Column | Stereophonics (2/2)


Column | Stereophonics (1/2) からの続きです。

スチュアートの解雇から2年後、新たにアルゼンチン人のJavier Weyler(ハヴィエ・ウェイラー)がドラマーとして加入しました。ベネズエラのバンドで9年間活躍したのち、2001年にサウンドエンジニアリングの勉強をするためにロンドンに移り住んだハヴィエ。

そんなハヴィエがエンジニアとして働いていたスタジオで、ステレオフォニックスの4枚目のアルバム『You Gotta Go There to Come Back』をレコーディングをしたのが出会いだったそうです。このアルバムの中でもハヴィエがパーカッションを叩いたりドラムのプログラミングをしたそうです。スチュアートの脱退後、ケリーとリチャードが2人で次のアルバムの作業に取り掛かっていた時、ハヴィエが2人を手伝って、最終的にバンドのドラマーとして正式に加入することになったそうです。

そうやって2005年に完成した新生ステレオフォニックスの5枚目のアルバム『Language. Sex. Violence. Other?』では、今までの彼らとは桁違いにクオリティが高く、重厚感あるサウンドでロック魂を見せつけてくれました。


Language Sex Violence Other

音楽性のカラーが大きく変わって、最初はかなり違和感を覚えました。「ステレオフォニックスっぽくない!」って一瞬抵抗を感じたんだけど、わりとすぐ慣れた。ルックスも一気に垢抜けて、本当に新しく生まれ変わった感じに興奮しました。

アルバムから最初にシングルカットされた『Dakota』は、彼らの最大のヒット曲となりました。イギリス国内だけじゃなく、ヨーロッパ全土で1位を総なめ。私的にはそんなに大好きでもないんだけど、最大のヒット曲なので貼っておきます。

そして次にシングルカットされた『Superman』という曲。これが本当にかっこよくて、大好き! だけど残念ながら『Dakota』ほどはヒットしませんでした。こっちのほうが断然かっこいいのになー。そしてこの曲のミュージックビデオを観て、初めてケリーがイケメンなことに気づきました(笑) 曲もビデオも男くさくて、ため息が出るわ~。

このあとシングルカットされた『Devil』もいいです。このハードなサウンドとルックス。デビュー当時の『Not up to you』の映像を覚えていますか? こんな風になっちゃうなんて想像もつきませんでしたね!

この曲って、サビとかブリッジで「イエーーー!」とか「アーーー!」とかケリーが叫ぶ部分が、エレキギターの音と区別つかないんですよね。ケリーのジャリ声のピークはこの時期ですね。この次のアルバムからは歌唱法を変えたのか何なのか、ジャリっぷりがおとなしくなります。

このアルバムを引っ提げてのツアーで、初めて彼らのライブに参戦しました。本国イギリスでは一度のライブに5万人が集まる彼らですが、日本では知名度が低いため、キャパ800人程度のライブハウスでやるという冗談みたいな話。

オールスタンディングのロック・ライブなので暴れまくる人たちに押されて蹴られてボコボコにされるのがイヤなのか、前のほうを陣取る人があまりいなくて、余裕で最前列に行けちゃいました。実際ボコボコにされて大変だったけど、2メートルぐらいの至近距離で見たケリーは死ぬほど男前だったし、リチャードとは何度も目が合うし、デビュー当時の曲から最新曲まで網羅してくれて、夢なんじゃないかと思うくらい最高に楽しい時間でした。演奏クオリティの高さにはため息しか出ない。古い曲と最新曲の配分もバランスがいいし、ノンストップで20曲ぐらいガンガンやっても一切スタミナが切れない。ヤバいです、ライブ。ロック好きなら絶対に一度行って欲しい。

そしてこの時のライブでは、リチャードが投げたピックをゲットできたんです! イギリスにいた頃はテレビの中でしか拝めなかった雲の上の人たちなのに、ピックがゲットできるなんて!!! これほど日本人で良かったと思ったことはありませんでした(笑)

そしてこの時のワールドツアーを収めたCDとDVD『Live from Dakota』は、ファンの間で語り継がれる名盤となっています。うちの会社にUKロック好きの男子がいるのですが、彼もこのアルバムの素晴らしさについて熱く語っていました。特に『Traffic』での大合唱はヤバいよね~って会社で盛り上がったりしました。


Live from Dakota

 


 

そして2007年、6枚目のアルバム『Pull the Pin』をリリースします。


Pull the Pin

ここでまさかの原点回帰。デビュー当時までとは言わないけど、2~3作分くらいは戻った感じ。だけど5作目の雰囲気を残した『Bank Holiday Monday』『My Friends』みたいな曲も入っていて、いい具合にミックスされてるというか。

このちょっと前にケリーが初のソロアルバムを出したんだけど、これは大衆性を完全に排除して自分がやりたいことだけを詰め込んだもので、いくらなんでもそこまで商業性を排除するのはやりすぎだろうってくらいの出来でした。嫌いじゃないけど、ちょっと飽きる感じ。それを経て、ケリーの中に元々根付いていたサウンドと前作で構築された新しいサウンドが融合したのではないかと思います。静かな曲にしても初期の頃はメローな感じがあったんだけど、この時期からは物憂げな雰囲気が漂うようになりました。

この6枚目のアルバムの代表曲『It Means Nothing』は、同年に起きたロンドン同時爆破テロを受けて作った曲です。政治的な詞は書かないケリーですが、さすがにこのときは書かずにいられなかったのかな。子供も生まれて(生まれたのは5作目リリースの前だけど)、守るべき人ができたことも大きいのでしょうね。

俺たちはまた自分を見失ってしまったのか? 学びを忘れてしまったのか? みんな愛する気持ちは同じだ。ただ名前が違うだけだ。また爆弾が爆破したら? 大切な人を失ったら? 争うことなんて意味がない。何も意味がない。君を失ったら、何の意味もない。

そういうことを歌っています。大切な人を守りきれなかった内容のMVがとても切なくて、当時はアホみたいに何度も何度も観ました。

この曲のほかに、個人的には『Pass the Buck』という曲がお気に入りです。初期のようなサウンドを感じさせつつ、演奏クオリティが格段に上がっているため、彼らの成長が明確に感じられるところがいいです。サビのノリの良さもいいですね。

そしてまたまたライブネタ。この年は2月と7月に来日してくれて、両方とも行ってきました。そして7月のほうでは、人生初の出待ちというものをやってみました。なぜ出待ちをすることにしたかというと、ある日公式サイトを見ていたら「サインはどうやったらもらえますか?」という質問がされていて、「彼らは出待ちをするような熱心なファンが大好きなので、出待ちして頼んでください」って回答されてたんです。ど・ん・だ・け!!!

そしてちょうどそのちょっと後に来日したので、試しに公演後に裏口に行ってみたのです。そしたら、出待ちしてるのが10人くらいしかいなくて! イギリスだと5万人集める大スターなのに、この差(爆)

そして待つこと20~30分。出てきました! 愛しのケリーとリチャードとハヴィエが! サポートギタリストのAdam Zindani(アダム・ズィンダニ)も!(アダムはこのツアー終了後に正式なメンバーとして加入しました)

完全にテンパりながら写真を撮ってサインをしてもらいました。めっちゃ親切でした。だって「ほかにサイン欲しい人いる?」って自分たちからファンに向かって聞いてくれたりするんですよ(笑) これが、そのときしてもらった3人のサインです。隣りにあるのは2005年のライブでゲットしたピックです。

stereophonics1

まさか本当にサインがもらえると思ってなかったので色紙とかも持ってきてなくて、慌てて手帳を引きちぎって書いてもらいました。スポンジボブの手帳なので真っ黄色。インテリアとしては主張が強すぎて、なんで黄色なんだろうって見るたびに切なく思います。

サインをもらったりしている最中、完全に気が狂った私が ケリー!!ケリー!!ケリー!!! と連呼していると、ケリーが苦笑いしながら私のほうに向かって歩いてきました。苦笑いしながらってところがポイントですよ。かなりの苦笑いでした。そして私のほうにサッと手を差し出してケリーから握手してくれたんです! イギリスでは100メートル以内にも近づけないだろうに。これほど日本人で良かったと思ったことはありませんでした(2回目)

ツーショット撮影に成功したのはドラムのハヴィエだけ。しかもテンパってたからカメラがズーム設定のままで、尋常じゃないくらいのドアップで撮られてました(笑)

stereophonics3

stereophonics2

 


 

少し話が飛びますが、2007年にイギリスのBBCの企画でビートルズのカバーを現役アーティストたちが行うという番組がありました。実際にビートルズのレコーディングで担当をしたエンジニアがエンジニアリングをするという素晴らしい企画。

その番組で、ステレオフォニックスは『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』をやることになったのですが、これがなかなか良かったので動画を貼っておきます。ステレオフォニックスの出番は49:30からです。演奏は57:18から始まりますが、それまでのドキュメンタリーも面白いです。

ステレオフォニックスは『Sgt. Pepper』の通常バージョンをやるつもりで来たのですが、彼らに任されていたのは全然違うリプライズ・バージョンでした。ちゃんと伝えたのにとか、知らなかったとか、ゴタゴタやるところから始まります(笑) そしてとりあえずリプライズ・バージョンを聴いてみようってことになって。音を聴きながら、ベースのリチャードが音をつかんでいく様子がかっこいいです。

全員でリハーサルをしてから本番で完璧な演奏を披露するわけですが、エンジニアの方が最後に「君たちうまいね~」って感心してるのがツボです(笑) この時すでにイギリスを代表する大御所バンドとなっていたステレオフォニックだけど、ビートルズ時代から活躍してるエンジニアからしたらペーペーなんだろうなぁと(笑)

 


 

そして2009年、アダムが正式にバンドに加入してから初めてのアルバム『Keep Calm and Carry On』が発売されました。7枚目のフルアルバムとなります。


Keep Calm and Carry on

このアルバムは新規のファンには好評だったようですが、旧来のファンにはちょっとサウンドが軽すぎて物足りなく感じたと思います。私はちょっとガッカリしました。っていきなりネガティブ発言で恐縮ですが、『100MPH』はかなりの名曲です。前作の『Daisy Lane』という曲に雰囲気が似ていますが、こちらのほうがよりドラマチックな感じ。

ケリー、大人になったなぁって思った。私より年上だけど(笑) 音楽に深みが出た。前作の『It Means Nothing』にしてもそうだけど、哲学的というか、自分なりの思想を伝える音楽ができるようになったんだなぁってしみじみ。元々ストーリー性の高い音楽をやる人だったけど、この辺からはフィクションからノンフィクションになっていった感じ。歌い方も抑え気味になったし、音を無駄にかぶせずにシンプルに作るようになったし、様々な面で成熟したように感じました。

前作で少し原点回帰したなぁと感じたんだけど、今作では完全なる原点回帰。今まで築き上げたものが生かされずに初期サウンドに戻っちゃった感じがした。サウンドも軽さを飛び越えて薄っぺらいというか。5作目のような重厚感が消え去って、私的にはあまり納得がいかなかったです。

そしてイギリス国内でのセールスにも同じ反応が出ていましたね。それまですべてのアルバムが1位を獲得してきたのに、このアルバムは最高11位で終わってしまいました。私自身もアルバムに納得してないからこの結果を見ても仕方ないって思うんだけど、ずっと続いていた記録がここで途切れちゃったのはやっぱり寂しかったです。

そして翌年2010年にまた来日ライブがあって、またまた出待ちをしました。納得いってないとか何とか言いながらも、やっぱり大好きですから!!!

このときは出待ち2回目ということで、だいぶ慣れたもんだった。ほんと人間ってすぐ慣れるから怖い。普通にハヴィエに「これ、前回一緒に撮ってもらった写真だよ」って言いながら携帯を見せたりして。あと、アダムに写真撮らせてって言ってカメラを向けたら「え? 一緒に写らなくていいの!?」って突っ込まれて、ツーショットを撮ることに。アーティスト側からそんなこと言ってくれるなんて、ほんといい人たちだわー。

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またしても肝心のケリーとはツーショット撮れず。ほかの人と撮ってるところを撮るという悲しい図。出待ちファンが10~20人程度とはいえ、やっぱりダントツで引っ張りだこですからー。

stereophonics5.jpg

会社のイギリス出身の若い帰国子女にこれらの写真を見せたら「え? え? なんでそんなことできるんですかー!?」って驚かれて、さらに「ちょっともう一回見せてください! なんでですかーー!?」って完全にパニックに陥ってました(笑) イギリスでは雲の上の存在だからね。これほど日本人で良かったと思ったことはありませんでした(3回目)

そして前回の教訓からCDを持参して、歌詞カードにサインをしてもらいました。なんと全員分! これはもう本当に自慢で、イギリス人の友人たちにメールで送りまくりました(笑)

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とっても楽しかったライブでしたが、それから2か月後、スチュアートの訃報が入りました。詳細は「Column | Stereophonics (1/2)」に書いてある通りです。

これまで13年間、一度も止まることなくワールドツアーをして、その合間にアルバム制作&リリースというスタイルで走り続けてきたステレオフォニックスの歩みが止まったのはこの時からです。この時点ですでにスチュアートの脱退から7年も経っていたし、そのせいだけで活動を止めたとは思わないけど、それでもそのまま2年経っても何もリリースしない、ライブもしないという状態は彼らとしては異常なことだったし、すごく切なかったです。

そんなある日。去年だったかな? 公式サイトからのメルマガで知ったんだっけな? ハヴィエが脱退したって知って。なんとなく「やっぱりな」って思った。ハヴィエがほかにやりたい音楽があるんだって。元々ソロプロジェクトもやってたし、ロンドンマラソンを通して癌の寄付金募集キャンペーンをしてたし(私も寄付しました)、新たな道を進みはじめたハヴィエを応援しなきゃね。

そして新しくドラマーのJamie Morrison(ジェイミー・モリソン)が加入して、先月、実に3年ぶりのアルバム『Graffiti on the Train』がリリースされました。2010年、一緒に楽しく写真を撮ったライブから3年。スチュアートの死から3年。やっとまた新たな一歩を踏み出したステレオフォニックスです。


Graffiti on the Train

が! しかし!!!

まだこのアルバム、聴いてないのです……。

発売日に買ったんだけど、iPodに取り込むだけ取り込んで、まだ聴いてない。なんか怖くて聴けない。新曲のミュージックビデオをいくつかチラッと観たんだけどピンと来なくて。真剣に聴いてみて、真剣にピンと来なかったら、もう二度と戻れない気がして、なかなか聴けずにいるのです。

スチュアートと3人時代のステレオフォニックスが愛おしすぎて、ハヴィエと3人時代のステレオフォニックスが大好物すぎて、それでも今の彼らを受け止めなきゃいけないとは思ってるんだけど、なかなか人の気持ちってそう簡単に整理つかないのよね。っていうか、今は私自身が韓国の音楽にすっかりハマり込んでるというのもあるんだけど(小声)

だから、もし心の整理がついてこのアルバムを聴いて、そしてもし何か書きたいと思うことがあったとしたら、その時にこの部分を書き換えるかもしれません。書き換えないかもしれません。

 


 

最後の最後に後ろ向きで後味の悪い終わり方になってしまいました。

だけど、私のステレオフォニックスへの愛は伝わりましたよね!? いつも何かと記事がダラダラと長くなっちゃう私ですが、まさかここまで長くなるとは思わなかった。

この記事を書きながら、自分自身の15年間を振り返ることができたのが一番楽しかったです。1998年に彼らを知り、彼らの音楽がいつも流れている街でいろんな経験を積み、日本に帰国後に今更って感じで完堕ちし、ライブを何度も楽しみ、本当にいろんなことがあったなあ。早く気持ちに整理をつけて、新しいアルバム聴かないとー!

 


Sakiko Torii
About Sakiko Torii
BLOOMINT MUSICの運営者。イギリスでの音楽留学経験を生かした音楽的に深みのある記事が売り。独自スタイルのライブ企画、楽曲リリースのコーディネート、ライター活動、各種メディア出演など、韓国ヒップホップにおいて多方面に活躍中。著書に『ヒップホップコリア』。別名ヴィヴィアン。
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