Column | Nelly Furtado


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Nelly Furtado(ネリー・ファータド)は、ポルトガル系カナダ人のシンガーです。

私は学生時代にイギリスのロンドンで音楽を学んでいたのですが、ひどく攻撃的なフランス人の同級生がいて、一時期その子が毎日のようにNelly Furtadoの『I’m Like A Bird』を歌っていたんです。そのせいで、Nelly Furtadoにまで苦手意識ができてしまったという(笑)

Nelly Furtadoには何の罪もないしょうもない理由で、まともにアルバムを聴くこともないまま数年が過ぎてしまいました。それでも『Turn Off The Light』というシングルはそこそこヒットしていたのもあって、割とよく聴いていました。

 

独特なサウンドに、独特なボーカル。当時としてはそんな印象を受けました。だってリズムとかエフェクトとか、超かっこよくない? サビもすごいキャッチーで耳に残るし。

Nelly Furtadoのボーカルって、上手いんだか上手くないんだか分からないところがいいんです。いわゆるヘタウマってやつで、すごくクセになります。私は完璧に上手い歌手よりもヘタウマなほうが好きなので、そういう意味ではすごくツボです。それから彼女はボサノヴァ出身なだけあって、ラテンを基調とした音楽性がすごくいいです。それなのに例の攻撃的なフランス人の子のせいで(って人のせいにしちゃいかんけど)この『Turn Off The Light』以外は聴くこともないまま数年が経ちました。

そして私がスーパーリスペクトしているMichael Bublé(マイケル・ブーブレ)が2005年にリリースしたアルバム『It’s Time』に、Nelly Furtadoとのデュエット曲が収録されていたんです。同じカナダ人同士という縁なのでしょうか?


It’s Time

※後日追記:Michael Bubléは私が世界で一番歌がうまい歌手だと思っている歌の神様です。詳しい紹介記事を書きましたので、こちらの「Column | Michael Bublé」をご覧ください。

 

そのMichael Bubléの『It’s Time』にNelly Furtadoとのデュエット曲が入っていることを最初に知った時、例の攻撃的なフランス人の子の顔が思い浮かんでテンションが下がったのですが、聴いてみてビックリ。一気にNelly Furtadoの歌声の虜になっちゃいました。

それが『Quando, Quando, Quando』という曲で、オリジナルは1960年代にリリースされたイタリアのボサノヴァです。「Quando」とはイタリア語で「いつ」という意味です。どうでもいい情報ですが、私はここ2年ほどイタリア語を勉強中なんです。

 

ね? 最高でしょ? Michael Bubléの歌声が天国なのは当然だとして、Nelly Furtadoの声! さすがラテン系なだけあって、ラテンソングを歌わせるとこんなにしっくりくるもんなんですね!

ところでここで簡単にボサノヴァについて解説をしておきます。ボサノヴァとはブラジルで生まれた音楽のジャンルで、サンバの一種です。サンバを基調にしながら、ジャズなどのコードが使われているのが特徴です。ナイロン弦のクラシック・ギター(俗に言うガットギター)を使って「バチーダ」という独特の奏法で演奏されます。バチーダのリズムは「チャッ、チャー、ッチャ、ッチャー、チャーッ、チャッ、チャッ」です……って文字だけだとビックリするくらい分かりづらいので譜面にしてみました。

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上段のリズムを右手で、下段のリズムを左手で、机とかヒザを叩いてみてください。左は同じことの繰り返しなので簡単かと思います。ね? ボサノヴァっぽくなったでしょ!?

ガットギターは弦がナイロンでできているので音に丸みがあるんですね。それに対して普通のアコースティックギター(フォークギターとも言う)は弦が金属のスチールでできているので、キンと耳につんざく音になります。ところでテニスのラケットの網のこともガットって言いますよね。昔はガットギターもテニスのラケットもガットと呼ばれる羊の腸でできた紐が使われていましたが、今はナイロンが使われています。

以上、ボサノヴァの説明でした。

 

ということで『Quando, Quando, Quando』をきっかけにNelly Furtadoのことを見直し、アルバムを買い揃え、一時は「もうここ数か月、Nelly Furtadoしか聴いてないかも」という時期があったくらいハマりました。攻撃的なフランス人のイメージ、完全消失(笑)

アルバムはこれまで5枚出していて、私はどのアルバムもそれぞれ別の持ち味があって好きなのですが、中でも特に聴きやすいと思われる2006年リリースの3rdアルバム『LOOSE』を詳しく紹介したいと思います。発売当時、アルバムのジャケットがiPodのCMで使われていたので、見覚えのある人も多いのではないでしょうか。


Loose

 

この『LOOSE』はTimbaland(ティンバランド)という、アメリカの有名なヒップホップ/R&Bプロデューサーを迎えて制作されました。全曲捨て曲なしの名盤なのですが、中でも特に好きな曲を数曲厳選してみました。

それまでレトロでラテンでオリジナリティの高い楽曲が魅力だったNelly Furtadoですが、このアルバムでは一気にR&B色やエレクトロ色が強くなり、その時代のトレンドを多く取り入れた大衆的な作品となりました。結果として賛否両論となったわけですが、私は初期のNelly Furtadoも好きだし、今風の音楽に寄せていったNelly Furtadoの新たな音楽性も好きです。

こちらの『Do It』は、80年代風のエレクトロサウンドが痺れる一曲です。忙しく奏で続ける電子音が楽しくて、何度聴いても飽きない。私は本当にこの曲が大好きなのですが、Timbalandがフィンランド人アーティストの曲を盗作して作ったという話もあり、なんだかなー。でも大好き。

 

お次はこちらの『Showtime』という曲。Nelly Furtadoの中では圧倒的にR&B色が強い楽曲です。ゆったりとしたメロウなリズムが心地よくて、ハーモニーも美しくて、サビのメロディがキャッチーで一度聴いたら忘れらない。彼女の曲としてはだいぶメインストリーム感が強くて、そこもまた逆に新鮮です。

 

こちらは『Wait for You』という曲です。イントロからもうかっこ良すぎてやられちゃいます。使ってる楽器の数も豊富だし、電子音も充実してるし、ハーモニーの作り方も凝ってるし、完成度が高い作品。スネアの音も強めで、ビートにブラック感が出ていて良いです。

 

そして最後はこの曲。『All Good Things (Come to an End)』です。ColdplayのChris Martinとの共作で、Chris Martin自身もバッキングボーカルで参加しています。この曲はもう本当にとんでもない名曲でして、このアルバムの中でっていうかNelly Furtadoのすべての曲の中で一番好きかもしれません。

タイトルがまた胸に刺さる。そのまま直訳すると『いいことはすべて(終わりを迎える)』って感じですかね。Coldplayは知ってる人も多いと思うけど、ボーカルのChris Martinは女優グウィネス・パルトローの旦那さんで、ものすごい才能溢れる音楽家で、独特な切ない声の持ち主で、スーパーイケメンで、酒もタバコも未経験という非の打ち所のないイギリス紳士です。『All Good Things (Come to an End)』でも、全体にちりばめられた彼のバッキングボーカルが曲の切なさを高めていて最高です。

この曲はメロディも伴奏のアレンジも歌詞もどれを取っても最高で、聴くたびに胸がギュッとなります。優しいながらも焦燥感あるドラムをベースに「終わり」に向かって時間が動いていく印象です。切ない歌詞は結構抽象的な表現も多くて難しいのですが、とても詩的で美しいです。曲名はサビの歌詞の「炎から灰へ、恋人から友達へ。なぜいいことはすべて終わりを迎えるの?」から来ています。Nelly Furtadoの書く歌詞って、結構ガッツリと韻を踏んでいるところもいいです。先述のサビの歌詞で言うと「友達」の「friends」と「終わり」の「ends」とか。

 

以上が3rdアルバム『LOOSE』からの楽曲紹介でしたが、他のアルバムも全部ステキなので、せっかくだから私の好きな曲をペタペタと貼り付けようかと思います。

上述のように、Nelly Furtadoは初期のほうがオリジナリティが高く、楽曲としてもおもしろいものが多かったです。『LOOSE』は言ってみればNelly Furtadoじゃなくてもできるっていうか、他のシンガーが出してもいいようなアルバムだと思うけど、最初の2枚はNelly Furtadoらしさが炸裂しています。

 

以上、Nelly Furtadoの紹介でした。とにかくアルバムは全部お勧めだけど、やはり『LOOSE』からが入りやすいかな、と思います。初期のサウンドに興味を持ったなら、ファーストの『Whoa Nelly』とセカンドの『Folklore』のどちらもお勧めです。

4枚目の『Mi Plan』はNelly Furtadoらしい楽曲に少し戻った感がありますが、全曲スペイン語なので耳慣れない人もいるかもしれません。5枚目の『Spirit Indestructible』はまだ出たばかりでそこまで聴き込んでいないのでノーコメントで……。

私は持っていないのですがベストアルバムも出しているので、4枚目の『Mi Plan』までの曲を色々かじりたい場合はベストアルバムが無難かもしれませんね。


Whoa Nelly (2000年)


Folklore (2003年)


Loose (2006年)


Mi Plan (2009年)


Spirit Indestructible (2012年)


Best of Nelly Furtado (2010年)

 


Sakiko Torii
About Sakiko Torii
BLOOMINT MUSICの運営者。イギリスでの音楽留学経験を生かした音楽的に深みのある記事が売り。独自スタイルのライブ企画、楽曲リリースのコーディネート、ライター活動、各種メディア出演など、韓国ヒップホップにおいて多方面に活躍中。著書に『ヒップホップコリア』。別名ヴィヴィアン。
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