レポート/Björk – バイオフィリア・ライブ (映画)

Written By Sakiko Torii

biophilia

10月10日、Björk(ビョーク)のバイオフィリア・ライブ(映画)を観てきました!

去年開催された来日公演は、どんなにがんばってもチケットが全然取れなかったんです。料金が1枚2万円以上という高額だったんだけど、それでもものすごい争奪戦で。実際内容的には5万円払ってもいいんじゃないかってレベルだったし、そもそも世界で数カ国だけの限られた開催だったし、キャパも800人という小さな会場だったし、プレミア感が半端ないわけです。そりゃ争奪戦にもなるわ。最終的には10万円とかでオークションに出ていたというウワサ……。

今回、そのライブが映画化されて一夜限りの上映がかなったわけですが、またもやチケットが全然取れなくて。落選メールを見た時は完全に白目になりました。だけど盛大にふてくされていたところ、行けなくなった方が手放したリセールチケットを手に入れることができて、行けることになりました!

で、観てきた感想ですが、一言で言うと「ザ・芸術」って感じ。「音」というものが持つ芸術性を最大限に生かした感じとでもいいますか。ビョークの声も、数々の楽器も、クワイヤーのハーモニーも何もかもがアートであり、普段聴いている商業音楽とはひと味もふた味も違う。何よりビョークの声量のすごいこと。声質が繊細でありながら、力強くてすごい迫力。火山の噴火を思わせるヘアスタイルをしたビョークですが、歌声もまるで火山が噴火しているかのようなパワーでした。

そしてクワイヤーのクオリティの高さったら!  めっちゃ複雑なリズムとハーモニーが満載だったんだけど、一体どれだけ音感がいいんだろうか。しかも20人くらいいるの。20人の声が作り出すハーモニーが宗教音楽のようで幻想的だった。恐るべしアイスランド。

ドラムの腕前もすごかった。あの独特なビート、ときどき異常に早くなったりもするのに、自由自在に叩いててお口ポカーンだった。恐るべしアイスランド(2回目)

やっぱりこのアイスランドという氷河や火山など豊かな大自然で育った人たちは、ほかの先進国出身の人間とは違う感性を持っているのでしょうか。人口の少ない国なのに、妙に音楽的に優れた人が多くて不思議……と思って調べてみたら、驚愕の事実を発見。アイスランドは国全体の人口が約30万人ということで、ちょうど東京都の新宿区と同じくらいの人口しかいないんです。にも関わらず、なんと音楽学校が90校、オーケストラは400以上もあるそうです。恐るべ(ry

普通のコンサートではお目にかかれないような楽器もたくさん出てきました。巨大オルゴールも出てきたんだけど、15年ほど前にベルギーのブルージュに行ったとき、鐘楼の中で見た巨大なオルゴールを思い出しました。

ブルージュのオルゴール ↓
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
画像検索で出てきた画像をこちらよりお借りしました。

 

ほかにも見たこともない謎の楽器がいろいろ出てきたので、ちょっと調べてみました。たとえば「ガムレステ」というオルガン。これは鍵盤楽器の「チェレスタ」と、インドネシアの民族音楽「ガムラン」を掛け合わせたもので、オルガンの構造を持ちながらガムランの音を鳴らすのだとか。アイスランドのオルガン製作師が、今回のライブのために製作したそうです。

ガムレステ ↓

 

円盤状になったスチールドラムは、「ハングドラム」といって1999年にスイスで開発されたものだそうです。ドラムごとに異なる音程にチューニングされているそうです。音はスチールドラムと似ていますが、スチールドラムよりもこもっていて、響き方が硬いです。

ハングドラム ↓

 

大きな振り子のような楽器は、重力によって音を出す「グラビティ・ハープ(重力ハープ)」というものだそう。これは高さ3メートルにもなる振り子の形をしたハープで、振り子が揺れるたびに弦が引かれてメロディを奏でるという構造なんだとか。地球の自転を証明した「フーコーの振り子」からアイデアを得たそうです。

グラビティ・ハープ(重力ハープ) ↓

 

稲妻を発生させる「シンギング・テスラコイル」という装置もすごかったです。これはアルミ製のケージに入った超高圧の変圧器なのですが、タッチスクリーンを操作すると長さ1.5メートルの稲妻が表れて、そこから発生する音が音階を奏でるというもの。ビヨーンという強烈な電子音が鳴り響きます。

シンギング・テスラコイル ↓

 

稲妻発生装置とか重力ハープとか、なんかすごいことになってるけど、そもそもこのバイオフィリア・ライブのコンセプトは「最先端のテクノロジーと音楽、自然科学を融合させるマルチメディアプロジェクト」なんです。だから日本公演も、通常のコンサート会場ではなく「日本科学未来館」で行われました。

映像効果も満載で、会場全体に広がるスクリーンに映し出される火山、宇宙、生物、細胞などの映像がサイケデリックで、色彩のせいか、数年前に美術館で観た小谷元彦さんの『ロンパース』という映像作品を突然思い出しました。

そんなこんなで、天井いっぱいに広がる空の映像、宇宙や生命を思われる映像に圧倒されながら、音楽は音楽で「ビヨーーーーン」って電子音が破裂しまくって、ドラムが猛烈に「ドコドコドコドコドコドコドン」ってなって、クワイヤーがものすごい不協和音で「はーあーあーあー」って美しく歌ってたら続いてビョークが「ふああぁーーーーーんっ!」てすごい声量で唸る。で、曲が終わるたびに圧倒されてポカーンってなるんだけど、毎回ビョークが異常に可愛いトーンで「センキュー」って言うの。一曲終わるたびに必ず言うの。そのたび和むの。

あとビョークってこんなに「R」の発音が強かったっけ? 英語なのにアイスランド語かと思ったくらい、歌もトークもグルルルルルルッて「R」が巻かれてて、それがまたスウィートでした。

ここまで書いた説明を踏まえて、バイオフィリア・ライブのトレーラー映像をご覧下さい。何の説明もなしに観るより、イメージが浮かびやすくなったのではないかしら?

 

ね? 「最先端のテクノロジーと音楽、自然科学を融合させるマルチメディアプロジェクト」というコンセプトの通りでしょ? かつ、「ザ・芸術」って感じでしょ?

ビョークの生み出す世界観ってサイケデリックといっても病的な要素は感じられず、生命の強さや宇宙の途方もない壮大さを感じさせるところがすごいんだけど、そういうところが手塚治虫の『火の鳥』の世界観と似てるなーと思いました。太古と未来がシンクロするところとか。そうやって考えると、ビョークの代表曲のひとつである『All is full of love』のミュージックビデオも手塚治虫っぽいんですよね。こちらは『鉄腕アトム』も思い起こさせる。

アトムってアニメの印象だと正義のヒーローみたいなイメージかもしれないけど、原作のアトムは可哀想な子なんですよね。科学技術がもたらした悲劇、ロボットであるがために得られない本物の愛、欲にまみれた人間によって傷つけられる幼いロボット……。『火の鳥』にもロボットと人間の愛が描かれている作品もちょいちょいあるのですが、とにかくそういった手塚治虫の世界観を彷彿とさせるミュージックビデオだなーと思います。

『All is full of love』のミュージックビデオ ↓

 

太古、大自然、宇宙、生命、細胞、科学、音、映像、それらすべてが織りなすビョークだけの世界。これは本当に生で体験したかったと心底思いました。映画館だと演出のおいしいところを逃さずに観れるのが魅力的ですけどね。

生命とか自然の偉大さを改めて感じて、大好きな手塚治虫作品の世界観との共通点も見出して、ビョークを一番よく聴いていた12~3年前の自分のことを色々と思い出して、初めて見る楽器に興奮し、音楽に感動し、映像に圧倒され、心が大きく揺り動かされた時間でした。

まあ世界中探してもこんな奇才はそうそういないですよね。ビョークの才能にただただ感服です。こんな素晴らしい映像がたった1日の限定上映だなんて……! と思ったら、あまりにチケットが入手困難で問い合わせが殺到したため、池袋と川崎でのみ上映期間を延長したそうです! わーお! 場所も時間も限られてるけど、行けそうな人はぜひ!

シネ・リーブル池袋オンラインチケット
TOHOシネマズ川崎

 

writerSakiko Torii

BLOOMINT MUSICの運営者。韓国ヒップホップ・キュレーターとして執筆、ライヴ主催、音源/MV制作サポート、メディア出演など多方面に活躍中。イギリスに音楽留学していた本格派。著書に『ヒップホップコリア』。



Sponsored Link

Related

/

Access Top

/

Subscribe us!

BLOOMINT MUSICの最新情報をお届けします。

友だちに追加

Sponsored Link