというと『It G Ma』が自身の曲に似ているからというよりは、『It G Ma』のミュージックビデオで使われているグリルなどのアイテムなどに対し、黒人に対する固定観念が気に入らないというようなものでした。何だか取ってつけたような言い分だとも思いましたが、Keith Apeがアメリカにライブに行った際、和解をしたようです。仲良く一緒に写真も撮って、OG Macoがツイッターに上げていました。

Keith Apeサイドは、今では『U Guessed It』のオマージュだったことを公式的に認めています。仲間同士で集まって、「なにか楽しいものを作ろう、『U Guessed It』のようなものをやろう」と言って作ったのが『It G Ma』であり、だからこその無料公開曲だったということです。

最初からそう説明すれば良かったとも思うのですが、まさかここまでこの曲が話題になるとは思っていなかったのでしょうね。私自身、この曲がリリースされた当時に記事を書いたときは、こんなことになるとは想像もつきませんでした。韓国でもまだ芽が出る前のKeith Apeの楽曲が、韓国ではなく本場アメリカで大ブレイクするなんて、一体誰が想像できたでしょうか。

ところでこの『U Guessed It』ですが、上に貼ったミュージックビデオは最初のバージョンで、後に2 Chainzがフィーチャリングしたことで大きな話題となりました。そのバージョンがこちらです。2 Chainzのヴァースは2:08からです。

 

曲の雰囲気が狂気に満ちていますが、それもそのはず。OG Macoはこの曲を作ったとき、全然曲作りの進まないエンジニアに対して怒り狂ってて、しかも酒に酔っていたそうです。怒りに任せてエンジニアの頭を叩き、「とりあえず録音ボタンを押せ!」と言って、フリースタイルでやったんだとか。だけど当のOG Maco本人は、酔っ払ってたのであまり覚えてないそうです(笑)

OG Macoはアメリカ南部、アトランタ出身のラッパー(まだ22才!)なのですが、アンダーグラウンド・ヒップホップシーンでは「2014年の最高の新人」とも称されています。元々アトランタのアンダーグラウンドシーンは、メジャーで流行している音楽よりもディープで斬新だと言われていますが、中でもOG MacoのScreamo Rapとよばれる叫ぶスタイルは目を引きます。

Screamo Rapの新たな代表格としてシャウトを効かせ、自らを「ロックスター」と称するOG Maco。そんな彼が2014の11月に出したミックステープは、SoundCloudにて全曲無料ダウンロード可能です。

 

ところでヒップホップというと、東のニューヨーク、西のロサンゼルスというイメージを持つ人も少なくないと思います。実際に90年代初頭まではそうだったのですが、その後アトランタ勢が参入したことで南部の勢いも強まりました。かの有名なプロデューサーBabyfaceがアトランタに拠点を移したことをきっかけに、優秀なプロデューサーやラッパーたちが続々とアトランタで育っていったのです。ここからどんどん発展して、いわゆるサザンヒップホップ、ダーティーサウスなどと呼ばれる「サウス系」のヒップホップに進化していったわけです。

OG Macoはサウス系といっても、パンクから強い影響を受けているので、一層ハードなスタイルですね。この雄叫びっぷりはこれまでにない新しいスタイルで、アメリカでは動画共有サイトのVineでパロディーが流行りました。

私はこれが好きなのですが ↓

 

OG Macoはこれが好きだそうです(笑)↓

 

これもおもしろいです ↓

 

これも大好き ↓

 

このように、アメリカではすでに成功者の仲間入りを果たしつつあったOG Macoですが、『It G Ma』をきっかけに『U Guessed It』も改めて注目を浴びることになりました。だけどもし最初から『It G Ma』が『U Guessed It』のオマージュであったことを公表していたら、どちらの曲もここまで話題にならなかったかもしれません。

もちろん『It G Ma』は純粋に自分たちが作りたいものを作って無料公開した曲なので、話題性を求めて計算していたのではなく、様々な条件が重なってここまで話題になったわけですが、結果的に韓国でOG Macoの知名度が上がり、2NE1のCLとのコラボを果たしたのがおもしろいところです。というか、CL & OG Macoのコラボ曲『Doctor Pepper』のほうが『It G Ma』の二番煎じ感が半端ないです。しかしプロデュースを手掛けたのがDiploだったので、話題性も抜群だったはずですが、『It G Ma』に比べたらイマイチ盛り上がりませんでしたね。

Keith Apeは『It G Ma』のブレイクをきっかけに、HI-LITEと契約を終えて単身アメリカに渡りました。せっかく仲直りもしたので、まずはOG Macoとコラボ曲を出すのではないかと思ったりもしたのですが、それぞれ別の韓国人×アメリカ人コラボを進めましたね。いつかこの2人がコラボしてくれたらおもしろいと思うのですが、どうでしょうか。それは別にしても、この2人の若い才能あるラッパーたちが、それぞれどのように活躍していくのか、今後も注目していきたいと思います。


Sakiko Torii
About Sakiko Torii
BLOOMINT MUSICの運営者。イギリスでの音楽留学経験を生かした音楽的に深みのある記事が売り。独自スタイルのライブ企画、楽曲リリースのコーディネート、ライター活動、各種メディア出演など、韓国ヒップホップにおいて多方面に活躍中。著書に『ヒップホップコリア』。別名ヴィヴィアン。
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