Interview | Huckleberry P - gOld by HIPHOPPLAYA


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10年以上ラップをしてきて出した初めてのアルバムです。お気持ちはいかがですか?

まったく何の感情もなかったです。今までCDとしてリリースしたアルバムが7~8枚ぐらいあるので、過去のアルバムと同じ感じで、別に特別な感情を持つことはできませんでした。だけどファースト・ソロアルバムというタイトルをつけてみたら、準備をする上での心構えも変わってきて、リリースされてから気持ちが一番すっとしました。すべての創作者たちがそうであるように、僕も当然ながらアルバムを出した後で後悔したり惜しんだりする部分もありますが、そういった部分が最も少ないアルバムになったと思います。

 

爽快ですね。

はい。恐らく時期がもう少し遅れていたら、むしろグンと遅くなっていたような気がしますよ。時期が今じゃなかったら難しかったでしょう。個人的にもちょうど適切な時期に出せたと思います。

 

すでに何度か話していますが、もう一度お伺いします。今回のアルバムは、音源サイトを通したストリーミングサービスや、定額制を通したダウンロード購入ができません。別名「制限的音源サービス」となっていますが、これを選択した理由をお聞かせください。

HIPHOPPLAYA RADIO(※1)を聴いていた方はご存知かと思いますが、もう一度説明します。定額制を利用して音源を聴いた場合、アーティストに入る収益分配率が異常な状態になっているのが実情ですが、そんなことをいくら言ったところで何も変わりません。なぜなら音源会社にも利益があるし、サービスを利用する側の人々にとってはそのほうが便利だからです。だから、それが不当であることを知らずにいる人々に対して、とにかく認識を変えさせなければならないと思うんですよ。そのきっかけとなったのが、HIPHOPPLAYA RADIOに出演してくださった音楽著作権協会のジョン・ユリム本部長の「人々の意識が変わらなければならない」という言葉です。だけど人々は今のシステムに慣れてしまっていて、何が間違っているのか、だから悪いとか良いとかそういう概念から離れていて、なぜこれが不当なのかが分からないんです。僕はG-Dragonのように影響力の大きな人間ではありませんが、僕が与えることのできる影響力の範囲内で、間違った部分を一度認識させたかったんです。もちろんそんなことをしたって「俺にはよく分からない、そんなふうにする理由がよく分からないしストリーミングが楽なのに、お前がそうするからって俺があえて個別にダウンロードしなきゃいけないのかよ?」という人もいるでしょうし、そういうタイプの人々まですべて引っ張っていくのは不可能でしょうし、正直そうしたいとも考えてはいなかったんです。ただ、僕がこうする理由について「一度だけよく考えてください」という意味でこういった選択をすることになり、その決定的なきっかけをくれたのがジョン・ユリム本部長とB-Freeなんですよね。B-Freeも『희망(希望)』というアルバムを発表したときにこの方法を選択しましたが、その動きが本当にかっこ良くて。実際にその動きのおかげで変わった部分があったんですよ。だからこの方法を選択しました。僕はいつもこう言っています。みんなが闘士になる必要はないと。ミュージシャンが100人いたら、100人全員がこれを拒否して闘争する必要はないと思います。各自の価値観に沿ったものですが、誰かがやらなければいけないことだとすれば僕が適任じゃないかと思いました。以前「Stop Dumping Music」(※2)のイベントにも行って、現在のお粗末な状態について言及しまくったでしょう。だけど今のそういったシステムに便乗しておきながら、そんな話をするのは少し矛盾していないかという思いもあったし、ファーストアルバムであるだけに、もう少しそういった方面に意味を置きたかったんです。良いアルバムを作る一つ目の条件は当然良いコンテンツであり、二つ目は態度だと思います。特にヒップホップ文化の中で生成されたアルバムは、この文化特有の音楽的な態度を重要視するでしょう。そういったことを推し量ってみて、僕のアルバムをより特別なものに作り上げたかったんです。実際は「制限的音源サービス」とすることで生じる金銭的な損失は、ものすごいレベルです。僕は音楽だけで生活をしていますが、それにも関わらずこの選択をしたということ自体、今のこのシステムがどれだけ不当であるかということについて人々が少し考えてくれたらいいですね。思っていたよりも僕の気持ちが伝わったようです。アルバムを購入してくれた方が多くて、本当にありがたいですし、このような決定をサポートしてくれたHI-LITEにもとても感謝しています。

※1 HIPHOPPLAYA RADIO:Huckleberry PとB-FreeがMCを務める『수요일밤(水曜日の夜)』というインターネットラジオ番組。韓国ヒップホップの総合情報サイト「HIPHOPPLAYA」(このインタビューをやっているサイト)が運営している番組。過去の放送はこちらで観れます → http://www.ustream.tv/channel/hiphopplaya

※2 Stop Dumping Music(https://www.facebook.com/stopdumping):2012年に韓国ソウルにて開かれた「オンライン音楽業界の正常化のための音楽フェスティバル」というイベントで掲げられたスローガン。音楽制作者に公正な対価が支払われなかったり、無制限のストリーミング・サービスや過度な割引価格で提供されるダウンロード・サービスによって受ける被害について、政策判断や消費者の意識改革を促したキャンペーン。このイベントに多くのミュージシャンが集結し、現状を訴えた。その当時、韓国ヒップホップ・アーティストの間でこのネタが熱かったということもあり、当時私が書いたこんな記事もあるので良かったらご参考にどうぞ → 「Column | 音源販売価格と著作権料

※後日追記:同テーマで後日に別記事を更新したので貼っておきます → 「Column | 韓国の音源ストリーミング収益額について by 中央日報

 

アルバムがリリースされたほぼ同時期にSinawe(※3)のメンバーであるシン・デチョルさんが現在の音楽市場に対して指摘した文章をFacebookで公開しましたよね。これについてはどうお考えですか?

一緒に住んでいる20年来の友人とそんな話をよくします。その友人は音楽の枠の外にいる人なのに、そんな話をしますよ。「音楽をやる人々はひとつにまとまらないようだ。本来であれば今のように不当だと感じるなら、当然みんなが団結して話し合って、システムに対して集団ボイコットをすればいいんじゃないか?」と言います。この部分について、僕はある程度同意します。「Stop Dumping Music」が最初に始まったとき、僕には本当に励みでした。始まってから半分であんなに集まったこと自体、本当に意味のあることなんです。だけどあの後もう少し進めなければならなかったのに、ちょっと竜頭蛇尾になってしまいました。その点については残念に思っています。シン・デチョルさんがされた話については全面的に同感です。ミュージシャン同士が団結した組合が必要だと思います。これがないから、政府や力のある大企業たちはミュージシャンたちが今のシステムに対して大きな不満がないと考えているようです。僕やB-Freeのようにシステムに反対しているほうが極めて稀でしょう。実際に有名な歌手はやらないですし、やる理由もないですよね。彼らはああやってお金を儲けているから、こういったことに対して何も考えずに生きているんだなあと思えます。そんな思いを変えるためにも、もっと団結しないといけないと思います。

※3 Sinawe(シナウィ):1986年にデビューした韓国のロックバンド。これまで数え切れないほどメンバーが交代してきているが、その多くがのちに大物ミュージシャンとなっている

 

先ほどおっしゃったように、「制限的音源サービス」を選択すると金銭的な損害に加えてしっかりとした広報がされず、聴いてくれる人も減ることになり得ます。明らかにそういったことは予想できたはずですが、それについて負担はありませんでしたか?

負担はありましたよ。 ご存知かどうか分かりませんが、「制限的音源サービス」を選択すると、すべての音源サイトでトップページに載ることができません。だから実際、僕のアルバムが出たということを知るルートが限定されてしまいます。 だから負担がないことはなかったです。もしこれがPinodyneのアルバムだったらできなかったでしょう。 僕ひとりのチームではないし、正直Pinodyneの音源収入は僕が生活する上で大きな部分を占めています。だからある意味、負担だったという気持ちは半々ですね。音源収益がグンと減るという面では負担があったし、これは僕ひとりだけの問題ではなく、会社であるHI-LITEにも影響のあることです。 当然会社なので利益を出さなければならないし、そのために僕のアルバムに投資をしたのに、僕がそうはしないと言ったじゃないですか。 だから埋め合わせをしなければならない金銭的な部分に対する負担はあるのですが、僕がこのやり方を選択できた理由は、ライブやアルバムの販売に対して自信があったからなんです。とにかく僕は音楽活動をしてマイナスになった部分をカバーしなければならないのですが、僕にはそれを短時間で行うことができる自信があったんですよ。そしてこのやり方を選択ができた決定的な理由は、「制限的音源サービス」を選択しても音源サイトに登録することができるということを、B-Freeのときのような一連の出来事で知ったからなんです。

 

おっしゃるとおり、会社に不利益となる可能性がある決定ですが、会社は無条件に賛成してサポートしてくれたんですか?

無条件に賛成とまではいかなかったし、最初にB-Freeがその決定をしたときもPaloalto兄さんが強く引き止めていました。Paloalto兄さんは会社を成長させようとする社長の立場ですからね。だけど今回の僕のときは大きく反対はしなかったです。ただ「お前の収入が減るということだ。それぐらいは覚えておけ。だけどこういう動き自体は俺もかっこいいと思う」と言ってくれました。HI-LITEが許可してくれなかったら、できなかったでしょう。

 

このような選択が、会社の方針ではなく各ミュージシャン個人の考えなのですか?

はい。そうでなくてもB-Freeの場合はあまりにも自分の主観がはっきりしていて、そういった自分の考えをみんなで一緒にして欲しいという考えを強く持っています。だから僕のアルバムが出る前、HI-LITEの会議のときに「HI-LITEは全員同じようにしたらいいだろう」と言っていたこともあります。でもその選択は、各ミュージシャンが決定することにしたんです。さっきも言ったように、全員が闘士になる必要はないし、価値観もみんな違って、考え方も違うので、やりたいミュージシャンだけがやればいいことです。今このような考え方を持っているミュージシャンは、B-Freeと僕ぐらいですよ。

 

何度もおっしゃっているように、人々の認識も変わなければならないし、一番大きな問題であるシステムが良い方向に変わらなければなりません。しかし、もし今と大きく変わることがなかった場合は、それ以降もこのような方法を固守するのでしょうか?

はい。僕は固守します。SNSでもそう話しました。システムがいくら岩のように丈夫でも、僕は卵よりも強いみたいです。だから、卵に岩をぶつける(※4)ことにはならないようです。やってみれば変わりますが、これが僕のラインで変わることはないでしょう。当然時間がかかる問題ですが、それでもこのような動きをする理由があります。僕がいつも歌詞に書いて強調している言葉があります。次の世代のために重要なのに、もし僕たちの世代で教育的に不満があって、人々がメディアに対する不満があるなら、それは前の世代から変わらなかったからだと思います。今、この音源システムのために僕たちがやいのやいのやっているのも、上の世代で変えられなかったからこれを当然だと考えるようになって、不当だと思いながらもこのような形でアプローチできなかったという面もあります。今はB-Freeと僕、それとOkasian、このように少人数ですが、次の世代ではそれより大きくなるだろうということです​。僕たちがやらなければ、次の世代で僕のような人が、そのまた次の世代のひとり、ふたりが苦労するでしょう。次の世代で変えようとするには、僕が今やらなければならないということです​​。冗談でこんな言葉があるじゃないですか。「自分の子供が音楽をやると言ったら止めるだろう」多くのミュージシャンはこう言うじゃないですか。なぜか? 才能の問題もありますが、システム的に収入がない構造だからです。もし僕の子供に才能があって、音楽がやりたいのにシステムのせいでそれが阻まれるなら、それはとても悲しいことだと思います。次の世代に僕達が経験した悪いことを相続されてはダメじゃないですか。僕たちは何とか変えようとする動きをしないと。それが重要だと思います。すべての面でその態度が重要だと思います。

※4 卵を岩にぶつける:韓国のことわざ。利益どころか損害にしかならないような愚かなことを称する言葉。またはとても勝ち目がない場合に、無駄な抵抗をするという意味(卵を岩にぶつけても、岩はびくともせずに卵が割れるだけなので、やっても無駄という意味)

 

分かりました。音楽市場が変化し、消費者の考えも変わってくると思います。歌手のイ・スンファンさんがテレビで「音楽が所有の概念から保存の概念に、そして今では消費の概念に変わったようだ」とおっしゃっていました。個人的に、この部分はストリーミングと呼ばれるサービスのせいではないかと思います。収益や利便性、このような部分のすべてがとにかくストリーミング中心の市場に変わり、アルバムの価値が変わったように見えます。その部分についてはどう思いますか?

時代の流れは誰にも止めることができないと思います。時代の流れが変わる理由は、人間には常に便利になろうとする意志があるからだと思います。だからマシンを作って、より便利でより良い生活のために生きていきます。ストリーミング市場に移ることは絶対に防ぐことができないし、今後、当然アルバムは無くなるでしょう。それは時代の流れなので不満はありません。僕もストリーミングが便利なことはよく分かっています。だけど今もLPを買う人がいるでしょう。そういったバランスだと思います。均衡美が5対5になる必要もないと思います。引き続き古いものの端っこを握っている人々の需要がある程度あれば、流れに沿って変化するよう放っておいて、その端っこの最後のロマンを持っている人同士で楽しめば良いです。それなりに楽しみがあれば大きな不満もなく、当然のことだと考えます。そしてその当たり前の中で、小さな何かをしたときの楽しさ、自分は違うという感じとか、それが本当に良いと思います。だから人々はヒップホップが好きなんだと思います。今は以前よりも多くのヒップホップが知られていますが、それにも関わらず、僕が高校生だったとして、学校で「俺はヒップホップが好きだ」と言ってもすごく少数派じゃないですか。だけど何か特別さというものがあります。特に僕たちの世代がそうだったし、ヒップホップが好きな人すべてにそういった特別さがあったと思います。だからシステムがアルバムからのストリーミングに変わっているといっても、CDを買って聴くんです。そんな楽しさを知っている人はずっと楽しんでいくでしょう。だからまあ大きな不満もありません。

 

今回のアルバム自体、古いことに対する賛美的な感性が込められているじゃないですか。私もそうだし、Huckleberry Pさんもそうだし、ヒップホップ音楽が好きだと、CD一枚が大切じゃないですか。歌詞にもよく出てくるように、給食費を集めてCDを買い、アルバムブックレットが摩耗するくらい読んで。だけど市場が変化して、そのような文化が失われていくと思います。アルバムは単純に音源だけで終わるのではなく、アルバムの中に含まれているブックレットなど、その諸々が含まれたものとして出てくるじゃないですか。そのような部分についての物足りなさはないですか?

これも、人々がなぜこれがかっこいいのかが全く分からないんです。なぜかと言うと、そのようなものにロマンを感じることができる俺、というものがあるようです。思春期に触れた文化や音楽は、本当に長く持つじゃないですか。人によっては一生追い続けたりもして。僕たちの世代は当然CDを初めて取り外したときの感覚や、臭いのようなものがみんな残っていて、まだこれにロマンがありますが、最近の高校生は知らないでしょう。だから彼らに「これがマジでクソかっこいいんだよ。あと、これもマジで」と言いたいという思いはありません。そんなこともなく、ただ「僕の時代のかっこ良さとはこういうものだった」という程度を知らせるのが僕の役割ではないかと思います。だから、そのような部分に対して大きく惜しい部分は正直ありません。

 

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話題を少し変えてみましょう。去年のPinodyneのセカンドアルバム『PINOcchio』をはじめ、HI-LITEのコンピレーション・アルバム『HI-LIFE』、Get Backersの『Old Boy』、それから今回のソロアルバムまで、本当に休むことなく作業を続けて来られました。休まずに活動した理由や原動力はありますか?

まず、HI-LITEの雰囲気自体がそうです。みんなとても上手だし、一生懸命です。そうでないといけないような感じさえさせられるので。「お前もがんばらないとダメだ」とあえて話はしませんが、みんなががんばってやってるから僕もじっとしていられなくなるんです。前にラジオでも話しましたが、今は活発に活動しているADVクルーを僕が辞めることになった理由がそれでした。あの当時はそういった力やエネルギーがなかったので、お互いの相乗効果もなかったんです。だけどHI-LITEはそこがとてもうまくいっている会社です。ほかの会社も同じだと思いますが、僕から見るとHI-LITEのエネルギーは特別だと思います。

 

では、これらもたくさんの作品を出していくのですね?

はい、そうだと思います。将来について断言はできませんが、僕のやっている作業はPinodyneのセカンドアルバムから始まっていて、正直熱心と言えるかよく分からないです。周りから見てそれが熱心だと言えるなら、ずっとそのように感じていただけると思います。

 

本当に熱心にやったら大騒ぎが起こりますね(笑)

考えておいたことが以前よりも遥かに多いので、やりたかったことも多いです。年末に自分がやったことを振り返ってみると、「まあ半分実現できたなら悪くないな」と思うほどですからね。そう考えてみると分からないです。僕はがんばったつもりはありません。楽しんでやったというほうが合っています。僕は生まれつき熱心に何かをすることができない人間です。楽しくなければできないです。音楽は楽しいからできるんでしょう。

 

今が楽しい時期真っ盛りですね。

はい、楽しいです。僕が音楽をやる中で、一度だけ大きなスランプが来たことがありますが、それだけ除いて今までずっとラップをすることが一番楽しいです。

 

Rap Badr Hari (MV)

 

今回のアルバムに収録されている『Rap Badr Hari』という曲は、2012年にシングルで出しました。もしかしてこの頃からアルバムの制作を開始していたのですか?

そうではありません。実際にはそのせいでちょっと悩みました。これは2年前の曲ですが、どう考えても『Rap Badr Hari』を僕のフルアルバムから抜くわけにはいかないと思ったし、周りにもアドバイスを求めたら当然入れるべきだと言われたので入れました。そして『P.T.F』もリミックスで入れたのには理由があります。アルバム自体は絶版になりましたが、特定の曲以外はいわゆる埋葬されたようになった気がします。この曲で伝えているメッセージと歌詞が気に入っているんですよ。あと『gOld』の流れにおいて必要なストーリーだったので、無条件に入れなければならないと思いました。それで入れたんです。アルバムは『Rap Badr Hari』を作業したとき作っていたわけではないですが、常に『Gold』というタイトルは頭の中にありました。「ファーストアルバムを出すなら、ゴールドにしたらかっこいいな」と考えていました。アルバムの作業を正式に開始したのは、Pinodyneのセカンドアルバムをリリースしてしばらく休んでいたときだと思います。去年の夏頃から。

 

今お話しになった『Rap Badr Hari』以外に、先行公開されたシングルはありません。 あと、今回のアルバムにはミュージックビデオがまだないです。理由はありますか?

ミュージックビデオの話から先にすると、HI-LITEは本当に映像制作に優れていると思います。その中心にいる、特にAugust FrogsとJanQuiという仲間の話をしないわけにはいかないでしょう。映像面で最も素晴らしい人たちだと思います。そっち方面の方々とかなり上手にコミュニケーションをとって、音楽に合わせた素晴らしい映像をたくさん抜き出すじゃないですか。そういった映像はミュージシャンのアイディアが支配的なのか、それともミュージックビデオの監督のアイディアが支配的なのかはよく分かりませんが、僕は実際に映像に対して強い欲がありません。今回のアルバムの作業中も当然撮影しなければならないと思っていましたが、そのような考え方がますます激しくなって、こんなふうに撮影してもいいものはできないだろうという気がしたんです。だからやめました。簡単に言えば、かっこ悪いことだと思います……。ただ撮るのも意味がなさそうでかっこ悪いと思って……。シングルも同じです。先行公開曲についてもPinodyneをやったことでできたクセですし、元々持っている先天的なクセだとも言えますが。アルバムの流れ自体をとても重要視するほうです。Pinodyneでも、テーマは異なるにしても聴いたときに曲の流れのような部分に多くの神経を注いでいます。『gOld』も同じです。アルバムの収録曲の一曲が、僕のアルバムを代表することはできないと思います。特に今回の『gOld』はそんな感じなので、先行公開曲なしでアルバムを発表しました。ただそのままアルバム丸ごとを聴いたときの感じを持ってくれればいいですね。僕が目指す部分を入れたアルバムの色、そして僕が一番好んでたくさん聴いていた時代を照らしてみたとき、その時代も先行公開のようなものは多くなかったんですよ。CDをケースから取り外して聴いた一曲目が、僕がそのアルバムを聴く上で初めて聴く曲でした。そうやって最初の曲を聴き始めたら、あとは世の中と断絶されて最後の曲が終わるときまで何からも邪魔されずに、歌詞カードを広げて、その宇宙の中に生きて、アルバムが終わったらケースを閉じてまた自分の世界に戻ってきていました。今はストリーミングで音楽を聴いて、アルバム単位で聴く人も少なくなって。そんなことも感じさせたかったです。

 

では、良いアイディアが浮かんだらミュージックビデオを制作するのでしょうか?

はい、もちろん撮りたいです。Pinodyneの場合は特にそうですが、どうもテーマが特殊だし、ミュージックビデオを撮影したら楽しそうだと思う曲が前回のアルバムにも多かったし、これからもそうだと思います。Pinodyneはちょっと撮ってみたいけど、僕のソロ作品は分からないです。代わりに僕の「焚身(ぶんしん)」という単独公演を行うので、そこで目で見たとき、その曲をライブするのを見たとき、脳裏に焼きつくもののほうが遥かに強いだろうと思います。

 

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アルバムのタイトル『gOld』について話したいと思います。プレスリリースにも書いてありますが、アーティストの口からもう一度説明するとすれば。

今の時代はあまりにも急速に変わって、音源サイトのランキングも一日も経たないうちに変わる世の中で、昔のことに固執し続けるのは愚かなことかもしれませんが、僕は「昔のこと=古いこと」というような見方が嫌いです。「音楽は無条件に新鮮でなければならない」という意見もありますが、どんな意見も正解というものはなく、僕が常に話しているバランス。誰かは最新トレンドを持ってきて、常に新鮮さを維持してみせるかっこ良さがある、特にそういったことが上手な人がいます。これはミュージシャンに限らず、一般的に見ても誰もがそのようなタイプの人間ではないということです。確かに昔のことにより強い興味を感じる人もいて、僕もまたそのような人間なので、誰かはそのような人たちを代弁しなければならないのではないかと思います。トレンドをかっこ良く表現して体現する人たちがいるなら、反対の立場でバランスを合わせる人もいないといけないと思います。みんなが同じ方式だったらつまらないでしょう。だから『gOld』と書きました。古いものだけど、それは古いのではなく、ある人にとっては輝く瞬間だったわけで、今でも自分を一番輝かせるものであることもあるので『gOld』というタイトルを使いました。うまいタイトルをつけたと思います(笑) 自分で言っちゃうとちょっとXXだけど、うまくつけたと思います(笑)

 

本当にうまくつけたと思います(笑) アルバムのタイトルだけ見ると、90年代の黄金時代を標榜するサウンドでアルバムが構成されているのではないかと思いました。アルバムを聴いてみると、ものすごく一方的に傾いているわけでもありません。ビートのチョイスに重点を置いた部分もあるようですが。

それは完全にHI-LITEの影響です。『gOld』というアルバムを最初に企画した当時は、Boombap(※5)一色で作ろうと思っていたんです。そういうのが一番好きだったりして。だけど僕はHI-LITEの所属で、音楽を聴いたりライブをやったりして影響を受けているので、明らかに違う方面におもしろさを見つけたりもします。僕がHI-LITEの所属じゃなかったら『정신차려(しっかりしろ)』や『Peace & Love』のような歌詞を書くこともなかっただろうし、ああいう曲がおもしろいとは思いもしなかっただろうと思います。だけどこれがおもしろいのだということが分かるようになりました。経験して、触れ続けるから、それが自然に今回のアルバムに溶け込んだんだと思います。『gOld』というタイトルからすると、『DO !T』のような類のBPM(※6)はアルバムには相応しくないのですが、アルバムに入れた理由がまさにそれなんです。影響を受けた部分があるから、僕はそれを努めて否定したくも​​ありません。だけど最近、僕たちはいわゆるトラップ(※7)という類のイメージはあまりやらないようにしました。例えばSoriheda兄さんは代表的なソウル・サンプルや古い感性をうまく生かすプロデューサーですが、「サンプルの感じを持ってくるものの、最近こんな感じのビートやBPMが流行だから一度やってみよう」ってことで作ることになったのでしょう。HI-LITEから受けた影響がアルバムに溶け込みました。本当にものすごく大きな影響を受けました。音楽だけでなく、生き方の姿勢もそうです。B-Freeがいなかったら僕は「制限的音源サービス」を選択することもなかったでしょう。

※5 Boombap:ヒップホップ・ミュージックにおける古典的なスタイルのひとつで、「ブーンバッ!」というドラムの擬音語からできた言葉。シンセサイザーのドラムビートとは対照的に、アコースティックなドラムのループと強いスネアのビートが特徴。

※6 BPM:音楽におけるテンポのこと。Beats Per Minute(1分あたりのビート数)の略。もっと分かりやすく言うと、メトロノームのカチカチカチって速さのこと。あのカチカチが1分間で何回いうか=テンポ

※7 トラップ:2000年代にアメリカ南部で誕生したヒップホップの新ジャンル。2013年に韓国で大流行して、トラップばかりが次々にリリースされた。強いビートと電子音が特徴。詳しくは過去記事「Column | TK – Supreme Team『이릿(Eat it)』作業記」参照

 

今はトレンドがBoombapからトラップに移った分、トレンドの変化よりはHI-LITEに入って音楽的な変化があったということですね?

そうでしょう。僕は本来、HI-LITEに入る前には人から影響を受けるタイプではありませんでした。僕がおもしろいと思うことに最も重点を置いて生きる人間だったのに、HI-LITEに入ってそのような部分がたくさん変わったようです。

 

それなら逆にHI-LITEのメンバーがHuckleberry Pさんから影響を受けた部分もあるのですか?

正直、音楽的にはよく分からないです。前にもこのような話をしたことがあるのですが。ライブの面では確かに僕が影響を与えた部分があると思います。例えば僕がHI-LITEに入ってから最初にやったイベントがありました。確かオーシャン・ワールドでやったと思うのですが、そのとき僕とPaloalto兄さんとB-Free、DJ Djanga兄さんが行きました。3日ほど似たようなタイプのライブをするイベントだったのですが、僕が初日に普段どおり激しくやったら、翌日Paloalto兄さんとB-Freeがセットリストを変えたんですよ(笑) 「こんなもんじゃいけない……」といった感じで、全員がもっと激しくやることになって。僕もそれを見て「昨日より今日のほうが遥かにかっこいい、僕ももっと激しくやらなくちゃ」と思いましたよ。僕が思うに、HI-LITEは短時間でヒップホップシーンに刻印されたと思います。大きな要因を2つ挙げるなら、ひとつはミュージックビデオであり、もうひとつはライブだと思います。ミュージックビデオは、僕たちがかっこ良く撮る前にはこれほど物量攻勢(※8)はしなかったです。ライブも団体でやったときが一番かっこいいと思います。そのような部分で僕が助けになったと思います。

※8 物量攻勢:意図することを達成するために、莫大な労働力を動員したり、莫大なお金や物資を使うことを指す

 

お互いに力になる。

はい。お互いに影響を受けずにはいられないようです。

 

HIPHOPPLAYA SHOW 2013 VLOG – HI-LITE RECORDS

 

またアルバムの話に戻ります。アルバム全体にCut & Pasteが浮き彫りになったサンプリング手法の曲が目に飛び込んできます。サンプリングは良い手法ではありますが、最近になってサンプルクリア(※9)の問題が大きくなりましたよね。クリアはしましたか?

結論から言うと、サンプルクリアができなかったので、今回のアルバムに対する著作権登録は全部しませんでした。サンプルクリアはヒップホップがある以上、永遠に出てこざるを得ない問題だと思います。ぶっちゃけるとサンプルクリアには曲あたり約200万ウォン(約20万円)がかかるので、その費用をかけて10曲入りのアルバムを作ったら制作費がそれだけで2,000万ウォン(約200万円)になるんですよ。それだと僕たちは音楽で食べていくことができません。それでも「クリアしなければダメじゃないか」と言うなら、正直これについては何も言えません。だけど僕は、時代の流れも見なければならないと思います。このような著作権に対する話をするなら、あちこちの掲示板で僕の曲が無断でアップロードされていることについては何と言うんです。アルバムをアップロードして、それを何百人が受け取っているのに、それは何だと言うんです。僕が言いたのは、あまり法的な基準で考えるとお互いに消耗戦になるだろうということです。最近は膨大な量の知識を一度に迅速に習得できるので、専門家だらけになりました。そんなことを評価していないでそのまま何の偏見もなく音楽を聴いたほうが楽しいということです。NAS、DJ Premier、JAY-Z、Wu-Tang Clanの音楽を聴いて喜びを感じてヒップホップを好んでいた人たちが、今となっては違法だという定規に押し込めているのがとてもむごいことだと思います。もちろん僕の言っていることは100%正解ではありません。当然法で問い詰めれば倒されてしまうでしょう。先ほども話したように、個人的にはそういうことがあまりにも消耗戦なのではないかと思います。

※9 サンプルクリア:最近、当サイトでもこの件について触れました。詳しくはこちらの記事の下のほうをご覧ください → 「Single | P-type – Timberland 6″

 

おっしゃるとおり、ヒップホップにはサンプリングのサウンドが与えるフィーリングとかっこ良さがありますよね。でも最近はサンプリングが犯罪だという見方が蔓延していて、この部分がおそらく先に述べた音楽の価値の変化のためではないかと。そのような見方をしている人たちに言いたいことはありますか?

そのような人たちをいちいち説得しようとすること自体、ちょっとかっこ悪いと思います。そのような人たちはなぜ自分がヒップホップが好きなのかを理解できていないのだと思います。個人的に、ヒップホップが好きなのであれば、そのような考えを持ってはいけないと思います。本当に単純に法律だとかいう問題ではありません。これがなぜ良くて、なぜやるのか、それをいかにして簡単に答えられるのでしょうか。誰が教えてくれたわけでもなく、僕も学んだわけでもないので、これについては本当によく分かりません。ただ「人々があまりにも審判員のようになろうとしているのではないか」と考えています。本当に音楽が好きで聴いているリスナーの数よりも、音楽以外の問題に集中している人があまりにも多くなったように思います。僕もカッとなる性格で、以前はこういったことに対して、いちいち争おうとしていましたが、今はよく分かりません。ただ単に僕の音楽が好きな人たちのことだけを気にかけていたいです。

 

アルバムの主な一節について話す「Line by Line インタビュー」を始めます。

 

初めて俺の夢を両親にすべて打ち明けた夜 結局親父の夢は 再び俺を親父に組み立てていく 俺の意のままに - 그 때.(その時。)

僕はやや困難な状態で生まれました。Pinodyneのファーストアルバムに入っている『Nightingale Film』で、僕の母のナレーションを聴いた方は分かると思いますが、僕が生まれたとき、医者は「母体か胎児のどちらかを選択してください」と言ったそうです。その当時、父は牧師ではなかったのですがクリスチャンで、「この子が無事に生まれたなら神様に仕える子供にします」と祈ったそうです。キリスト教では誓願というものですよね。そして僕が生まれたんです。父の立場としては当然、僕は誓願を立てて産まれた子なので「将来は牧師にならなければならない」と言っていたんです。子供の頃からそんな話を聞かされて、母胎信仰で毎週教会に行くので、自然と僕も将来の希望欄には牧師と書いていたんですよ。だけど初めてヒップホップ音楽を聴いて、ものすごく好きになってラップをしてみたときに、僕はがやりたいのは牧師ではなくてこれだと思ったんです。すぐに両親に話をしました。最初は当然反対されましたが、最終的には、そのせいか分からないですが、父が牧師になりました。そういうのを見ると少し申し訳ない気持ちになったりもしますが、見方によってはそれが自然だったんじゃないかという気もします。父が牧師になる過程を息子として見守っていたじゃないですか。それを見て、年齢や環境に対する言い訳というものができなくなりました。40歳を過ぎてから会社員生活から離れて大学へ行き、神学を勉強して牧師になるというのは正直言って本当に大変なことなのに、そのようにしているのを見たからこそ僕はこうやって音楽を続けることができるのだと思います。「年を取ったからできない」という言葉はすべて言い訳だと思います。父のためにそのような影響を受けたと思います。

 

それでは、ご両親の反対はどのように勝ち取ったのですか?

僕のラップを聴かせ続けて、努力する姿を見せ続けようと大いに精力を費やしました。それ以前は一度も何かを一生懸命やったことがなかったので、両親からするとそのような姿に若干の真実味を感じたのでないかと思います。僕が音楽をやると言ったとき、それがラップだとはまったく考えてもいなかったでしょう。だからほかのご両親に比べるとやや簡単に許してもらって支援を受けたほうです。だけど、ちょっと突拍子もない両親は機材を買ってくれました。作曲できるMIDI楽器をたくさん買って後押ししてくれました。今になって考えてみると、ラップではない音楽をやって、後から音楽教授とかそういった方面を考えていたのではないかと思います。ラップをして生きていくというのは、その当時の両親にとっては本当に想像もつかないようなことだったでしょう。

 

文字通りラップで生きている今、ご両親の反応はいかがですか?

ただたくさん祈ってくれます。特に父は気立てが優しい面が多くありませんが、我が子を愛するのは当然です。それを感じる部分もありますが、言葉で表現するようなスタイルではないです。僕がライブやアルバム発売を控えているときは、常に祈ってくれます。遠く離れている場合は電話で祈ってくれて、教会に行けば直接祈ってくれるので、無条件に応援してくれていると思います。もちろん親だから、僕が大統領になったとしても心配したでしょう。親として心配するのは当然ですが、最近は「食べていけてるか?」という程度の心配はしても、何も特別な心配はないようです。ただ、不思議に思う部分があるようです。両親の時代では、当然歌手になるとテレビに出て有名税を払ってこそ歌手であって、そうでない場合は音楽でお金を稼げていないと考えるじゃないですか。だけど今はそうじゃないでしょう。Illionaire Recordsを見ても、テレビに出ずにああいった生活を送ることができているし、僕自身もTVに全く出なくても音楽で食べていけるんだから不思議なことでしょう。母は保育園の園長先生なのですが、保育園の先生方や周りの知人たちが僕を知っているという事実がとても不思議なようです。それで「あなたはテレビにも出ていないのに、みんなどうやって知るの?」と電話で聞いてきたりしました。今は月日が少し経って、当たり前になったようです。僕が音楽で食べていけているということについて、今はさほど心配していないです。むしろ「いつ結婚するのか?」ということばかり聞いてきますよ(一同爆笑)

 

曲の初めに出てくる名前があります。ギチョル兄さんとはどなたのことなのでしょうか?

僕が音楽がとてもおもしろくなって、本格的にやろうと決心したのが高校1年生のときです。その頃「JP Hole」というキム・ジンピョさんのホームページで出会った人たちと定期的に集まっていて、フリースタイルをやりながらそのような決意をしましす。ギチョル兄さんは、そのとき一緒に集まっていたうちのひとりでした。そのときJJKを含めて、今一緒に住んでいる友人たちとしょっちゅう会っていた3才年上の兄さんです。僕が21才のときに軍隊で自殺をしてこの世を去りました。僕も毎回そのことを考えるわけではなくて、アルバムを作る前まで最初のトラックでこの話をするつもりもなかったんですよ。だけどこのアルバム自体、僕を知らない人には少し不親切とも言えるアルバムじゃないですか。本当に僕だけの話をしているわけで。だから僕の周りの人々が聴いたら、その頃を思い出すんじゃないかという気がしたんです。そしたら「あ! ギチョル兄さんだったら全部聴くんじゃないか」と思いました。それでレコーディングのとき「ギチョル兄さん、聴いているでしょう」という言葉を即席で言って、アルバムにまで入れることになったんです。僕にとって、あの頃出会った人たちは特別です。人生に及ぼす影響があまりにも大きかったんですよ。今でもとても近い関係で、一緒に住んでいます。あと、あの頃出会った人たちに対する話を代表して話したという面もあります。もし以前親しかった人たちが僕のアルバムを聴いて連絡できるようになったら嬉しいですが、そうでなくても楽しんで聴いてくれたらいいですね。そのような意味でやったということを少し知ってもらえたらいいです。

 

俺と同じような興味を持った奴らは Rap AttackとFreestyle Townを作って その中にいた奴らのうちのひとり そんな俺が『MIC SWAGGER』に出るようになったのは 実に不思議なことだ - Page 64

JJKもそうだし、Sool J兄さんもそうですが、フリースタイルに対する愛がものすごく大きくて、それが本当におもしろいのですごく知ってほしいんです。フリースタイルがおもしろくて、これに対して僕はちょっと責任感を持たなければならない。それで作ったグループがRap AttackとFreestyle Townです。だけど僕はグループを引っ張っていくようなタイプではないんですよ。ただおもしろいことだけをやる人間です。フリースタイルは本当に僕にとって一番おもしろい遊びであり、おもちゃだったのですが、こんなおもちゃを持って僕が人々に説明してこうしたいとかいう考えはありません。考えてみれば僕の人生は、何をすべきかということよりも、そのまま自然に流れてきたようです。僕は人生を生きたのではなく、ただおもしろいことをしてきました。人生をそのまま認めて生きてましたね。フリースタイルが好きだからやって、そこでRAMA(a.k.a HEE Z)兄さんに出会って、7人 ST-Ego(※10)をやって、『MIC SWAGGER』に出たのは不思議なことですよね。それで書いた歌詞です。それだけでなく、HI-LITEに入ったことも、今「焚身」が売り切れ続けていることもそうです。僕が最初に「焚身」を始めた理由は、ライブがすごく好きだけど20分ずつやるのが僕の性に合っていて、ひとりでやるべきだということで始めたのが「焚身」です。今考えてみると、このようにやってきて、やったことがすべてうまくいきました。結果的に全部良かったようです。少しでも違った場合は、心残りになっただろうし成績もあまり良くなかったと思います。僕は無条件におもしろいことをやったときが一番楽しいです。

※10 7人 ST-Ego(チルリンステゴ):2007年に結成されたヒップホップクルー。メンバーはHuckleberry Pのほかに、RAMA、Kyfish、Optical Eyez XL、B-shop、YOYOGOON、Swingsの7人

 

 

Huckleberry Pといえばフリースタイルを外すことができないですが、MCにとってフリースタイルとは何だと思いますか? また、Huckleberry Pにとってフリースタイルとはどのような意味ですか?

MCにとってのフリースタイルというのはよく分からないです。みんながやる必要もないし、そうすることもできないし、しなければならないということもありません。率直に言って、みんなそれぞれ与えられた才能が違うと思います。僕にとってのフリースタイルは、(しばらく考えて)最大のおもちゃでしょう。最も長い間持っていて、楽しく遊んできたおもちゃだと思います。フリースタイルは、うーん……最も楽しんで長く遊んできたおもちゃです。

 

では、最近も弘大(ホンデ)の遊び場に行きますか?

ああ……。行く回数は昔よりかなり減ってしまいました。四半期ごとに行っている感じです。年を取って、あまりにも寒かったり暑かったりすると出掛けられなくなりました(笑) それ以外にも僕がサイファー(※11)に出ない理由はあります。どうやら僕が行くと、サイファーの空気がちょっと変わってしまいます。サイファーをしている子たちは、本当に純粋に自分たちで楽しくやっていますが、僕が行くとフリースタイルの内容が完全に変わります。「俺は今、Huckleberry Pの前でラップをしているぞ」とまあこんな感じです。それだと僕もその子たちもきまり悪いんです。そうなってしまえば遊びではないでしょう。僕たちがオルムッテン(※12)をするとき、「俺が誰よりも先に知れ渡った」だなんて検査は受けませんよね。ただ遊ぶようにやるべきなのに、僕が入ったらそうもいかなくなることに気が付きました。だから行きたいと思っても、率直に言ってよく分からないです。あと、僕がSNSを通じて「今日どんなサイファーがあるのか?」と尋ねることもできるのですが、そうした瞬間、大勢の人が期待して見に来ることもあります。僕は個人的に、そういうのはかっこ良くないと思います。

※11 サイファー:ラッパーが公園や路上などで集まって、互いにフリースタイルでラップを競い合うこと。みんなで円く輪になって即興でラップする。楽しむだけのこともあれば、トーナメント形式のバトルをすることもある。アメリカのブラックミュージック専門のテレビ番組『BET(Black Entertainment Television)』が開催している『BETヒップホップ・アワード』のサイファーは、EminemやChris Brownなどが出場する華やかな舞台となっている

※12 オルムッテン:「こおり鬼」のこと。鬼ごっこです。地域や世代によって鬼ごっこの種類やルールはまちまちだと思うのですが、日本にも同じ鬼ごっこがあります。「氷!」って言って止まると鬼に捕まらなくて済むやつです

 

行きたくても行けないということですね。

まあ半々ですね。 正直ちょっと言い訳でもあります。OlltiiやJJKのように、そういったことを全部押し切って素晴らしくやっている人たちもいるし……。僕がこういう話をするのはとても傲慢なことなのではないのかと思います。だけどこんな気持ちでいるんだということは分かってもらえたらと思います。このインタビューを読んで、その素晴らしくやっている友人たちが知ってくれたらいいですね。常に言いたかったことです。

 

MIC SWAGGER – 5編 Huckleberry P

 

「フリースタイルMCはレコーディング作業に弱い」という偏見がありますが、Huckleberry Pさんにとっては全く当てはまらないと思います。何かノウハウはありますか?

まず、その前轍を踏まないための努力と警戒をたくさんしました。実際『MIC SWAGGER』の撮影をして分かりました。この映像が出ていったら波紋が広がる。もちろんあれほど規模の波紋があるとは想像もできなかったのですが、ある程度は予想していました。 これが出ていけばフリースタイル的な部分は整理されるだろう、そんな予想をしながら警戒していたのが、この瞬間から僕には「フリースタイルMC」という札がついて厳しい戦いになるだろうということです。だから『MIC SWAGGER』以降はたくさん努力しました。そのうちのひとつがPinodyneというチームです。僕が基本的にMCでありながら、ヒップホップでかっこいいと思うことを同時にやっていたら、フリースタイルMCという札がもっと長く付いて回ったのではないかと思います。だけど『MIC SWAGGER』とPinodyneのEPがほぼ1ヶ月違いで公開されたじゃないですか。だからこのような札は少し早く外すことができたと思います。僕もフリースタイルを初めてやったときのおもしろさがあまりにも大きくて続けてきた人間ですので、最初は当然フリースタイルよりも歌詞に弱かったんですよ。だけど努力すればできないことはないと思います。僕の父がそうやって生きてきたんですよ。

 

ノウハウは努力というですね。

もちろん才能も必要でしょう。芸術なので、当然才能がないといけません。もちろん才能もありましたが、フリースタイルのMCというイメージを破壊するための努力もたくさんしました。

 

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俺の夢を支えてくれたGarionと8 Mile - SYEAH!

すでにお話ししたように、その当時僕が「ラップをしよう、ラップがかっこいい」と思ったのは、歌詞的な部分ではなくフリースタイルであり、そのかっこ良さをGarionと『8 Mile』が教えてくれました。昔、Garionが『HIPHOP THE VIBE』(※13)やMasterplan(※14)の頃、公演が終わってからフリースタイルをやり始めて、その当時やっていたフリースタイルは本当に言葉になりませんでした。特にMC Meta兄さんがやったフリースタイルは衝撃的でした。今でも記憶に残るHoney Familyのディギリ、ヨンプン、Gary、そしてMasterplan代表としてGarionとMCソンチョンが出てきたあのときのMC Meta兄さんのフリースタイルを忘れることができません。そのときに受けたフリースタイルの影響があまりに大きくて書いた歌詞です。『8 Mile』は言うまでもなく内容がフリースタイル・バトルで、さっき話した「JP Hole」で知り会った人たちと集団で観に行きました。映画館で一列にズラリと座って観たんですよ(笑) 映画自体はとてもおもしろくて、かっこ良かったです。かなり衝撃的でした。その頃の僕を支えてくれたんです。

※13 HIPHOP THE VIBE:韓国のケーブルテレビ「Mnet」で2000年代前半に放送されていた番組。アマチュアラッパーたちがフリースタイルバトルを繰り広げたり、ライブステージや海外ミュージシャンの紹介、ヒップホップの歴史、コンサート映像のビハインドストーリーなどヒップホップに関する情報を伝えていた

※14 Masterplan:1997年にオープンしたクラブ。ヒップホップアーティストたちがプレイできるクラブがなかった当時にオープンした韓国ヒップホップのパイオニア的存在。1999年からはGarionなどを中心にアルバム制作も始めた。2001年には本格的にレーベルへと進展し、2002年にクラブを閉鎖。現在は姉妹レーベル「ハッピーロボットレコード」と共にヒップホップ以外のジャンルにも活動を広げている

 

これまで話した3曲は、Huckleberry Pさんがご自身の実話を表現をしました。以前のアルバムではこのような表現方式が見られませんでしたが、変わったきっかけはありますか?

MCであれば自分の話をしたときに得られる共感や感動がありますが、僕はこれまでの人生で大きな屈曲がないんです。当然人間なので、毎回良いことばかりあるようにしているだけですが、性格自体が嫌なことはあまり覚えていないタイプでもあって、良いことを最大限に活用して良く考えるほうだし、またそれが良いと思ったらそれを続けます。だからラップをした後はとても楽しいんです。だけどみんながそういうわけではないですよね。僕の話をしても、「果たして人々はこの話が好きだろうか」と思ったりもしました。あと、僕の性格自体が自分の話をたくさんするタイプではありませんね。笑えるエピソードはたくさん話しますが、本音はあまり出さないタイプなので、そうするうちに周囲の人々の人生や思想や事件のようなことに視線がたくさん行って、それでPinodyneをやったんですけど、今は他の方法に対する渇望が出てきました。一度はやってみて通らないといけない。このアルバムをファーストアルバムというタイトルをつけたのもそうですが、元々は何のタイトルもなく出そうとしたんです。前にPaloalto兄さんが『Chief Life』を出したとき、「今の世の中ではアルバムにタイトルをつけることに大きな意味がなくなった」と話していましたが(※15)、僕もその意見に共感してアルバムに特別なタイトルをつけないようにしました。だけど先にトラックを3曲作ってみたら、これは僕のファーストアルバムなんだという気がしたんですよ。だからそのタイトルをつけることにしたんです。そのようなタイトルをつけた分、本当に個人的な話を入れて作業することができました。今回のアルバムである程度吐き出したので、当分の間はこのようなアプローチはしないだろうと思います。今回、幼少期に関する話は全部したので、これ以上やる必要もないと思います。スカッとしました。

※15 過去記事「Interview | Paloalto – Chief Life by HIPHOPPLAYA」の最初のインタビュー項目を参照

 

アルバムのフィードバックのうち、Jay Kidmanと一緒にやった『SYEAH!』というトラックの評価が高いいです。サウンド的な面ではアルバムで最もユニークな曲のひとつですが、Jay Kidmanとはどのように作業することになったのですか?

まず最初にJay Kidmanのビートを聴いたときに思いついたのですが、それがVasco兄さんの『Q』というミュージックビデオを撮るための撮影現場にいたときでした。Vasco兄さんが「一緒にアルバム準備をしている友人がいるんだけど、一度聴いてみる?」と言ってきたのですが、驚愕でしたよ(笑) 完全に言葉も出ませんでした。そのときから大好きになりました。Jay Kidmanのビートは今回のアルバムをファースト・フルアルバムとして出すことになったので入れることにしましたが、特別なエピソードはなく、ただビートがあまりにも良かったからやることになっただけで、皮肉にもまだJay Kidmanとは一度も個人的には会ったことがありません(笑) 最初に連絡して会おうとして、ちょっと前にもメールはしました。僕のアルバムもあげることを兼ねて一度会わないといけないのに、最近お互いが忙しくて会おう会おうと言い続けているけどいつのことになるか分からないです(笑) お互いに気立てが優しい性格ではないと思います。親しい人同士は大丈夫ですが。だからこの場を借りて、早く会って人間的に親しくなって一緒にたくさん仕事をしたいですと言いたいです。僕はJay Kidmanのビートをうまく消化するラッパーのひとりではないかと思います。今回の作業もとても良い感じだったし、レコーディングも2~3回で完成しましたよ。

 

チームを組んで活動してもいいというお考えも聞きます。Pinodyneとは違うカラーのチームが出てくるようですが。

僕は何でも、それがおもしろくてかっこよければ無条件で全部やってみたいです。

 

次は3曲の歌詞についてまとめて聞きたいと思います。

 

お前が俺の4倍稼ごうが あるいは数百億を儲けようが どのみち楽しむのはHuckleberry Pを観に来た人たち - Rap Badr Hari

お前が俺のパンツの色を見れなかったとか お前の声が完全無欠だとか お前と俺の表情が丸っきり同じではないとか言ったら 俺はライブをしたのではない クソったれ カネを持っていけ – 焚身

確かに数年前に比べて貧弱なスタミナ これじゃあ飽きることもあるだろう 相変わらずステージに上がると節制がよくならない – THE KID

 

僕はラップで稼いでいるけど、ラップで稼ぐ金額についてよく言われる「SWAG」はできないと考えます。なぜならそっちの面でもっとかっこ良くできる人たちがいるし、僕が思うに僕を最もよく表わしている部分はライブだと思います。それで書いた歌詞です。『焚身』という曲はライブと同名のタイトルでもあり、ライブにおける自負心をたくさん表わそうとしました。個人的にはアンダー、オーバー、両方合わせたヒップホップ・ミュージシャンの中で、僕は指折り数えるほどのパフォーマンスをすると思います。そして単独ライブをしたときの演出力や流れのようなものをかっこ良く表現することと同じですよ。だからライブの面では僕がこういう話をしてもいいと思います。

 

Huckleberry P – 「焚身」Concert Highlights Part.1

 

はい。「焚身」ライブは昨年のHIPHOPPLAYA Awardsの最優秀ライブ部門で3位に選ばれました。1位と2位​​がオムニバス公演なので単独公演では「焚身」が1位でしたが、その理由は何だと思いますか?

ぶっちゃけ言うと、楽しくてうまいから。だけどこれを自分の口で語るとめちゃくちゃ笑えますね(笑) 僕がライブを観るとき、いつも物足りなく感じていました。あまりにも予想できる楽しみで。もちろんそれでもどうやるかによっておもしろいこともありますが、AとBという人が出てくるライブなのに、この曲をやって明らかにこれをやったら楽しいだろう、こんなふうに連結してやったらもっとおもしろくなるのに、そういった流れがないと思います。トーク、パフォーマンス、トーク、パフォーマンス、こんなふうに切れる感じがあるんですよ。だけど観に来てくださった方は分かると思いますが、「焚身」ではトークをほとんどしていないんです。だから巨大な公演の最中に人を投じておいて、みんなが一緒に遊ぶんですよ。そういった部分がアピールになったと思います。歌詞で突然Garionをシャウトしたら突然Garionが出てきて生命水を呼んだとか、そういう部分が人々に強い印象として残っているんだと思います。そういったことで今はちょっと負担になりました。今回「焚身」の3度目の公演準備でDJ Djanga兄さんとたくさん話をしています。「大変だ。1、2のときもたくさん頭を使った。今回はどうすればいい?」こんな心配でもない心配をしていますが、そのぐらい「焚身」はおもしろいものなのではないかと思います。

 

そんなに自信もあって、たくさん悩んで、今はHuckleberry Pの代名詞とも言えるライブが「焚身」でしょう。ミュージシャンが自身の単独公演をブランド化させて持続的に導いていくということは、シーン自体でも滅多にない事例ですが、初めはこの公演をどのように始めることになったんですか?

さっきもお話ししましたが、最初はただなんとなく。とにかく1人でライブがやりたかったんです。そして性格的に、何をするにしても一番うまくやらないと気が済みません。今までも自分がやることは手中に挙げられますね。フリースタイルもそうで、ウィニング(※16)もそうで(笑) それがすべてそういうことに跳ね返ってくる。だからライブも一番上手じゃないといけない思ってるんです。これは悪い心ではなく、善意の心だと思うんですよ。他の公演だと出演者がすごく多くて僕が観れるのは限定的だし、僕の頭の中にはライブをしたときに様々なアイデアがあるけど、これを表現するのは難しい。だったら方法は何か? 単に自分の単独公演をして、自分がすべてを指示するんだ。これが「焚身」の出発点ですね。最初からシリーズにしようとしていたのではないです。それで初めての公演を準備して、その公演がうまくいきました。かといっても2、3までやるつもりはなかったのに、これをシリーズ化させた決定的な理由は、2回目の公演が大成功したためです。1回目はおもしろくて、2回目はうまくいったので続けることができました。人も集まらず収入もないのに、僕ひとりだけでおもしろいことを続けることはできないでしょう。会社の立場もそうで、僕個人的にもそうで。3回目の公演を実施した決定的な理由は、「焚身 Vol.2」のときにローリング・ホール(※17)が完売になったのですが、僕クラスのミュージシャンの中では速く完売したほうだったんです。なので、その部分でのプライドがめっちゃ高くなったんです。今後数ヶ月、または数年間はこの記録は破られない。と思ったら、Paloalto兄さんの『Veteran3』の公演ですぐに破られてしまいました。Paloalto兄さんは完売ではなく、前売り率が良かった。だから300人来たと思ったら500人が来たんです。会場の後ろから見物しようとドアを開けたら、観客席がいっぱいで入れなくて……。それで大きな衝撃と刺激を受けました。それで「焚身 Vol.3」を企画したのですが、より刺激になりました。正直言って、Paloalto兄さんのライブぐらいうまくいかなければ今回の公演に大きなおもしろみを感じられないだろうし、それ以降もなくなるような気がするので、宣伝もたくさんして、たくさん頭を悩ませて準備しています。

※16 ウィニング:Winning Eleven。コナミから発売されているサッカーゲームシリーズ。日本では「ウイイレ」と略されるが、韓国では「ウィニング」と略されている。Huckleberry Pはこのウィニングがかなり得意らしく、ヒップホップ界でもHuckleberry Pの右に出る者はいないんだとか(笑)

※17 ローリング・ホール:ソウルのホンデにあるライブハウスで、着席250人、オールスタンディングでは最大600人を収容する

 

「焚身 Vol.3」の成績はどうですか? Paloaltoさんに勝ったようですか?

今回も全体観客数ではPaloalto兄さんには勝てません。Paloalto兄さんは500人が入って、僕は450人で切れたので。だけど販売速度は僕が速かったんですよ。僕が救いようのないマネさえしない以上、やればやるほど完売速度は速くなりそうです。俗に言うメインストリームのミュージシャン以外では、たぶん僕が単独ミュージシャンで一番速いと思います。そのような部分に対する自負心はあるのに、これをまたPaloalto兄さんが破りそうです。

 

そのような良い姿を見て、Paloaltoさんの反応はどうでしたか?

HI-LITEの中で誰かひとりがうまくいくと、こんな話をします。「うわ、クソ野郎。スーパースターだな、クソ野郎。うまくいってるな。飯買わなきゃ」って(笑) 例として、去年のオーシャン・ワールドの公演に出演依頼が来ましたが、そちらの関係者が「ちょっとルックスがいいミュージシャンに交渉したい。Huckleberry Pを出してください」 というようなことを言ったのですが、これが噂で広がって(笑) Huckビン(※俳優のウォン・ビンになぞらえて)だとか言ったり、「焚身 Vol.2」が完売となったときも「クソ野郎、イケメンだからうまくいくんだな。チャン・ドンゴンめ」って(笑) こんな感じですよ。お互いこうやってからかうんです。

 

「焚身 Vol.3」はやはり売り切れになりましたね。これ以後のシリーズを準備したり、構想していることはありますか?

個人的に少し大きな夢ですが、「焚身」を単独公演ではなくフェスのようにしたいです。単純にネームバリューでチケットを買うのではなく、「焚身」のポスターに誰かの名前があったら、そのミュージシャンは本当にライブが上手なんだろうと思われて、それで観客が「焚身」の名前だけを信じて来れるようにしたいです。だから僕は「焚身」をやるとき、必死になれるんです。「焚身=おもしろいライブ」、このようにさせたいですね。だから僕の単独公演ではありますが、ゲストの量を少し多くしています。ライブがうまいのにネームバリューがないために単独公演をやってもチケット販売力がない新人、または僕が素晴らしいと考える人々が僕のライブに出るようにして、かっこよくやって人々が認めてくれるようなライブがしたいですね。他の公演とはそういった面で差別化ができたらいいですね。例えば今、Just Music(※18)に入ってネームバリューが高まったC Jammのような場合がそうでしょう。僕は一緒にライブをやらなかったけど、彼のショーケースに遊びに行ってみたんです。今は大きなステージにも立ちますが、そのときとても惜しかったですよ。それで「焚身」のステージでも共演したい思いがあったし、そうやって実力のあるアーティストを発掘したいという熱望もあります。2番目の目標は、最近の公演は1つのチームが出てきて3曲やって、次のチームが出てきて3曲やってというようなフォーマットで進行されますが、個人的にはそれがおもしろいのか分からないです。だから僕のライブでは、Aという歌手が出てくるとBという歌手が出てきて2人で数曲やって、そしたらCというラッパーが出てきてBと何をするとかそういった流れがあるライブで、例えばNuck兄さんが出てきて僕と『クローバー』をやってたのに突然Minos兄さんが出てきて『Speakin’ Trumpet』をやって、その次にRHYME-A-兄さんが出てきて一緒にパフォーマンスして、といった類の流れが好きなんですよ。そのほうがずっとおもしろいだろうし。あと、僕のライブでSupreme Teamを再結成させてみたいとも思っていて、Ill Skillzも出てきたらいいし、そのような類のステージができたらいいですね。いつになるかは分かりませんが、そんなことをしたいという夢を持っています。

※18 Just Music:ラッパーのSwingsが経営するヒップホップレーベル。SwingsはBrandNew Musicの所属でもあるが、そちらは大きなレーベルでオーバーグラウンドな活動も行うことに対して、Just Musicはアンダーグラウンド色が強い。Giriboy, Nochang, BlackNut, Vasco, C Jammが所属。C JammやGiriboyは、HIPHOPPLAYA SHOWに行ったときの私のレポにちょっとだけ出てきます → 「Report | HIPHOPPLAYA SHOW 2014 Part.1

 

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俺が兄として本気で忠告してやろう 10年くらい経てば 俺のことが理解できるだろう - 불효막심(不幸の極み)

何か大きな意味でその人が本当に嫌いだったというより、これはヒップホップの楽しさであると思います。他のジャンルでは絶対に見られない偉そうな態度やバトルラップのような文化があるでしょう。『Rap Badr Hari』も同様ですが、僕にはそんな楽しみがあります。だからヒップホップがかっこいいと思うようになったきっかけでもあって、それで書いたんです。特定の誰かを指名して書いたわけではないんですけど。あ、1人います。名前を言うのはあまりにもアレなので、きっとこのインタビューをそいつが見たら、自分のことを話してると分かるでしょう。『불효막심(不孝の極み)』、『정신차려(しっかりしろ)』などの類の歌詞は、すべてある1人がターゲットです。親しい友人でした。だけど今は何をしているのかよく分からない。聞こえてくる噂があまり良くなくて、そのまま書いています。もしこのインタビューを見ているなら、本当に心から音楽を辞めてほしいです。その友人は、僕の考えるWack MC(※19)の典型であることを知ってほしいです。名前は出さなくてもインタビューを読めばすぐに分かるはずです。その友人のことを除いても、これはどのみち芸術なので才能がなければ限界だということです。本物にはなれなかったとして、時間がかかろうがかかるまいがいずれ人は自らの才能を知ることとなりますが、そうでない人たちは早めに自分の身の程を把握したほうがいいと思います。健全なリスナーになったり、サポーターになったほうが遥かに役に立つのではないかと思います。そんな友人たちに対して、なぜそういうことをするのか分からないという思いで書いたのではなく、単なるヒップホップのおもしろさであり、誰もが書く歌詞なので書きました。

※19 Wack MC:ヒップホップスラングで、出来の悪い偽物のラッパーという意味

 

誰かにとって 俺たちは行き詰まったジジイ - 무언가(無言歌)

この話は、昨年の『Show Me The Money(※20)』のときまで遡ります。出演交渉のために盛んに問題があった頃です。そのせいで何人かのミュージシャンは、オンライン上で番組に反感を示したことがありました。僕が思ったのは、ヒップホップファン、特に僕たちの音楽を聴いて僕たちの影響を受けている人たち、サポートしてくれる人たち、リスナーなどは当然僕たちの側につくと思いました。当然僕たちと似たような考え方だろうと思ってたのに、一部の掲示板で見かけた文章はあまりにも衝撃的でした。「お前らはオーバーグラウンドに行けなくてアンダーグラウンドにいるんじゃないか?」「お金も稼ぐことができずにアンダーグラウンドにいるんじゃないか?」「お前なんかが素晴らしい存在になったとでも言うのか?」「そんなふうに言ってくれてありがたいと大らかに受けとめなきゃいけないのに、何でそうなんだ?」こんな類の言葉だったのですが、あまりにも衝撃を受けて裏切られたと強く感じたんですよ。「お前らがそうやって表に出ている人たちに向かって何か言うのは、本当にジジ臭いことだ」このような言葉に僕はひどく失望して裏切られたように感じて、そのとき『무언가 (無言歌)』という歌詞を書きました。すぐに発表しようとしたのですが、この曲はMC Meta、Ignitoの2人とやるべきだと思って。その後、参加が決定して作業していたのですが、時間がかかったので今回のアルバムに収録することになりました。考えてみれば、そのときも今も大きく雰囲気は変わってないですよね。HIPHOPPLAYA RADIOでも話しましたが、きっかけとしては「DC TRIBE」の掲示板を見てそのような考えを強く持つようになりました。そのとき話した内容を少し訂正するならば、「DC TRIBE」というサイト自体を見下すつもりはありません。いいサイトですよね。僕もよく利用して、etc掲示板を見て笑ったりもしていますよ。ただ、変に匿名性を帯びた掲示板だけに行くと、人々がかなり鋭くなって、分析をして、ヘイターという思いになる空気があります。彼らもその点ははっきりと否定できないでしょう。もちろんすべての人がそうだというわけではありません。だけど僕は確かにそう感じたんですよね。そのことについて彼らはごまかせません。そのような雰囲気がとても嫌だったし、僕たちがこれを固守することや下部リーグの概念は全然違うどころか本当にかっこいいし、そのようにすることに自由を感じて好きでやっていることなのに、それをそうやってさげすむこと自体に失望しましたよ。僕はその人たちのことがよく分かりません。本当にヒップホップが好きなのか。むしろ本当にジジ臭いのは誰なのか考えてみろというMC Meta兄さんの言葉のように問いただしたい。この曲に対する大きな話を付け加えるというよりは、僕が言いたいことが曲に込められているので、曲を聴いていただけたらいいですね。

※20 Show Me The Money:韓国のケーブルテレビ「Mnet」で2012年より夏の間だけ放送されている番組。応募してきたラッパーたちがスキルを競い合い優勝を目指すサバイバルバトル。悪意ある編集やコンセプトにブレがあることなど様々な点から批判を多く受けている。2012年の優勝者はLoco、2013年の優勝者はSoul Dive、2014年は現在放送中

 

話が出たついでお尋ねします。今回『Show Me The Money 3』がスタートとして公開されたニュースを見ると、審査員もオーディション参加者もこれまで以上に多くのミュージシャンが参加をするようです。どのような形式で出るかはまだ明らかになっていませんが、先ほどおっしゃられたようにHuckleberry Pさんは一般的に番組への反感を示していたうちの1人です。今シーズンについては、どのような考えを持っていますか?

1より2が良かったし、2より3がいいだろうと思います。より多くの気を遣うでしょう。僕も2を見て考え方が変わった部分もあります。かっこいいステージは本当にかっこよかったんですよ。だけどまだダメな部分もあるでしょう。何千人をぎゅうぎゅう詰めに集めてオーディションをする点とか、コンテストのステージにあえて有名なボーカルを入れている点とか、そういう部分は個人的にはあまり良くないと思いました。正直、以前は番組が始まる前から反感を持っていましたが、今はちょっと変わりました。放送される前だから「期待もしていない」という心境で、あと、みんなが集まってオーディションを見なくてもいいんじゃないかと思います。かっこ悪いとかそんなことじゃなく、ただ単にヒップホップ版『私は歌手だ(※21)』のようにしても十分いい形式ではないかという考えです。なんであえてオーディションという形式を取らなきゃいけないのか、正直よく分からないです。

※21 私は歌手だ:韓国のMBCで放送されている番組。トップレベルのプロ歌手たちがステージで実力を競う

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それでは、もし今Huckleberry Pさんが考える点について、100%ではなくても80%くらいが満たされたら、次のシーズンに出演する意思はありますか?

分からないです。僕はまだそのようなTV媒体に対する欲があまりないんです。『Show Me The Money』だけでなく、僕が考えるヒップホップのかっこ良さが満たされる番組なら出るのもおもしろいでしょう。僕がやることによってヒップホップが見くびられなくなるなら、番組がヒップホップを見くびらないなら出るでしょう。僕が出ることは大きなことではないと思います。誤解しないでほしいのは、僕が『Show Me The Money』に対して否定的な立場だといって、出ている既存のミュージシャンやオーディション参加者に対してまで反感があるわけではありません。当然素晴らしいものを見せてくれればいいと思うし、うまくいけば嬉しいですよ。彼らもそのために出ているんだろうから。みんな目的を達成できたらいいですね。音源ストリーミングもそうで、利用する人々が間違っているのではないと思います。みんなそういう機会があって便利だから利用しているだけで、そのために収益を取りまとめている人たちに対して拒否感があるんです。参加している人にはがんばってほしいです。うまくいったらいいですね。

 

再び曲に話を戻すと、『불효막심(不幸の極み)』と『무언가(無言歌)』は2曲とも適切なフィーチャリングではないかと思います。フィーチャリング選定基準があったのでしょうか?

先ほどお伝えしたように、ラップで語るときに最もうまくできる人がやる必要があって、その点では2曲とも100点満点でした。あと、どうしても個人的なリスペクトや知人のよしみですね。そうでなかったら正直難しかったはずですが、2曲ともそのような点で満たしていたので。この2曲だけでなく僕が発表したすべての曲も同じです。たとえば『손만 잡고 잘게(手だけ握って細かく)』でSatbyeolが参加したのもそうです。

 

HIPHOPPLAYA RADIOでも一度話していましたが『무언가(無言歌)』でMC Metaさんのヴァースに入れたおもしろいエピソードがありますよね。もう一度話してください。

MC Meta兄さんは最近すごく忙しいんです。Garionの活動もありますが、個人的に『모두의 마이크(みんなのマイク):https://www.facebook.com/everymic』や教育的な活動をたくさんして忙しく、バタバタしていて作業もかなり滞っているみたいです。それで今回『무언가(無言歌)』の制作中、MC Meta兄さんがその日のうちにレコーディングをしないと危ない状況でした。発売日やマスタリングなどすべてのことが押している状況の中、MC Meta兄さんの特性上、レコーディングスタジオに来てから歌詞を書いて録音をするタイプなのですが、歌詞を書いていたら突然「約束があるのに仕事があまりにも多くてうっかりしていた。大事な約束なので行かなければならない」と言われたんです。正直言って理解ができずに呆れ返りましたよ。僕よりちょっとだけ年上の兄さんだったら「ダメです。アルバムの発売日もあるし今日録音しなくちゃいけない」と話したでしょう。だけどMC Meta兄さんじゃないですか(笑) だから何も言えなくて「明日なんとかしてレコーディングスタジオを借りて、明日やりましょう」と話してMC Meta兄さんを送り出して、正直「こんなに難しくなるんだったら、もうMC Meta兄さんとの作業は考え直さないといけない」と考えましたよ。それで翌日MC Meta兄さんがレコーディングする姿を見て衝撃を受けて、その考えは完全に改めましたよ。人々がMC Meta兄さんを本当の兄だと呼ぶのには理由があるんです。『무언가(無言歌)』のMC Meta兄さんのヴァースには、人を興奮させるほどの装置があります。大声を出す部分もそうだし、フロウ的にもそうだし。それを録音する姿を見守りながら、ただ笑いました。そして録音もワンテイクで終わりました。そしてMC Meta兄さんはまた、仕事があってすぐに行ってしまって。

 

歌詞もその日に書いたんでしょう?

はい。ちょっと考えられないです。本当に兄さんは兄さんで、わけもなく兄さんではないという考えだけがずっと回りました。そしておもしろいのが、Paloalto兄さんは他人の歌詞を読んで興味を持ってそれに対して話すような方ではないですよね。でもPaloalto兄さんはMC Meta兄さんの歌詞についてよく話してくれました。ラップを聴いて「MC Meta兄さんの歌詞は本当に素晴らしい」ということを何度も言っていました。本当に衝撃的だったし、レコーディングで受けたその感じを絶対に忘れることはできないです。

 

聴き手の立場でも感じることです。

元々はMC Meta兄さんのヴァースを最初に入れようとしました。だけどレコーディングしたものを聴いたら、これが最初に来たら俺がクソになるな、MC Meta兄さんのヴァースは後方にスライドしようと。ある意味Ignito兄さんと僕は狙いとしているターゲットが違います。それにしてもMC Meta兄さんはきれいに整理してくださったと思います。印象深かった「証明は歴史に任せてみる」という部分は「ただ自分のことをする」という意味に歩み寄り、実質かっこいいと思いました。兄さんは兄さんです。

 

『불효막심(不幸の極み)』と『무언가(無言歌)』の2曲はシーンについて語っているじゃないですか。広い意味で尋ねてみます。現在の韓国ヒップホップシーンについてどう思いますか?

僕は一番いいと思います。一番かっこいいと思います。

 

今が?

過去数年間は明らかに過渡期だったと思います。だけど昨年を皮切りに、今一番かっこいいと思います。2013年末から2014年初期まで興味深かったものが、今少しずつ整備されている気がします。Vasco兄さんがJust Musicに入ったのも、Simon DominicがAOMG(※22)のCEOになったのも、Vismajorクルー(※23)が会社になったのも、整備されている感じがしました。だから音楽を見ても出てくるものすべて良いと思います。好き嫌いが分かれることこそあれ、これまでと比較するとクオリティは本当に次元が違うと思います。中には昔のように心に響く音楽がないなんてこともあるけど、人々の好みが変わったのかもしれないし、ただ音楽をアプローチしているミュージシャンたちの形態がそうなったということもあります。それは自然な時代の流れなのかもしません。昔はお金の話をするのは社会的な風土として何か決まり悪い部分もあって、敏感な部分でした。でも今は、例えば僕はラッパーをやっていて貧乏だけど堂々としていて、そういうのがある意味かなりかっこ悪くもあって、自分が稼いだお金で物質的な充足を味わうことに誇りを持つ話をすることがかっこいい風土になったじゃないですか。なので、そう感じている人は一度そのような点も考えてみたらいいですね。そういうミュージシャンがいなくて、そのようなことから離れて、ただ社会的な風土などが大きく変わったということです。

※22 AOMG:元アイドルでありながら、現在は実力派ソロアーティストとして活躍中のJay Park(パク・ジェボム)が2013年に設立したレーベル。今年に入り、Jay Parkからの申し出によって昨年Amoeba Cultureとの契約が終了したSimon Dが(参考記事:「Topic | Simon DominicがAmoeba Cultureと契約終了」)共同CEOとして参入し、GRAY、Locoなど新世代の人気アーティストを数多く抱える巨大レーベルと進化した

※23 Vismajorクルー:韓国のヒップホップクルー。今年に入ってクルーのメンバーたちを中心に同名のレーベルも設立された。クルー全員がレーベルに所属しているわけではなく、どこのレーベルに所属するかは本人たちの意思に任せてあり、あくまでクルーはクルーとして別の活動を続けている。当ブログでも何度か登場しますが、一番詳しく書いているのはこの記事 → 「Movie | Vismajor – Vcypher (2013)」。あとはこの記事も → 「Column | TK – 最新プロデュース曲の紹介

 

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お前はAとBを比較して そしてCもDも比較して また比較して 俺たちにはBとCとDの全部が必要だ なんでしきりにここでそれらを押し出す? - P.T.F(Press The F5)(remix)
犬どもはライブを観に来ない アルバムもほとんど買わない それでいてお前たちがすることに不満ばかり多い – DO !T (Cool Kids pt.2)

あえてなぜマラドーナとメッシを比較するのかということですね。2人とも偉大な選手です。もしメッシよりもマラドーナが劣るといえば、マラドーナが偉大ではないように語る風土も僕は経験をしてきたから、レブロンとジョーダンを比較して「どうやって××レブロンなんかをジョーダンと比較をするのか」と言いながら戦うでしょう。音楽も、その人が聴いて育ったMasterplan時代のミュージシャンとか、あるいはBIG L、Method Man、Redman(※24)などの時代に比べて今のミュージシャンが自分を満たしてくれないといっても、今のミュージシャンの出来が悪いということは絶対にないでしょう。なので、そのような形で比較すると結局自分が損すると思います。そんなことが続くと、もう最初から拒否するようになって反感を持つようになるんです。結局自分が損をします。そのような人々に向けて書いた歌詞で、自分でも知らないうちにそうなっている人々のことを僕たちはある二文字で呼ぶんです(笑) あえて言わなくてもみんな分かるでしょう。

※24 BIG L、Method Man、Redman:いずれも90年代のヒップホップ黄金時代を代表する東海岸のラッパー。BIG Lは24歳という若さで射殺されるが、死後にマネージャーによってリリースされたセカンドアルバム『The Big Picture』はビルボードのR&B/HIPHOPアルバムで2位に輝いた。Method Manは代表的なヒップホップグループ、Wu-Tang Clanの一員

 

韓国ヒップホップのミュージシャンの中で一番モニタリングを熱心にされていると思います。先ほどもおっしゃられたように、音楽人生のスタート自体も「JP Hole」というコミュニティを通じて始めたじゃないですか。最近のヒップホップ・コミュニティの掲示板文化についてどのように思いますか?

話すのは決まりが悪いほど、最近はそのような掲示板は見ていませんね。SNSを通して目に見える反応に多く依存していますが、当然僕をフォローしている人たちなので悪口も言いません。そこから得られるものに対してのみエネルギーを受けていますが、掲示板は以前かなり失望したので最近は見ていません。だから話すこともないです。

 

おっしゃられたように、変わった部分に対してはどう思いますか?ある意味、以前はある文化を共有する人々の集団でしたが、今は共有するというよりは歌詞に出てきたように比較して順位をつけようとしているように個人的に感じています。

本当にインターネットが発達して、知識を習得できる機会がとても多いようです。以前はそんなこともなく、聴いてただ「うわ~かっこいい」だったのに、最近はそんなこともないようで。それとも多くの方の好みがそれほど変わったのかよく分からないです。僕という人間はマジックを見るときも全く疑わずに見ます。レスリングも同じで、ただかっこ良くておもしろい、それだけを考えます。こんなトリックがあるんだろうなどと考えたら、その瞬間のそのときの楽しみはみんな取り去られてしまうじゃないですか。だから個人的には人々がそのような視点を少し捨てたらいいのにと思います。でもよく分からないです。最近の人々の趣味の状態がほぼそういった風土であるなら、僕が立ち上がって「お前ら××みたいだから変われ!」ということもできないだろうし。人の心理というものが分からないです。「ただ放っておけというのか? これも流れか? 俺がひどく敏感にふるまえば俺も××ジジイなのか?」とも思います。だから書き込みは探さないでいます。以前は本当にたくさん見ていましたよ。いちいち調べてコメントもつけてましたが、今は精神衛生上良くないので、見ないのが自分にとって一番良いと思っています。

 

俺は約束の場所に向かっているんだ その光をたどって行けば辿り着けるさ - GoLD

『約束の場所』という曲を初めて聴いたときもそうでしたが、聴けば聴くほど本当にかっこいいんですよね。『約束の場所』が意味する場所、そこでみんな会えたらいいねという話をすると、Garion兄さんたちの心情にも少し触れるようで……。僕が音楽をやる理由はそれだと思います。金銭的に利益が出れば当然良くて、それは人間としての本性でしょう。だけどそれよりも大事なのは、最後まで自分の信念を貫いて本物の音楽をやって楽しく生きていくことなんですよ。途中で別の道には行かず、信念を貫きながら年を取っていくことが約束の場所に行くことだろうと思います。そう思って書いた歌詞です。Garion兄さんたちや素晴らしいミュージシャンたちがそうしているように、僕もずっとそうやっていけばその場所に到達することができるんじゃないかと思いますよ。韓国では不可能だと言う人も多いでしょう。だけどある意味MC Meta兄さんが40歳を超えてもまだ音楽をやっていることで、一次的な問題は解決しました。一次的な、僕たちの考える先入観は壊れたということです。なぜなら、大人が話をするときに「お前、音楽をやっても30歳、40歳までだろう。それでずっと食べていけるのか」と言っても、GarionのMC Metaという人は音楽をやって結婚もして大衆音楽賞の3冠王で、今もちゃんと食べていってるよ、こんなふうに言うことができる時代になったじゃないですか。僕もそうでありたいと思います。誰かが音楽を始めてロールモデルを見つけられずにさまよったとき、僕を思い出して「Huckleberry Pというやつもいたじゃないか」というようになりたいです。だけど僕はそのように生きること自体が「意図しなくてもすでに約束の場所に向かっているではないか」と思って書いた歌詞です。

 

そんな俺にとって 世の中で一番大事なことは昨日より今日、今日より明日、もっとラップが上手になること - 그것(それ)

僕は明日を考える人間でもなく、遠い未来を考える人間ではなおさらありません。老後の対策を立ている人も多いでしょう。韓国の男が平均的に何歳で何をしなければならなくて、何歳でこうしていなければならないということは、僕は正直よく分からずに知らずにきて知識もあまりないんです。いくら貯金すべきか、結婚資金にはいくら必要なのか、こうしたことよく分からないです。僕はそんなふうに生きる人間ではありませんね。僕は僕が一番おもしろいと思うことをしながら生きるだけです。おいしいものを食べたときが幸せで、良い音楽を聴いたとき、良い映画を観たとき、美しい女性と会ったとき、愛する女性とセックスするとき、そういうときが一番良いと思う人間です。僕は多くのことをしません。とはいえ、新しいことを探してやるほうでもないんです。だけどラップはもう10年以上やっています。それはすべて自分がおもしろくてやってることです。『THE KID』という曲をタイトル曲にしたのは、その曲がそのまま僕自身だと考えたからです。僕は子供です。大きくなったとは全く思いません。全く大人ではありません。分別をつけたくもないし、分別をつけることもできない人間形態だと思います。ただそのような人生の流れを生きているという感じです。楽しいことだけやって生きていますね。そのような意味で書いた歌詞です。この曲全体がそのような話で綴られています。

 

先ほどの質問と似ていますが、Huckleberry Pさんにとってラップとはどんな存在ですか?

フリースタイルと同じで、一番おもしろいおもちゃです。大人の立場で見たら、一番おもしろいおもちゃが自分の人生を大きく占めることはできないかもしれません。だけど子供たちにとってはおもちゃがすべてじゃないですか。僕も同じです。それ以外の何でもないです。僕はそうやって生きてきているので、ラップは僕にとって最高のおもちゃです。

 

今回のアルバムを含めてHuckleberry Pさんのこれまでの作品を見ると、各アルバムの色に合うようによく溶け込んでいるようです。違和感のようなのものが全くないのですが、カメレオンのように自身の色を変えて溶け込むために努力した部分はありますか?

意図はしたし、パクリもしなかったと思います。ただそれだけのスペクトルはあると思います。また、そのスペクトルが構成されるまでに影響を受けた音楽的要素が単にヒップホップだけでなく、幅広かったようです。子供の頃にピアノを弾いていたことも歌詞で何度も語ってきましたが、Panic(※25)をはじめ、その時代の人々の音楽をたくさん聴いてきました。展覧会(※26)とかToy(※27)などから受けた影響も絶大だし、バンド音楽も大好きだったことが僕に多くの影響を与えたと思います。だから様々なジャンルをやったときにラップに違和感がなく、一番おもしろく実現することができる人のうちのひとりではないかと思います。

※25 Panic:哲学的な歌詞と幻想的な雰囲気が特徴的な韓国のデュオ。1995年デビュー

※26 展覧会:韓国のホップグループ。1993年、MBC大学歌謡祭でジャズ風の楽曲『夢の中で』で大賞を取ってデビューした

※27 Toy:1994年に結成された韓国のデュオ。現在はメンバーのひとり、ユ・ヒヨルのワンマンバンド形式となっている。ユ・ヒヨルは『ユ・ヒヨルのスケッチブック』という音楽番組の司会者としも有名。個人的にはこの番組が韓国の音楽番組で一番好き

 

分かりました。アルバムの話はこのくらいにして、別の質問をします。今年1月からHIPHOPPLAYA RADIOのDJをしていますが、それによって変わった部分や影響を受けた部分はありますか?

公には初めて話しますが、率直に言って負担が大きかったです。さっき話したとおり、僕は新しいことに挑戦するタイプではなく、昔のことや馴染みのあることが好きな人間なので、馴染みのないことや自分が好まないことには手もつけません。無理強いもダメです。体が拒否します。だから今までは好きなことだけをやって生きてきました。でも考えてみたら人生はそんなふうにばかり生きることもできず、僕が拒否できない環境が一度や二度は訪れるはずで、そういったとき大変な思いをするだろうと思いました。だから嫌いなこととまでは言わなくても、馴染みのないことでもやっていかなければならないと思いました。そしてこれは僕の仕事とかけ離れてるわけでもないですし。もし物流センターでアルバイトをすることだったらできなかったでしょう。だけどこれは僕の適正にもある程度通用することなので引き受けました。でも最初はB-Freeにしてもそうですが、少し難しい部分がありました。成長したのか分からないですが、今はちょっと合ってきて楽しいです。振り返ってみると本当に良くやったなぁという思いがします。

 

ラジオでのHuckleberry Pさんの選曲を見ると、一貫しているひとつの特徴があるようです。本当にBoombap一色の……。影響を受けた海外のヒップホップソングは何ですか?

ちょうど高校1年生のときから3年生のときまで聴いていた音楽と、20歳までに聴いたその時期の音楽が最も僕の中に残っているんですが、最初にBlack Star、そしてCommon、Big Pun、Big L、それから『The Blueprint』時代のJay-Z、Nasも言うまでもなくて、その当時のミュージシャンが僕に途方もない影響を与えたと思います。

 

反対に韓国ヒップホップでフェイヴァリットMCを5人を選ぶなら?

当然Garionがいて、Sean2Slow兄さん、知らず知らずのうちにBobby Kimも僕に影響を与えたし、Paloalto兄さんとThe Quiett。その2人の影響は途方もなかったですよ。そしてMasterplanのミュージシャンから多くの影響を受けました。あとP-type兄さんを絶対に抜かすことはできません。Verbal Jint兄さんもだし。5人は選べません。

 

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分かりました。そろそろインタビューも終盤です。今後の計画を教えてください。

アルバムを出して活動するということが、アンダーグラウンドのミュージシャンはみな全く同じです。ライブをたくさんやって、アルバムをさらに多くの人に聴かせることを希望しているくらいで、ただそれを熱心にやりたいです。僕はかなり変わってると言ったじゃないですか。すべてのことがただ楽しくてやってきたことで、結果的に最初に考えていたことはみんななくなりましたよ。それ以外はみんなうまくいきました。僕という人間を作ってきて、HI-LITEもそうだし僕という人間もそうだし本当に変わってます。僕はラップだけでした。ラップだけで、ラップがあまりにもおもしろくて、ライブをすることが楽しすぎて、僕のネームバリューがこうやって上がってアルバムキャリアが積もったことが本当に不思議なことです。だからこれからもそんなに神経を遣わずにやっていきたいです。最終的にはこんな人間でも韓国で楽しく生きていけるということを見せたいです。もう30歳を過ぎたからこれをやらなければならないとか、何かを準備する人生を僕は生きていないですね。そういうものは分からないです。分からないけど今このように生きているでしょう。元気に暮らしています。皆さんが考えるような、ミュージシャンの窮乏した人生といったものはありません。僕は元気に暮らしていますよ。とても楽しんで、さっき話したように、もし誰かが周囲の人たちから「お前はそんなんで、何をどうやって暮らしていこうとしてるんだ」と言われたとき、Huckleberry Pを見てみろと言えば人々がうなずけるように生きたいです。それを既にあった方式通りにやるのではなく、このように生きても構わないということを教えたいです。韓国はものすごく画一化されてきていますね。男性も女性も結婚も同様に。いくつぐらいでどのようにしなければならない。新居はこれぐらいにするべきだ。教育はどこでするべきだ。僕はこのようなシステムに人々が知らず知らずに吸収されていると思います。僕はそれを破りたいです。僕ひとりでできる問題ではなくて、僕に影響を与えた僕たちの世代、そして次の世代がするべき問題だと思います。こんな考え方をするミュージシャンの問題でもあるようです。とにかく僕は今後もしっかり食べて楽に生きていくつもりです。おもしろいことをやりながら、そして皆さんもそうしたらいいですね。あまり周辺に振り回されずに。

 

HI-LITEとしての計画も教えてくだされば。

HI-LITEの目標は、「次のレベルに行くためにはどうすれば良いのか」です。会議のたびにいつも話し合っていますよ。結論は良い音楽です。良い音楽をすると良い機会が訪れるし、そうであってはならないというものは僕たちが全部破ります。Illionaire Recordsも同じだと思いますが、計画というならば素晴らしいショーを見せて良い音楽を聴かせていくのが計画です。

 

もう少し具体的に言うならば(笑)

はい。詳細を話しますね。HI-LITE4周年パーティーが5月にあって、前にパーティーをやったBEHIVEというクラブで開催する予定です。多くの方々がご存知だと思いますが、HI-LITEのパーティーは本当に××なパーティーです。たくさんの方に来てもらえたら嬉しいです。例年同様にサマーツアーをやりますが、今年は場所が追加されるようです。韓国内でも追加になりますし、恐らく日本にも行くことになりそうです。とにかくもっとおもしろくなりそうです。例年に比べて観客数が増えることを見るのも僕たちにとっての大きな楽しみですね。「Veteran3」と「焚身」も楽しみです。来てくれる方々が多ければ嬉しいし、もちろんそうでなくても僕たちはライブを楽しみます。HI-LITE公演は本当に呆れます。来てストレスを発散してくれたらいいですね。そして夏になれば各種公演で僕たちを見ることもできますよ。

 

期待しています。最後に言いたいことはありますか?

いつもアルバムを出してインタビューをするとき、加える話がたくさんあるのですが、今回はその必要もないくらいアルバムに伝えたいことをすべて入れました。ただ『gOld』というアルバムを最初に作ったとき、ちょっと不親切なアルバムだと思いました。Pinodyneのようにすべての人々が好きにはならないと思ったのですが、ある意味かなり親切なアルバムとも言えます。人間パク・サンヒョク(※Huckleberry Pの本名)のチュートリアルのような感じがあって、これを聴きさえすれば、あえて僕が話をしなくても僕がどんな人間でどのように暮らしてどんな考えを持って生きているのかが分かるでしょう。

 

出所:HIPHOPPLAYA (2014-04-18)
日本語訳:Sakiko Torii

 

 


 

2014-09-03 追記

この記事を翻訳したことをHuckleberry Pご本人に話して、印刷したものを渡したら、ものすごく喜んでくれました! 「Stop Dumping Music」など日本人が知らないことは説明も書いたと伝えたら、超ビックリしてて、すぐにインスタグラムにアップしてくれましたー!

huckpinstavivi

Huckleberry Pコメント:わあ、僕のHIPHOPPLAYAのインタビュー、本当に長いほうなのに、これを全部日本語に解析して整理してプレゼントしてくださった……。スーパー感動

 

で、知らぬ間に撮られていたこの写真。私がHuckleberry Pに「これ翻訳したんだよ」って説明をしているところです ↓

showinghuckp

何ページにもわたるインタビューをペラペラとめくりながら、どれだけ大変だったかをHuckleberry Pに切実に訴えていたら、B-Freeが「あはは、 本みたい!(爆)」となぜか一番喜んでいたのが可愛かったです。

いらないだろうと思って、ただ見せてあげるために持っていったんだけど、「これくれるの?」って言われたので差し上げました。逆に「え、もらってくれるの?」って感じで、本当に嬉しかったです。しかもインスタグラムにまで上げてくれて……。こっちこそスーパー感動!!!

ちなみにこの写真の中でパロアルトさんが手に取って読んでいるのは、パロアルトさんのこちらのインタビュー翻訳記事を印刷したものです→ Interview | Paloalto – Chief Life by HIPHOPPLAYA

 


 

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Sakiko Torii
About Sakiko Torii
BLOOMINT MUSICの運営者である鳥居咲子は、幼少期よりピアノと音楽理論を学び、ロンドンに音楽留学をした。現在は音楽記事の執筆、ライブ主催、楽曲リリースのコーディネート、メディア出演など、韓国ヒップホップに関する様々な活動を展開している。著書に『ヒップホップコリア』。音楽以外に関するネタを集めた趣味ブログ『BLOOMINT DIARY』も運営中。別名ヴィヴィアン。
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