音源販売価格と著作権料

Written By Sakiko Torii

※この記事は2012年10月に書かれたものです。年月の流れに応じて音源収入の状況も改善してきており、日本でもストリーミング・サービスが盛んになって徐々にCDの売れ行きが落ちたりと、状況は刻々と変化しています。以下はあくまで2012年当時の状況および筆者の感想だとお考えいただければと思います。

 


 

最近ニュース記事やツイッターでこの手の話をよく耳にするので、簡単にまとめてみました。まずは下のグラフをご覧ください。

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Credit: JerrykMusic@Twitter

 

これは韓国のラッパーのJerry.kがツイッターに載せていた画像で、各国の音源1曲あたりの最低販売価格を表したグラフです。日本では1曲あたり2,237ウォン(2012年10月現在のレートで約160円)で販売されているのに対して、韓国では60ウォン(約4.3円)ということです。そしてその60ウォンのうち、著作権料はたったの10.7ウォン(約0.8円)なのだそうです。一方、流通会社は40~57.5%の収益配分を取るということです。アメリカでは流通会社の取り分は30%だそうです。

1ダウンロードあたりの著作権料が、1円にも満たないんですね。韓国ではただでさえ違法ダウンロードが多いというのに、これでは生活していけません。ビートメーカーのギャラも1万円程度だと聞いたことがあります。新しいレコーディング機材を買うのもつらいそうです。

つい先日もPSYの『江南スタイル』の韓国国内における著作権収入が3,600万ウォン(約250万円)だという記事を読みました。『江南スタイル』はご存知の通り世界的に大ヒットしたので、PSYの収入は100億円にも上るそうですが、著作権収入としてはたったの250万円なんですね。あれだけ世界を賑わせたヒット曲を出しても、一般サラリーマンの年収にも満たないとは、驚きです。PSY自身はテレビやライブ出演などでこれからもガポガポ稼げるでしょうけど、共同で作曲をしたユ・ゴンヒョンは最終的にどのくらい受け取ったのか気になるところです。

ところでアメリカのiTunesでは、1曲99セント(約78円)でダウンロード販売した場合、著作権料は9.1セント(約7円)だそうです。日本では、私の知っている範囲の話ですが、1曲250円で販売されたらディストリビューターが流通会社から受け取るのは150円くらいで、そこから40円くらいが引かれてレーベルに110円くらいが入ります。そこからレーベルが30円くらい引いて80円程度をアーティストたちに渡します。1曲につき作詞家、作曲家、歌手など様々いるので、1人あたりの受取額は10円程度です。

アメリカでも制作者側から「著作権料をもっと値上げして欲しい」という声が上がっているのですが、「著作権料を値上げするには、販売価格を値上げしなければならない。そうしたらユーザーは買わなくなるので、著作権料は値上げできない」というのがアップル社の回答です。1曲あたり10円程度の値上げだったら、影響はほとんどないような気もしますが。10円の値上げも渋るような人は、そもそも最初から違法ダウンロードしかしない気がします。そもそも日本のiTunesでは1曲あたり250円が主流なので、アメリカの99セントだってかなり安いですよね。

では、ダウンロードではなく、CDを買えばもっとアーティストの助けになるのでしょうか?

下図をご覧ください。

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Credit: yuuekibot@Twitter

 

こちらは日本のCD売上配分のデータで、1,000円のCDが1枚売れた場合の内訳です。作詞家、作曲家がそれぞれ17円、アーティストは9円ですね。今や10万枚売れたらスーパーウルトラ大ヒットと呼べる時代ですが、10万枚売れたとすると、作曲家の取り分は170万円ということになりますね。そこまでのスマッシュヒットソングを作曲したのに、170万円。毎年クリスマスになると売れる定番曲みたいになれたらいいですが、大抵はこれポッキリで終わりますからね。

ただ、ある程度のヒットソングになると、タイアップでのギャラが入ってきたり、カラオケや放送で使用される場合の使用料が継続的に入ってきます。実は売れっ子作詞家、作曲家にとっては、カラオケでの印税が一番の収入源だという話もあります。ロードという曲で有名なあの方も、カラオケのおかげで、今でも毎年1,000万円が入ってくるそうですね。

レコード会社の取り分が半分以上であることに驚いた人もいるかと思いますが、大手レコード会社ともなると、何千何万という社員を抱えています。それに、多くの場合はレコード会社がレコーディング費用を負担するので、使った分は回収しないといけません。

小売店の取り分の多さも目立っていますね。どうしても「なんで作った人より、売る人のほうがたくさんもらってるの?」と思ってしまいます。1,000円のCDを10万枚販売した場合、作曲家が170万円を受け取ると上に書きましたが、レコード会社は5,460万円、小売店は3,000万円を受け取ることができます。でも、小売店は全国にあるものすごい数のお店全体の合計なので、各店舗としては100枚売れたら3万円を受け取る感じです。そうやって見ると、結局たいしたことないですね。

しかも小売店は値引きもしますからね。値引きしちゃったら、100枚売れても2万円しか利益をあげられないかもしれない。ちなみにCDは発売後1年間は値引きができないことになっています。但し、DVD付きのアルバムはCDではなくDVD扱いになるので、値引きができるんです。

なんにせよ、この激安著作権料は由々しき問題ですね。本当に才能のあるアーティストが、生活のために音楽をあきらめることにも繋がるし、いい音楽を作るよりも売れる音楽を作るという方向に走るしかなくなります。そこそこ売れればそこそこ稼げるという構造さえできていれば、商業的な方向に走る必要性が減ります。もちろん大スターになってスーパーお金持ちになりたい人は商業主義に走ればいいと思いますが、そうでない人はほかに副業をして安定収入を得ながら、空いた時間に創作活動をしたほうがいいということです。現にそういう人たちは増えてきています。日本でも韓国でも、才能のあるアーティストたちが音楽制作やライブ活動を夜な夜なやりつつ、日中は学校で音楽を教えたり、全然別の仕事をしながら収入源を別途確保している人が少なくないです。

では、私たちリスナーには何ができるのでしょうか?

YouTubeで聴くだけじゃなくて、ちゃんとダウンロードするなり、CDを買うなりするしかないですよね。あとはライブに足を運ぶことも大事です。サービスに対する対価を払うという、至極当然の対応です。いい音楽を聴いて、楽しい時間を過ごさせていただくのだから、それに対する使用料を支払う。映画を観るのも、レストランで食事するのも、みんな同じだと思います。違法ダウンロードは、万引きや食い逃げと同じ行為なんです。

アイドルの場合はバラエティ番組、CM、雑誌等のギャラが高額なことも多いし、写真集やグッズなどで稼ぐこともできます。問題はアンダーグラウンドのアーティストたちです。これはもう本当に、ただ単にお金を払って音源を買う以外、どうすることもできないと思います。経済的に余裕のある人は、思い切ってお気に入りのアーティストに高額寄付するのもありだと思います。中世の音楽家たちのように、パトロン制度の復活です。

あとは、社会や音楽業界の構造が変わるしかないですね。違法アップロードの取り締まりを強化するとか、違法ダウンロードが万引きや食い逃げと同じ行為だというモラルを植え付けるか、パトロン制度を採用するか。アイドルの特典付きCD販売も、ひとつの戦略としてはアリだと思います。ただ、その場合はオリコンチャートが意味を成さなくなるので、チャート制度も合わせて見直してほしいと思ったりもします。

私自身の話で言うと、私はCDコレクターなので、ダウンロードではなくCDをゲットしないと気が済まないタイプです。そしてここ数年は、YouTubeで試聴してからアルバムを買うことが圧倒的に多いです。掘り出し物を見つけるきっかけがたくさん転がっているのがYouTubeです。もちろんiTunesでも90秒視聴できるので、曲を買うか買わないかを判断する材料としては、iTunesでも十分機能していると思います。でも、そもそもiTunesに上がってない曲が多いんですよね。特に韓国ヒップホップは少なすぎる。せめて各レーベルやアーティストが、自分のサイトで視聴機能つきの販売をしてくれたらいいのにと思います。とはいえ購入場所がアーティストごとに分散すると探しにくくなるので、できればiTunesにアップされている曲をもっと充実させてほしいです。

あるいはYouTubeに90秒まで視聴できる特別ページができたら最高かも。お金に余裕がない人も90秒ずつ聴ければ結構楽しめるし、お金がある人はダウンロードすれば曲全体を楽しめる。iTunesにちゃんと曲がアップされていることが前提ですが。昔、2曲入りのシングルに毎回1,000円を出していた時代を考えたら、2曲400円でダウンロードできるなんてすごく恵まれているわけですし。

途中から私の妄想になってしまいましたが、少なくとも私自身はYouTubeで試聴しなければ買わなかったと思われるアルバムが何十枚もあるということです。だからといって違法アップロード行為を正当化はできないけど、個人的には今後もYouTubeで新しい音楽をどんどん発見して、気に入った曲があればお金を出して買っていくつもりです。そしてこのサイトで紹介した曲の中で、もし気に入った曲があれば、ぜひ正規にお金を出して買っていただけると嬉しいです。

writerSakiko Torii

BLOOMINT MUSICの運営者。韓国ヒップホップ・キュレーターとして執筆、ライヴ主催、音源/MV制作サポート、メディア出演など多方面に活躍中。イギリスに音楽留学していた本格派。著書に『ヒップホップコリア』。

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