Report | The Ben Folds Orchestra Experience


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行ってきました、Ben Foldsの来日ライブ!

あ、上の写真。単に可愛いから貼ったわけではないですよ。今回のツアーのオフィシャル写真なんです。会場で売っているTシャツも、白バージョンはこの写真がモチーフになっています。私はオーケストラバージョンの黒を買いました(これ↓)

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ファン歴18年(年バレる)の私は、もうBen Foldsのコンサートに参戦するのは何度目か分からないけど、今回はオーケストラ公演なのでちょっと特別な感じ。

ちなみに過去の来日ライブのレポはこちらです。

 

前回の来日はBen Folds Fiveとしてでしたが、今回は再びソロ公演です。オーケストラ公演は5~6年前にオーストラリアで行なったのをDVDで観たけど、日本で行なうのは今回が初めてだったので、めっちゃ楽しみでした。庶民には敷居の高いオーケストラの生演奏を、Benちゃんがポピュラー・ミュージックと融合させることによって、気軽に我々にお届けてしてくれるわけです。チケット代が1万円で高いという意見も目立っていたけど、フルオーケストラですよ? むしろリーズナブル!

今年3月に始まった本ツアー『The Ben Folds Orchestra Experience』は、なんと来年1月まで続くというロングツアーです。ほぼ1年ですね! 全米とヨーロッパで50公演、そして日本公演は東京が2014年11月17日と18日、大阪が11月20日の3公演でした。

私、てっきりオーケストラごと連れて世界を回ってるんだと思っていたのですが、各地で現地の楽団を使っているんですね。日本公演では約40人編成の「東京スターオーケストラ」さんとの共演でした。指揮者の方が小沢征爾さんのような典型的な指揮者的風貌で、それだけでもテンションあがる(笑)

 


 

では、まずはセットリストをどうぞ。

曲数は少ないですがピアノ協奏曲が3楽章あってとても長いので、全部でだいたい2時間弱くらいだったかな? あ、でも途中で休憩20分挟むから、厳密にいえば1時間半くらいですかね。

<第一部>
01. Zak and Sara
02. Smoke
03. Jesusland
04. Picture Window
05. ピアノ協奏曲(全3楽章)
06. Steven’s Last Night in Town

<第二部>
07. Effington
08. Landed
09. Cigarette(一番のみ)
10. Fred Jones, Part 2
11. Gracie
12. Not The Same
13. One Angry Dwarf and 200 Solemn Faces

<アンコール>
14. Brick

 


 

私が参戦したのは、東京公演1日目(2014年11月17日)。Bunkamura オーチャードホールに行くのは2回目です。前回はバリバリのクラシックコンサートを観に来たので、会場の雰囲気もビシッとしていましたが、今回はポピュラー・ミュージックとクラシックの融合コンサートなので、服装も含めて若干ゆるい空気感。

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それでちょっと驚いたのが、物販で対象商品のCDかDVDを買うと直筆サインがもらえるというもの。パッと見でも印刷じゃなくてマジックで直接書いたものであることは分かったんだけど、念のためスタッフの方に直筆かどうか確認しました。

ってか、Benちゃんのサインがこんなにヘナチョコだったとは知らなかった(爆) 台紙の派手さとのギャップに萌えるわー。色々な年代のBenちゃんの写真がコラージュされていて、たまにいる昔すぎるBenちゃん(一番右下とか)に吹いた(笑)

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そして着席。私の席はここ。

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肉眼でBen Foldsの手元が確認できる、とてもいい席でした。あ、今回は写真撮影OKだったんですよ。本番中も。私は本番中は撮影禁止だと思い込んでいたので撮らなかったんだけど。でも一部と二部の間の休憩中に最前列まで行って、Benちゃんが弾いていたピアノを撮影してきました。ピアノは当然のごとくSTEINWAYでした。

なんでしょう、このSTEINWAYのピアノに出会えた時の満足感。そしてBenちゃんがフルオーケストラをバックにSTEINWAYを弾いている……。シチュエーションだけで萌え!!!!!!!!!

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開演時間になり、ブザー音と開演のアナウンスの後、楽団の皆様がゾロゾロと入場。この時点で「あれ? 日本人だ」と気づき、そして指揮者の小沢征爾さんっぷりに悶えたのであります。続いて主役、Ben Foldsの登場! コンセプトに合わせ、Benちゃんの服装も黒いスーツでクラシックスタイル。そしていつもはほとんど立ってピアノを弾くBenちゃんですが、今回はほとんど座って弾いていました。

一曲目は手堅く『Zak and Sara』から。オリジナルの編曲に忠実に沿って、オーケストラバージョンに編曲されているところが本当に素晴らしかった。基本構造はそのままで、それを弦楽器、木管楽器、金管楽器で演奏している。お次はノリノリな『Zak and Sara』から打って変わって『Smoke』『Jesusland』と、しっとり聴かせてくれました。Ben Folds Five時代とソロ以降の曲をうまく混ぜながら、ノリノリな曲と穏やかな曲をバランス良く入れていく。さすが!

次にやった『Picture Window』は、2010年にリリースされたNick Hornbyとのコラボアルバム『Lonely Avenue』に収録されている曲です。実は私、このアルバム持ってるんだけどあまり聴き込んでいなくて、「この曲なんだっけ?」ってなってしまって、ちょっとファン失格な気分に陥りました。

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Photo credit by Kayoko Yamamoto via Billboard Japan

 

そして今回のコンサート一番の目玉は、なんといってもBenちゃんが去年作曲したという、20分以上にも及ぶ『ピアノ協奏曲』ですね。全3楽章をフルでやるという、なんていうか、もう完全に本格的なクラシックコンサートでして。

しっかしここまでの完璧なピアノ協奏曲まで作曲しちゃうBenちゃん。私ってば普段から数多くのアーティストに対して安々と「天才」って言葉を使ってきてるけど、現代のポピュラー・ミュージック界で一番の天才は、間違いなくBenちゃんでしょうね。

下の動画は、アメリカのオハイオで行なわれた公演のときのピアノ協奏曲です。クラシックなんて興味がないって言ってるそこのあなた! いいから黙って再生してみてちょうだい! 打ち込みで単純化された商業音楽もいいけど(私も好きだし)、たまには歴史あるクラシックを聴いてみませんか。しかもこれを作曲し、ピアノを弾いているメガネのおじさんは、普段はファンキーなメロディにひょうきんな歌詞を乗せてふざけている変人ですよ。

 

どれだけクラシックなピアノ協奏曲にしても、ちゃんとBenちゃんらしさが残ってますよね。例えば上の動画でいうと16:53あたりのBenちゃんの早弾きは、「ザ・Ben Folds」って感じしませんか? そのまま進むと、17:25あたりからピアノの弦を直接叩いたり、弦を押さえて鍵盤を弾くことで音をミュートさせたり、新鋭ピアニストが好む「内部奏法」を取り入れています。こういうところが本当にBenちゃんらしいと思います。

ほかにも2:40とか3:08なんてブルーノート(黒鍵とでも思っておいてください。厳密には違うけど)がガッツリ使われて、めっちゃブルースしてます。それでいて5:00あたりからしばらくはブルーノートも消えて、完全なクラシックになってますよね。ロマン派というか。ショパンからチャイコフスキーへ、みたいな感じ? と思ったら、現代の映画音楽みたいな雰囲気になったりして。すっげー天才!!!

8:36からのBenちゃんのピアノも大注目ポイントですね。クラシックっぽいのに旋律がBenちゃんっぽい。そのまま聴き進めて、9:53からのオーケストラの旋律がこの曲のサビ的なものですね。心に迫り来るメロディというか。第一楽章の一番最初も同じメロディです。鳥肌。

そして10:44あたりからチャイムのような音から始まり、クラリネットが鳴り、なんだかこれだけでもすごい感動的な映画でも観ているような気分になるのに、その後ろでバイオリンがキュルキュルと演奏しているのがすごい独特。そしてそこに残りの弦楽器たちが11:22あたりからピチカートで演奏していて、私もう悶絶しちゃって大変ですー!

13:00からは幻想的なアニメーションや映画に似合いそうな感じで、そのまま14:10になると第三楽章の目玉ですね。ど迫力の演奏の中、Benちゃんの14:20からのピ・ア・ノ!!!!!!!! 14:50あたりからのシャリシャリーンとか……ああ、もう本当にキリがないので、この曲についてはこの辺で黙ります。本気出したら、この曲についてだけで記事がひとつできそう。

でも今は動画を観ながら確認して解説してますけど、生で聴いたときは本当にただただ純粋に感動しましたよ。なんてったってBenちゃんが終始真剣にピアノ弾いてるし、オーケストラの演奏はすごい迫力だし、あまりに素晴らしくて、「こんな私がこんな素晴らしいものを聴かせてもらっちゃうなんて、ほんとごめんなさい」って思っちゃったくらいです。

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Photo credit by Kayoko Yamamoto via Billboard Japan

 

お次の曲は、『Steven’s Last Night in Town』でした。この曲はバイオリンの演奏がよくマッチしていましたね。特にイントロ。ノリのいい曲なので、さっきまでのピアノ協奏曲での厳粛なムードとは違っていつものロックコンサート的な雰囲気に戻りました。そして第一部が終了。休憩を挟んで第二部へ。

第二部もあっさりした感じでオーケストラの皆さんとBenちゃんが出てきて、再びチューニングをしてから一曲目の『Effington』へ。第一部の一曲目の『Zak and Sara』同様、この曲は程よいポップ感が心地よいので、一曲目にピッタリですよね。

不思議なのが、どの曲もこうやってオーケストラで聴くと「あれ? この曲ってオリジナルもオーケストラだったっけ?」って一瞬分からなくなっちゃうくらい、Benちゃんの楽曲にはあまりにも自然にオーケストラ演奏が馴染むのです。この次の『Landed』然り。それから『Cigarette』の一番だけをピアノ一本の弾き語りでしっとりと歌いあげ、そのまま『Fred Jones, Part 2』で再びフルオーケストラ演奏。続いて『Gracie』と、しっとりとした曲が続きました。そろそろBenちゃん喉がつらそうだった。お水もっと飲んで!

そしてそして、今回もやってくれました、『Not The Same』!! いつものように3つのパートに分かれて「あ~あ~」とハーモニーを客席みんなで練習してから曲スタート! 弦楽器と木管楽器の美しいコントラストが繰り広げるイントロに感動しつつ、ハーモニーを任されているお客さんもみんなすごい集中。

指揮者の方がオーケストラの指揮をやるのを背中に、Benちゃんは客席に向かって指揮をとる。背中合わせになった指揮者2人の姿だけでもかなり笑える(笑) そしてBenちゃんが両手を広げ、それに合わせてみんなで「あ~あ~」とハモる。相変わらずお客さんのハーモニーがキレイ。さすがBenちゃんのファン!

この下の写真は、『Not The Same』でBenちゃんが観客に対して指揮をしているところです。Benちゃんが手を下げると低い「あ~」で、手を上げると高い「あ~」 になるんだけど、例によって曲の後半でふざけて手を上げたり下げたり激しく遊ばれて、超楽しかったです。

あ~↑ あ~↓ あ↑? あ↓? あ~↑? みたいな(爆)

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Photo credit by Kayoko Yamamoto via Billboard Japan

 

↓ こちらの動画は5年前にシアトルで行なわれた公演での『Not The Same』です。古い映像ですが、やってることは同じですので、ご参考までにどうぞ。

 

最後は『One Angry Dwarf and 200 Solemn Faces』でした。この曲はめっちゃノリノリなので、指揮者さんも何度が指揮しながら跳ねちゃってました。跳ねるように、ではなく本当に空中に浮いちゃってました。曲が盛り上がるところで「ピョン!」って。クラシックの指揮者でもノリノリな曲のときジャンプするんだっていう、新たな発見ができたのが良かった。全身の身振り手振りの動きもこれまでの曲にないくらい大きくて、指揮者さんを見てるのが一番気持ちが盛り上がりました。

会場もBunkamura オーチャードホールですし、フルオーケストラ演奏ですし、これまでずっと観客も着席して音楽を聴いていたのですが、さすがにこの曲では立つ人もチラホラいて、座ってるお客さんも手拍子して身体を揺らして、ロックコンサートっぽくなりました。大いに盛り上がって最後はスタンディング・オベーション。曲が終わったあとは客席全員が立ち上がって、盛大な拍手とヒューヒューという声が響き、感動的でした。

↓ こちらの動画はアメリカのアトランタ公演のときの模様です。オーケストラなのにロックになっちゃってる様子を感じてみてください!

そしてアンコール。やはりこの曲は外せないですね。最後に届けてくれたのは、Ben Folds Five時代の代表曲『Brick』でした。もう17年前の曲なのに、いつ聴いても色褪せない。生で聴くたび涙が出てくる曲です。Benちゃんは変な歌もいっぱい歌うし、それこそ汚い言葉や変人としか思えない表現も多いし、発想が奇抜で独創的すぎて、自分の身に起こったあらゆるハプニングも自虐ネタにして曲にして……そんな人ですが、一方でこういう曲も書くのです。

「Brick」とはそのまま「レンガ」という意味で、Benちゃんの高校生の時の彼女を指しています。「彼女はレンガのように重く、僕は少しずつ溺れていく」という歌詞です。でも、「恋愛に溺れる」という意味ではないのです。クリスマスの翌朝、親に内緒で中絶しに行く道のりで互いの心が離れていることに気づき、彼女という存在の重みで自分の心が闇に溺れていった、という思い出です。数週間経っても彼女の体調が戻らず、彼女の親から「息子よ、いい加減に真実を話してくれ」と言われ、彼女が泣き崩れた。僕も泣き崩れた。僕はもう嘘をつくことに疲れたんだ……。そういった歌詞です。

ここでは中絶の是非、一番傷ついたのは誰なのか、そういうことは語りません。Ben Foldsがこの曲で伝えたかったのは、自分の体験したつらい出来事。背負った傷。背負わせた傷。そういうことがあったんだっていう事実。せっかくの代表曲なので、知らない人のためにオリジナルのミュージックビデオを貼りますね。歌詞もですが、普通にメロディだけでも泣ける名曲です。

 

あれ? なんだか途中まで楽しいレポだったのに、これじゃあすっごいしんみりと締めくくることになっちゃう!

ちなみに『Brick』に関しては、去年Ben Folds Fiveとして3人でやったバージョンが一番感動的でした。オーケストラバージョンももちろん素晴らしかったけど、やはりオリジナルのメンバーが奏でる音色は格別ですね。

最後の最後にしんみりさせるは、去年のステージのほうが良かったとか書くわ、ちょっと変な流れになってしまいましたが……。今回は時間の都合上、1日しか参戦できなかったのが悔やまれます。お金と時間に余裕さえあれば、Ben Folds大先生とともに日本ツアーをいつか回ってみたいのですが(ただの追っかけ)。なんだかんだ2年に1回くらいは来日してくれているので、次回こそ必ず!

Ben Foldsはロックンローラーでありながら、ジャズ、ポップ、クラシックにも堪能で、ひとつのジャンルに縛られることなくあらゆる音楽のよい要素を貪欲に取り入れて、Ben Folds独自のオリジナルサウンドを生み出した人。Benちゃんにタブーはない。とんでもなく汚い歌詞が並び立てられたヒップホップ・ソングだって、そのままの歌詞で美しいバラードにリメイクしちゃう!(参考:『Bitches Ain’t Shit』)

ピアノもドラムもギターもベースも極上の腕前で、作詞・作曲の能力にも長けていて、アイディアも奇想天外で、シュールなジョークを連発して、ファン思いで、20年ずっと走り続けている素晴らしいミュージシャン。真のアーティスト。こうして遠いアメリカから頻繁に日本にライブをしに来てくれて、いつも違った内容で驚きと感動を与えてくれる。今回は東京スターオーケストラさんとの共演により、クラシックの素晴らしさを久々に感じることができました。

音楽って最高! Benちゃんって最高! よっ、天才!

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Photo credit by Kayoko Yamamoto via Billboard Japan

 


Sakiko Torii
About Sakiko Torii
BLOOMINT MUSICの運営者である鳥居咲子は、幼少期よりピアノと音楽理論を学び、ロンドンに音楽留学をした。現在は音楽記事の執筆、ライブ主催、楽曲リリースのコーディネート、メディア出演など、韓国ヒップホップに関する様々な活動を展開している。著書に『ヒップホップコリア』。音楽以外に関するネタを集めた趣味ブログ『BLOOMINT DIARY』も運営中。別名ヴィヴィアン。
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