Column | Noel GallagherによるMステ出演の感想とOasisの紹介

俺があそこにいた理由は神のみぞ知る


先週の金曜日、来日中のイギリス人アーティスト、Noel Gallagher(ノエル・ギャラガー)がテレビ朝日の歌番組『Music Station』通称Mステに出演するということを知り、Twitterにこんなことを書いてみました。

 

今日のMステには他のアーティストをクソミソに言う代表格のノエル・ギャラガーが出演します。ノエルは、自分の好きなアーティストをクソミソにけなされても全然気にならないくらい才能溢れるアーティストなので、ご興味のある方はぜひチェックしてみてくださーい♪

 

ノエルのMステ出演、個人的にはやっぱりちょっと心配してたんだけど、ちゃんと最後までお行儀よくいたようで安心しました。ところが出演後にやってくれましたよ。自身のブログにMステ出演の感想を書いたのですが、期待通りのハイセンスな辛口ジョークで溢れていて、久しぶりに聞いたノエル節に興奮しました!

ただ、巷に出回っている日本語訳は必要以上に悪意を込めて訳されていると思います。あれだとまるでノエルがAKBのことをすごくバカにしてるみたいに伝わっちゃうので、私なりにニュアンスを正確に翻訳してみました。

 

俺があそこにいた理由は神のみぞ知る

あの日本の歌番組は、まあ予想していた通りだけどキ●ガイだったよ。あの番組はいったい何だってんだ? さっぱり分からん。恐らく俺らの国でかつて放送されていた『トップ・オブ・ザ・ポップス』みたいなもんなんだろうけどさ(ご冥福をお祈りします)。

何もかもが軍隊のように正確に遂行されたよ。「8:34に控室から出てきてください」「8:37にA通路に出てきてください」「8:39にこの人と握手してください」「8:41にパフォーマンスを開始してください」って感じでさ。

何よりも驚いたのは、それが全部時間通りに進んだってことだよ!

いろんな日本人の出演者たちがいたんだけど、その中にAKB48とかいう人工的なガールグループがいてさ。これマジの話だけど、そいつら30人くらいいてさ、みんな13歳から15歳くらいなんだよ! 自分が急にジジイになったような気分だったよ。

司会者はジェームズ・ボンドの悪役にピッタリの爺さんでさ。うるさくて、めまぐるしくて、ごちゃごちゃした番組だったよ。俺があそこにいた理由は神のみぞ知るってことさ。

出所:ノエルのブログ

 

「ご冥福を……」っていうのは、『トップ・オブ・ザ・ポップス』という歌番組がすでに終了しているからなんですね。シュールだわー。こういう辛口ジョーク、大好き!

イギリスではかつて、今のK-POPアイドルグループのブームみたいな感じで、アイドルブーム旋風が巻き起こっていました。1995年~2005年の10年くらいかなぁ? で、『トップ・オブ・ザ・ポップス』ですが、私としてはトークメインのMステよりも、韓国の『人気歌謡』や『Mカウントダウン』に近いものを感じます。人気者が司会を務めて、人気グループが次々に歌を披露して、10代の観客たちが客席でキャーキャー騒いでっていう構成です。

だけどイギリスではアイドルブームの終焉とともに『トップ・オブ・ザ・ポップス』も終了してしまいました。ノエルの「ご冥福を……」には、精一杯の皮肉が込められていると思います。大嫌いな番組だっただろうから。だけど悪意のある皮肉じゃなくて、ブラックジョークね。シュールなんです。そういうの、とてもイギリス人らしいんです。私は『トップ・オブ・ザ・ポップス』が好きでよく観てたほうだけど、ノエルになら否定されても笑って流せる。だって言いたいことはよく分かるし(ひどく大衆的なエンタメビジネスってこと)分かって上で好きだったし。

 


 

ところでノエルがどこの誰だかまったく分からないという方のために、簡単に説明しておこうと思います。Oasis(オアシス)っていうバンド名だったらご存知の方も多いかと思います。Oasisは、Noel Gallagher(ノエル・ギャラガー)と Liam Gallagher(リアム・ギャラガー)という「ギャラガー兄弟」を中心に活動していた90年代を代表するイギリス人バンドです。

 

oasis1.jpg
ギャラガー兄弟

 

イギリス人の今の30~40代でOasisを知らない人は絶対にいないでしょうね。恐らく他のヨーロッパの人々も、音楽好きであれば誰もが知っているでしょう。日本でも洋楽好きで知らない人はいないと思います。イギリスの大衆音楽史に残るような素晴らしい音楽をたくさん残した、20世紀最高のバンドのうちのひとつです。

2000年代に入って少し人気は衰えましたが、流行りものから大御所アーティストとしての地位を確立したと言ったほうが正しいように思います。ところが残念ながら、一昨年だったかな? 兄弟喧嘩によって突然解散してしまいました。

解散っていうより、ノエルが一方的に去った感じです。「リアムには二度と会いたくない」ってことで。そしてそのことを理由にリアムがノエルを告訴しただか、しようとしただかで大きなニュースになったんだけど、数日後に「母親に怒られた」という理由で取り下げました(笑)

このギャラガー兄弟、特に弟のリアムは若い頃はそれこそ救いようのない性格で、「キ●ガイなのはMステじゃなくてあなたたちのほうですよ」と言いたいくらいです。だけどファンにとっては「次はいったいどんなクズな行動をやらかしてくれるんだろう?」っていう期待を抱いてしまう存在でした。今はだいぶ丸くなったようですが、ひとまず昔のリアムのエピソードをWikipediaから抜粋してみます。ちなみにこれ全部、デビュー後の話ね。スターになってからの話。

  • 海外ツアーに行く途中のフェリー上で酒を飲み、一般人も巻き込む大騒ぎを起こして逮捕。兄のノエル以外のメンバー4人が強制送還され、ノエルが一人で弾き語りのステージをこなす事態となった
  • ライブの最中に突然男がステージに上がり、兄のノエルに殴り掛かるとノエルもすぐさま応戦し、リアムや他のメンバーも加担してライブ中止
  • スウェーデンで閉店後のバーに侵入したり、教会からワインを盗むなどの事件を起こす
  • カミソリを万引きした容疑で逮捕される
  • 泥酔して歩いているところを職務質問され、コカイン所持の現行犯で逮捕される
  • 飛行機の中で酔っぱらって罵詈雑言を浴びせたり喫煙をしたことにより、航空会社から利用を永久に禁止される
  • その後、到着したオーストラリアで狂信的ファンのジャーナリストに頭突きと殴打を加えて逮捕される
  • ドイツでのツアー中、バーで乱闘騒ぎを起こして逮捕される。そのとき重量級アメフト選手に前歯を何本かへし折られてしまい、治療のためにツアー中止。更に駆けつけた警官を蹴り上げるなどした

まあ、こんな感じなんです。リアムに比べて兄のノエルはだいぶまともですが、それでもやはりセンスのある毒は吐き続けています。なんていうか、とにかく悪口しか出てこない。自分のことしか褒めない。最高にロックンロールです。

黄金期の作詞・作曲はすべて兄のノエルが担当していましたが、Oasisの後期はリアムも作曲を結構やるようになりました。現在はそれぞれ別の活動をしていて、それぞれ活躍しています。いつか再結成を、と願うファンも少なくないですが、どうでしょうね~。まあ無理だろうな。兄弟の確執が深すぎて、普通のバンド以上に複雑な状況になってるし。

それでは最後にOasisの代表曲をご紹介して終わりにしたいと思います。本当は紹介したい曲が20曲くらいあるんだけど、それはまたの機会にして、ここでは簡単にイギリスで一番愛されている2曲をどうぞ。

 

Don’t Look Back In Anger

「怒りの感情で過去を振り返らないで」っていう意味のタイトルです。多くのイギリスの若者たちが、この歌詞を読んで涙しました。悪口と暴言まみれのノエルですが、多くの人の心を突き動かす歌詞とメロディを作る方でもあるんです。でもいつも本人は「歌詞は適当に書いた。意味はない。なのに人々が勝手に意味をつけたがる」みたいなことを言っています。

 

Wonderwall

この独特の世界観。アコースティックギターやチェロの音色、ラストのピアノ、コード進行とリアムのボーカルすべてに独特の悲壮感が漂っているように感じます。何かのアンケートで「イギリス人が一番好きな曲」に選ばれてました。聴くたび胸が締め付けられる名曲です。

 


Sakiko Torii
About Sakiko Torii
BLOOMINT MUSICの運営者。イギリスでの音楽留学経験を生かした音楽的に深みのある記事が売り。独自スタイルのライブ企画、楽曲リリースのコーディネート、ライター活動、各種メディア出演など、韓国ヒップホップにおいて多方面に活躍中。著書に『ヒップホップコリア』。別名ヴィヴィアン。
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